生駒 忍

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鳥谷敬の子ども医療センター訪問とチャゲの死

きょう、日刊スポーツのウェブサイトに、阪神鳥谷こども医療センター訪問し “鉄人”の約束という記事が出ました。「阪神鳥谷がキャンプ休日の5日、沖縄・南風原町の沖縄県立南部医療センター・こども医療センターを訪問した。」ことを報じたものです。

実際に発言しなかったかどうかまではわかりませんが、病棟の子どもたちへの、ありきたりな同情のことばは記事にはありません。話題は本人のことに終始します。それで、売名的なパフォーマンスには見えないのは、第5回若林忠志賞に選ばれたこの人の人徳かもしれません。

「ここで会った子供たちが甲子園まで来てくれた時、自分がグラウンドに立っていないのは嫌。やっぱり1年間、グラウンドに立ち続けたい」、ストレートで、しかも行きとどいています。子どもたちの元気づけになる一方で、元気づけに来た私が元気をもらいました、などとありきたりなことは言いません。元気でない子どもたちから、元気をとってはいけません。そんなへりくつはともかくとしても、「元気をもらいました」という安いフレーズの空虚さは、ランチェスター戦略式 1枚シートであなたの会社が儲かる!(河辺よしろう著、すばる舎)が、そして幸運の99%は話し方できまる!(八坂裕子著、集英社)はさらに手きびしく、指弾しているとおりです。

「訪問の途中、センターを守っているという野球少年とアイコンタクトをしながら固く手を握る場面もあった。」そうです。つい、まるで自宅警備のように、このこども医療センターから出ていない少年だと誤読しそうになりました。こども医療センターはこの少年が来る前からセンターですし、少年はおそらく入る前からセンターだったのでしょうけれども、どちらかがゆずるというわけにもいかず、まぎらわしくなったのでした。

それで思い出したのが、スポーツ報知のウェブサイトにきょう出た記事、元「モー娘。」田中れいな「結婚いたしません」田中麗奈の電撃婚で勘違いされる?です。もうシャボン玉(モーニング娘。)でセンターとなり、「あんた名義の恋をしな」と歌った田中は、女優の田中麗奈とまぎらわしいために、「田中れいな」名義で活動しています。マイケル・J・フォックスのようなものです。なお、この記事はブログの内容について、誤解をまねくところがあります。「笑」の字が抜かれていますし、発表する約束は、報告のあったブログ記事、私 田中麗奈やけども。の中ほどにあって、最後ではありません。

一部で最期のニュースが誤解をまねくかたちになったのが、東山動植物園の、ジャガーのチャゲが死亡しましたです。最後に、「チャゲの死亡により、アスカ(オス)1頭のみとなりました。」とあることから見当がつくように、そもそもそういうネーミングだったのですが、おととい書いた『依存症からの脱出』の記事で取りあげた事件もあり、おかしな注目を集めてしまいました。もちろん、人間のほうはどちらも存命中ですが、ASKAは元気ではなさそうです。週刊新潮 2月11日号(新潮社)は、「逮捕から約2年が経ったいまになって、なぜ精神科病院に隔離されるほど容態が悪化したのか。」「彼は妄想ブログにばかり執着した挙句、入院に」といった事態を取りあげています。

ネットメディアの害悪と地域でのスマホ規制

きょう、琉球新報のウェブサイトに、ネット依存で発達阻害 子どもへの影響懸念という記事が出ました。

「スマートフォンやパソコンなどの急速な普及で、ネットメディア接触の低年齢化・長時間化が進んでいることによる「子どものネットメディア依存症」がテーマ。」だという、沖縄県医師会と琉球新報社との共催によるイベントの報告です。情報弱者と買い物弱者の記事で取りあげたように、若者はもう、パソコンを使わなくなりつつあるといわれる中で、若年人口の割合で日本一をほこる沖縄では、パソコンが急速に普及しているところなのでしょうか。

「NPO法人子どもとメディア代表理事の清川輝基氏はデータを示しながら日本の子どもの心身機能が低下してきていることなどを報告。「日本の若者のネットメディア接触時間は世界一長い。研究者や国の調査でネットメディアとの接触が体や脳、言葉の発達をゆがめることははっきりしている」と強調した。」そうです。スマホ猫背とスマホうつの記事で取りあげたような、装置の物理的な特性からではなく、ネットメディアへの接触という、どちらかというとソフト的な側面が、ハードな事態につながるようです。

「保護者らからは「生活に浸透しているネットメディアとどう付き合うか」などの質問があった。清川氏からは地域ぐるみでスマホ使用にルールを設ける他県の事例などが報告された。」とあります。文科省による「子供のための情報モラル育成プロジェクト」 ~考えよう 家族みんなで スマホのルール~もあり、全国各地で成果が出ている取りくみで、この機会に、沖縄でもひろがることを期待します。小・中学校作文コンクール文部科学大臣賞受賞者の記事で取りあげたような、生徒側がルールをつくり、呼びかけるやり方も増えています。買いあたえた親がきちんとさせるべきというのは正論ですが、それができない家庭もありますし、そういうところの子どもにきちんとした親の子どもが巻きこまれてくずれたりもしますので、「地域ぐるみで」行うのが、成功のポイントです。ITproに半年前に出た記事、刈谷市のスマホ利用制限が功を奏した理由、家庭内の合意から地域に拡大にあるように、ある程度強いやり方で、始めるときには批判的な声もあっても、回りだすと意外にうまくいくようで、健康問題も改善されます。ヨリドリミドリ リラックマ生活12(コンドウアキ著、主婦と生活社)の、「ムツカシイノハ ハジメダケ」を思い出しました。

「子どもホスピス」建設と「実現」の「願い」

きょう、タウンニュース南区版に、六ツ川NPO 「子どもホスピス」建設へ 準備委員会を発足という記事が出ました。

「ホスピス建設には約3億円の資金が必要で、実現に向けた具体的な取り組みは停滞」というところに、1億円の寄付が入って、準備委員会が立ちあがるところまで進んだようです。この記事を見て寄付を決める人が出ることも期待できますし、「音楽家よるチャリティーコンサートなどのイベント」も開くそうですが、予定どおりにいきますでしょうか。その予定ですが、冒頭のほうでは「今後、同委員会はホスピス実現に向けた広報活動などを進め、県内で2020年ごろまでの建設を目指す。」とする一方で、後ろには「5年後をめどに県内の建設を目指す方針」とあります。面白いほどわかる! 他人の心理大事典(おもしろ心理学会編、青春出版社)は、結論は最初と最後とにおくのがよいとしますが、前後でずれがあるのです。委員会とNPO代表理事とで、認識のずれがあるということですと、今後がやや心配なところがあります。

ずれで思い出したのが、奈良新聞のウェブサイトにきょう出た記事、限定運用の問題指摘 - 市民団体が集会/精神障害者医療費助成です。県の方針と市の運用方針とがずれて、市のほうに批判的な集会が開かれたそうです。また、私としては、写真の光景も気になりました。たくさんの「実現」と「願い」とが提示されて、見たところ半々ではなく、実現のほうがやや多いようです。たくさんのねがいで少しだけ実現ではなく、少しのねがいからでも多くを実現というねがいをこめたのでしょうか。

ビキニ水爆実験被害の「遺伝性」と多崎つくる

きょう、カナロコに、【ビキニ被ばく60年】第2部:漂う「当事者」(3) 家系図を独自作成 子、孫へと続く苦しみという記事が出ました。

意義のある記事なのですが、誤解をまねきそうな部分もあります。「ロンゲラップ島で直接被ばくした8人の受診結果で、動脈硬化や糖尿病、腎疾患、肝機能障害の症状が発覚」、ここに「しかし、こうした生活習慣病症状の進行と被ばくとの因果関係は定かではない。」と添えてあります。実験から40年以上がたってから発覚した「生活習慣病症状」ですので、8人の平均年齢がどのくらいかも書いてあるとよかったでしょう。因果関係があると信じたい人は読みとばすかもしれませんが、そうでない人にも届く記事のはずです。「原因不明の甲状腺異常や白血病などに苦しむ島民」とあるのも、信じたい人は病気の部分だけ信じて、「原因不明の」は信じずに頭の中ですりかえてしまうのかもしれませんが、それでも書いてよかったと思います。

一番の問題だと感じたのは、「放射線被害の遺伝性を立証するためにアンケートに基づき作成した家系図」です。直後の「環礁間を行き来する船長のケースでは、夫婦に加え、子ども12人中11人が被ばく。」という例示には、「3人の子どもが甲状腺手術を受け、中には大人になって7回の流産を経験したり」とありますが、子どもは一人を除いて直接にあびたのですから、ここは被害の「遺伝性」とは無関係でしょう。また、図のキャプション、「被ばくの世代を超えた影響を示す家系図。」は不適切です。実験以降しか書かないのでは、それより前からの遺伝との区別がつきませんし、以前を書いてもほかのコホート要因との分離はできませんし、遺伝とは無関係な家庭環境の要因も、家系内での対応関係をつくります。比較すべき対照条件も示されていませんので、フレデリック側の子孫も追跡されているカリカック家の研究よりも劣りますし、たったこれだけの人数でものを言うのなら、ジューク家の研究よりも劣ります。ですが、こういったことが理解されない人には、「世代を超えた影響を示す」証拠が出たのだと誤解されることでしょう。カリカック家の研究を世界中へ知らせた、今はインターネット・アーカイブで読むことのできる、The Kallikak family: A study in the heredity of feeble-mindednessの36ページからの家系図の、遺伝だと確信させてしまう説得力が、世界を優生学へと走らせ、多くの命やそこからつづくはずの子孫が絶たれる一因となったことを、忘れてはならないと思います。

この図の選択にも、疑問を感じます。船長のケースは、図の右上で「11人のこども全員が被曝」とされ、「11人」か「全員」かのどちらかは誤りでしょうから、資料としての信頼性の低さを感じさせるところを記事に切りだしてしまったように思えます。シート1枚でおさえられるのに裏写りを起こして、ほかにも家系図があることがわかるので、ほかを使えばよかったのにと、よけいに思ってしまいます。

図ではほかに、左下のアンジーの子かブレレンの子かよくわからないところに3回の流産が記されて、「①1人腕がなかった。」とあります。本文に「腕のない子が産まれたりする」とあるのは、これを表現したつもりなのでしょうか。ですが、ことばの定義にもよりますが、流産ならば産まれたとはいえないように思います。あるいは、②や③から考えると、実は①は流産ではなかったのでしょうか。この点でも、なぜこの、資料としての信頼性をうたがわせるようなところを選択したのか、疑問を感じます。

外科医の発言だという、「人類史上いろんな奇形は産まれたけれど、指が6本あるというのは聞いたことがない」も、今日の意味でいう確信犯なのかどうかはわかりませんが、疑問です。これほどよく知られた奇形を、見たことがないのならまだわかりますが、医師であって聞いたこともないとは、考えにくいはずです。白髪三千丈の国の文書を真に受けるなと言われそうですが、隋書卷八十三列傳第四十八によれば、疏勒国の人は誰もが6本指だったそうです。そういえば、色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年(村上春樹作、文藝春秋)には、主人公が駅長に、「六本指が優性遺伝するのなら、どうしてもっと多くの人が六本指にならないのでしょう?」とたずねる場面がありました。病む女はなぜ村上春樹を読むか(小谷野敦著、ベストセラーズ)は、このあたりの展開に、東工大に入った理系と思われる設定を、作者が忘れてしまった可能性を指摘します。

さて、この記事の救いは、「昨年の派遣中、首都マジュロの食堂でマグロの刺し身を注文した。」というお話です。日本人で、あの世代で、ブラボー実験の被害といえば、マグロを連想しそうです。それでも、まだこわがる現地人を知りながらもおいしく食べるところに、水爆の被害に取りくみつつも、不合理な放射線恐怖とは一線を画す、この人物の理性がうかがえます。まさか、知らないはずはないと思い、検索してみたところ、ヒロシマ平和メディアセンターに4か月ほど前に出た記事、「ビキニ」60年見つめ直す 平和団体など相次ぎ現地へで、「当時は高校生で、マグロが大量廃棄される現実に衝撃を受けた。」という発言を確認できました。

新潟こころの発達クリニックが開院します

きょう、新潟日報モアに、発達障害専門医院 新潟に9日開院という記事が出ました。新潟こころの発達クリニックの開業の案内です。

「待合室には小さい子どもも過ごしやすいようキッズスペースを設けた。」とあります。公式サイトを見ると、いすが暖色系の待合室-1、寒色系の待合室-2との間に幼児待合室があるようで、そこのことだと思います。まだ、よび方が固まっていないのかもしれません。そういえば、トップ画像であるh1.pngは、公式サイトで2番目にファイルサイズの大きい画像ですが、そこには「Niigata mental developmental clinic」とある一方で、ページ下部の著作権表示には「Niigata mental development clinic」とあります。どちらがよいでしょうか、それとも、さらに別の表現を提案したくなるでしょうか。

「遠藤院長は「発達障害についての情報が多いため、不安を抱えている保護者は多い。気軽に相談できる場にしたい」と話している。」とあります。情報が少なくて不安になるのではなく、逆です。そういえば、同じく精神科医の香山リカも、くらべない幸せ 「誰か」に振り回されない生き方(大和書房)で、情報がふえて不幸になったと論じていました。

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