出題解説

記事一覧

問16 アルコール依存の離脱症状と否認

アルコール依存症は、かつて慢性アルコール中毒と呼ばれたものに、ほぼ対応します。なお、依存の読みは、心理学では「いぞん」が一般的です。NHKも、2014(平成26)年から、「いそん」よりも「いぞん」を優先する方針に切りかえました。

1アルコール健康障害対策基本法2条にあるように、「アルコール健康障害」はアルコール依存症を含む、より広い概念です。

2、依存症になると、むしろアルコールが切れることで、手のふるえ、発汗、厳格といった離脱症状が起こります。飲酒すると治まりますが、アルコールが切れてくるとまた起こります。そのため、快を求めるというよりは、不快を避けるために飲む側面が出てきます。

3が正解です。この場合、急性期の統合失調症のような病識欠如や、高次脳機能障害の病態失認のようなものとは異なり、認識が成立しないというよりは、認めたくないために否認に走ると考えられています。

4、これは無理です。いったん依存症のレベルになった人は、少しでも口にしてしまうとすぐコントロールがきかなくなりますので、まったく飲まないようにする断酒しか、助かる道はありません。

問17 喫煙とニコチン依存

DSM-5はタバコ関連障害群、ICD-10は「タバコ使用<喫煙>による精神及び行動の障害」というカテゴリをおき、喫煙によるこころの問題は精神医学のテーマとなっています。また、たばこの健康問題は、健康日本21の9分野のひとつでもあり、目標値をともなう継続的な対策が進められています。健康日本21の各論を示しておきます。

 健康日本21 各論

1、たばこの依存性をもたらす主成分はニコチンです。

2が正解です。若年者のほうが形成が早いことが知られています。これが、一次予防としての禁煙教育が重視される背景となっています。

3、アセチルコリン受容体にはムスカリン性受容体とニコチン性受容体とがあり、ニコチンは後者のアゴニストとしてはたらきます。これが報酬系を、抑制ではなく賦活するため、快が得られます。覚醒剤と同様に覚醒作用があり、強い精神依存性を持ちます。

4、禁煙外来は、2006(平成18)年に、ブリンクマン指数が200以上など、いくつかの条件の下で、健康保険等が適用できるようになりました。ブリンクマン指数については、問73解説も参照してください。

問18 アルコール依存の自助グループ

AAは、AA日本ゼネラルサービスによる日本語表記は「アルコホーリクス・アノニマス®(無名のアルコール依存症者たち)」で、1935年にアメリカで始まり、世界に広がった霊的共同体です。創設者の2名の名前は知られているものの、アノニマスとつくように、匿名で参加できるグループです。類似の活動として、わが国の断酒会がありますが、断酒会は参加者が明確な会員制の組織体をとります。

1が正解です。今日でいう自助グループであるといえます。

2、家族等を対象としたアラノン(Al-Anon)というグループがありますが、AAとは別です。ちなみに、断酒会には、家族会もあります。

3、アルコール問題やアルコール医学に関する学会は、国内だけでもいくつもあり、現場の医師やコメディカルも多く入会しています。

4、アルコール関連問題の予防啓発は、AAとは無関係に、官民双方からひろく展開されています。

問19 依存性薬物と薬物乱用

薬物乱用は、わが国ではよくおさえられているとはいえ、手ごわい問題であり続けています。麻薬・覚せい剤乱用防止センターによる啓発サイトを示しておきます。

 薬物乱用防止「ダメ。ゼッタイ。」ホームページ

1、Freud, S.が手を出したのは、コカインです。患者にためすほか、自己使用もしていました。当時はまだ、ヘロインは流通していませんでした。

2、薬物事犯、特に覚醒剤事犯は、再犯率の高さで際だっています。元アイドル、歌手、お笑いタレント、オリンピック選手まで、思いあたる名前はいろいろあることでしょう。平成26年版 犯罪白書(日経印刷)によると、平成25年の覚醒剤取締法の検挙人員に占める同一罪名有前科者の割合は、63.8%に上ります。

3が正解です。公的支援はあっても、ダルクはあくまで民間団体です。

4、わが国は、この中では圧倒的に低い位置にあります。厚労省による薬物乱用の現状と対策で、「主要な国の薬物別生涯経験率」を確認してください。

問20 アラームシーツ法の条件づけ

1、睡眠時間は、青年期に向けてどんどん短くなりますが、老齢になるとまた長くなっていく傾向があります。また、全体的に周期が前進し、早寝早起きとなります。総務省の平成23年社会生活基本調査の「生活時間に関する結果」では、年齢階級別でみると45~49歳で、男女とも最も睡眠時間が短くなっています。ちなみに、女性のほうが睡眠時間は短い傾向があり、中年期では特に顕著です。それでも、25~29歳でのみ、男女の逆転があります。第15回精神保健福祉士国家試験でここが突かれていて、悪問だと思った人も多かったと思います。

2、満腹時にはレプチンの分泌が増え、オレキシンが減って、眠気におそわれやすくなります。

3が正解です。アラームシーツ法は、夜尿アラーム療法とも呼ばれ、水分センサーがおねしょを検知するとアラーム音が鳴る装置を使います。おねしょの直前の、尿がたまった感覚を条件刺激、目を覚ます反応を条件反応とするようなレスポンデント条件づけで、おねしょの前に起きるように学習させます。

4、入眠困難とは、眠りたいのになかなか寝つけないことを指します。いったん眠りについて、不必要に早く目が覚めて、また眠ってもまた覚めてしまうのは中途覚醒、不必要に早く目覚めてからはもう寝つけないのが早朝覚醒です。