出題解説

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問21 レム睡眠時の生理

1が正解です。REMはrapid eye movementの略で、睡眠中ですのでまぶたは閉じていますが、その上から存在が確認できるくらい、すばやくはっきりとした眼球運動が起こります。

2、睡眠周期は90分程度で、典型的なウルトラディアンリズムといえます。

3、レム睡眠中は、睡眠時の脳波としてはむしろ振幅が小さく、周波数が高いことが特徴的です。より深い睡眠とされるノンレム睡眠は、徐波睡眠とも呼ばれますが、徐波とは、δ波など周波数の低い、ゆっくりした波のことです。

4、ノンレム睡眠に比べて、レム睡眠では夢をみる頻度も、その明瞭性も高いのですが、骨格筋が弛緩し、動くことはできません。睡眠遊行は、かつては夢見と対応する現象として夢遊病や夢中遊行と呼ばれていましたが、ノンレム睡眠の間に起こることがわかっています。学童期にみられやすく、特に治療しなくても、自然に消えることが多いとされます。一方で、レム睡眠中の筋弛緩が起こらなくなり、夢にあわせて動いてしまうのがレム睡眠行動障害で、こちらは中高年の男性に多い疾患です。

問22 夢の生成と意識

1が正解です。レム睡眠はひと晩に4~5回程度起こり、最後のものにはならないようなタイミングのレム睡眠の最中に起こしても、夢を見ていたという報告が得られやすいことから、複数回見られていると考えることができます。そういう実感がないのは、そのうち最後の、起床直前に見たもの以外は、後でエピソード記憶として想起することができないためでしょう。

2、『夢判断』の著者はFreud, S.です。Jung, C.G.はその出版後に親しくなり、国際精神分析学会の初代会長となりましたが、数年で離反しました。Jung, C.G.はむしろ、夢は抑圧されたものが検閲などで変形されたものではない、無意識のイメージのあらわれとして、そのメッセージ性を解釈しようとします。

3、活性化-合成仮説は、レム睡眠中もはたらく脳幹の活動に由来する実質的にランダムな信号が、大脳皮質を活性化させて断片的な感覚像をつくり、それらをつじつまを合わせて合成したものが夢の体験だと考えます。日中の記憶の整理を夢の原因とみるのは、ノーベル賞受賞者でもあるCrick, F.らによる逆学習説などの立場です。

4、明晰夢は、現実の体験ではなく夢として見ていることに、その場で気づいた状態で見ている夢です。睡眠段階としては浅い、レム睡眠の間に起こります。

問23 サーカディアンリズム

サーカディアンリズムのサーカディアンは、ほぼ、だいたいという意味のラテン語のcircaと、日を意味するdiēsとを組みあわせたものですので、概日リズムと訳されることもあります。

1、通常の生活では約24時間の周期で安定します。そうでないと、生活がうまく続きません。ちなみに、自由継続リズムでは25時間周期で回るという実験結果は有名ですが、実験設定に不備があり、後ろへのずれが過大に出ていたと考えられています。また、ヒト以外の種には、自由継続では前へずれるものもあります。

2、時差ぼけはサーカディアンリズムと環境の時刻とのずれによって起こりますが、サーカディアンリズムは外部要因、特に環境の明暗と同調していく傾向もあります。そうでないと、いったん時差ぼけになった人は、ずっと苦しみつづけることになります。また、1で取りあげた自由継続リズムの現実とのずれも、このような同調で常に調整されますので、結果的には24時間周期が維持されます。

3、体温は朝方に低く、日中に上がっていき、睡眠中に下がる周期性を持ち、血圧は朝に上がり、日中から夜までゆっくりと下がっていきます。これらのパターンは、加齢やそれにともなう疾患によってくずれる傾向があります。

4が正解です。SCNは、視交叉ではなく、視交叉のすぐ上にある視床下部の、左右1対の神経核です。最近、さらにその中で中核となっている細胞群が特定されました。筑波大学のプレスリリース、体内時計のペースメーカー細胞を特定~ 睡眠覚醒を司るキープレイヤー ~をご覧ください。

問24 脳波の基礎律動

1が正解です。基礎律動は、背景脳波とも呼ばれ、広い範囲で持続的に見られるものです。なお、α波の周波数範囲のとり方は、やや前後することがありますので、注意してください。

2は、基礎律動ではありません。てんかんの診断手がかりとして重要で、とげのように細くとがったかたちから、こう呼ばれます。

3も、基礎律動ではありません。睡眠段階2の判断手がかりとして使われ、断続的に周波数が高くなる範囲のかたちを紡錘に見たてて、こう呼ばれます。

4は、脳波にはありません。地震をイメージする人が多いと思いますが、心電図にもP波があり、心房の興奮と対応します。

問25 催眠と被暗示性の研究者

1、催眠と睡眠とは、訳語だけでなく原語でもまぎらわしいのですが、まったく別の状態です。催眠下でも意識は明らかにありますし、脳波でも区別がつきます。

2、催眠下で「想起」されたものはむしろ真実性に問題があり、訴訟の証拠としては不適切です。アメリカでは一時期、催眠下で取りだされたと主張する虐待の「記憶」を持ちだした訴訟が横行しましたが、激しいあらそいの後、そのやり方は認められなくなりました。このあたりをまとめたものとしては、怪しいPTSD 偽りの記憶事件(矢幡洋著、中央公論新社)が読みやすいと思います。

3、催眠下では被暗示性が高まります。それを利用して暗示の効果を上げるのが、催眠療法の基本的なやり方です。

4が正解です。Hull, C.L.は、学習理論の数理的な体系化を行った、新行動主義の中心人物のひとりですが、Hypnosis and Suggestibility: An Experimental Approach(Crown House Publishing)が今も読みつがれるなど、催眠研究でも活躍しました。ほかに、モーズレイ人格検査や治療効果論争、精神分析批判などで知られるEysenck, H.J.も、催眠にも関心を向けた、行動主義的な立場の心理学者として有名です。