出題解説

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問81 里親委託の意義

1、社会的養護における施設養護と里親委託との比は、わが国では約9:1と、施設にかたよっています。地域差も大きく、新潟県の約3分の1という高い里親比率の高さが知られていますが、これは裏がえせば、1割にも満たない地域があることも意味します。欧米の同様の制度をみると、施設と里親とは半々くらいになるようです。

2、虐待被害のない例にくらべて注意を要することはありますが、里親委託は可能です。専門里親制度は、後に拡張されましたが、被虐待児の養育のためにつくられたものです。ちなみに、施設養護では、情緒障害児短期治療施設や児童自立支援施設で、被虐待児支援の比重が高まっています。

3が正解です。問79解説で取りあげたホスピタリズムは、今日ではおさえられるようになりましたが、実際の親子関係により近いかたちでの養育が望まれています。

4、注意を要する面はあっても、里親登録が認められないわけではありません。

問82 児童福祉施設の利用児童数と年齢

児童福祉法7条は、児童福祉施設として、11種類を挙げています。このうち、利用児童数で圧倒的なのは、保育所です。保育園という表記や、近年は認定こども園制度もあってややややこしいのですが、いわゆる一条校、れっきとした学校である幼稚園と異なり、保育所は福祉施設です。保育所利用児童数は、少子化の中でも増えつづけ、すでに就学前児童の3分の1を超しています。厚生労働省の発表、保育所関連状況取りまとめ(平成26年4月1日)を参照してください。

1、乳児院は、退院後の援助活動もありますが、原則として1歳未満が入院対象です。

2が正解です。絶対数からも、ほかの選択肢はありえないとわかります。

3、児童養護施設の入所は、原則として1歳からです。

4、児童自立支援施設の入所は、児童とつくことからわかるように原則として18歳未満で、年齢の下限は定められていませんが、かつての教護院ですので、幼児の養育を想定した施設運営はされていません。

問83 オグバーンの家族機能縮小論

Ogburn, W.F.は、かつて家族が持っていたさまざまな機能は、産業化、近代化によって、家族からはなれていったと論じました。しかし、この家族機能縮小論は、家族のあらゆる機能がそうなったわけではなく、愛情は家族の主機能とされ、強く残りつづけているとします。

1が正解です。これらのほか、地位付与と保護とが、縮小していった家族機能とされます。

234はいずれも、愛情が含まれています。

問84 システム論的家族療法と脚本分析

1、これは無関係です。複数記憶システム論は、潜在-顕在の記憶区分論を発展させて、エピソード記憶、意味記憶、知覚表象システム(PRS)、手続き記憶の4層からなる記憶システムを想定するものです。一方、家族療法のシステム論は、Bertalanffy, L.v.による一般システム論の援用です。

2が正解です。特定の誰かが悪いという発想をせずに、家族システム全体を介入対象とします。

3、これは多世代派家族療法でとられる考え方です。ジェノグラムについては、Hartman, A.によるエコマップとの、つくりや使いみちのちがいもおさえておきましょう。

4、これはBerne, E.の交流分析にみられる、脚本分析の考え方です。親の問題に由来して意識されず幼少期に得られた禁止令と、そのために拮抗禁止令で行動する人生脚本の図式は、「おぼれる人の図」がわかりやすいでしょう。日本語で見られるものとして、交流分析事典(実務教育出版)の図6があります。

問85 統合失調症と家族の感情表出

1、てんかん性脳症は、幼少時からのてんかん症状により脳機能の障害が進行する、予後不良の疾患です。なお、統合失調症とてんかんとには、躁うつ病を加えて古くから三大精神病とされてきたことのほか、てんかんにともなう精神病的な症状に対する統合失調症との誤診、統合失調症の治療への抗てんかん薬の補助的な併用、てんかんと統合失調症とは併存しないという珍説がきっかけとなった電気けいれん療法の着想など、さまざまなかたちでの関連はあります。

2、共感的羞恥は、他者が恥ずかしい行動をしたり、恥ずかしがったりしているのを見た側に起こる羞恥感情です。

3、実存的空虚は、自分が生きること、あることへのむなしさ、自己の存在の意味が感じられないことです。夜と霧(みすず書房)を著したFrankl, V.E.の用語です。

4が正解です。かつて、統合失調症や自閉症には、家族の育て方やかかわり方が原因で起こるという解釈がありましたが、今日では否定されています。一方で、統合失調症が改善、寛解へ向かい、退院して家に戻ったのに再発してしまうパターンにある要因をさぐる中で見いだされたのが、家族の感情表出(EE)です。家族教育によってこの再発因子をおさえることは、三次予防として有効です。