出題解説

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問76 間接援助技術と関連援助技術

直接援助技術、間接援助技術、関連援助技術という三分法では、特に後の二つで混同が起こりやすいので、気をつけて覚えましょう。

1、ケースワークは直接援助技術です。対象者に個別、直接にかかわっての支援です。

2、コミュニティワークは間接援助技術です。地域援助技術と訳されることもあります。

3、グループワークは直接援助技術です。小集団活動ですが、その成員それぞれへの援助を意図しています。

4が正解です。ネットワーキングと表現されることもあります。なお、Engeström, Y.のノットワーキングとは、似てはいますが異なります。

問77 パールマンの「四つのP」

Perlman, H.H.については、問題解決アプローチの視点や、「ケースワークは死んだ」などの主張と、「四つのP」として整理されたケースワークの要素論を、おさえておきましょう。

1、これはPerlman, H.H.ではなく、McCarthy. J.E.によるマーケティングミックスの4Pに含まれます。射程の広い枠組みで、音楽心理学入門(星野悦子編、誠信書房)でも援用させてもらいました。

2が正解です。問題解決へ向けての展開過程を指します。

3、これは含まれていません。もちろん、実践に価値があることは、言うまでもありません。

4、これは「四つのP」には含まれていません。後の「六つのP」への拡張で加わることになります。

問78 ケースワークと集団的守秘義務

1が正解です。個人心理臨床の感覚での守秘義務とはイメージが異なりますが、医療や福祉、あるいは学校カウンセリングなどでは、集団的守秘義務のかたちがとられます。

2、このような消え方はしません。なお、カルテの法定保存期間は最後の診療から5年間とされますが、医師法24条2項にどこから起算して5年間とするかは書かれていないのに、そういう解釈になることの根拠は、興味がある方は調べてみてください。

3、あります。精神保健福祉士法40条も、理学療法士及び作業療法士法16条もそうです。

4、フィニアス・ゲージは実名です。線路工事をしていてゲージとはでき過ぎにも見えますし、An Odd Kind of Fame: Stories of Phineas Gage(M. Macmillan著、MIT Press)によれば、あの事例にはうたがわしいエピソードがかなりあるようですが、名前までは否定されていません。これは古い例だから、もう亡くなっているからという面もありますが、「秘密」でないことには法律上の守秘義務の問題はありませんし、業界内のルールでも、氏名の一律禁止というよりは、氏名に限らず対象者の同意があれば可能ではあるということになります。それでも、たとえば日本心理学会倫理規程第3版の2.1.5.17には、「たとえ直接の研究対象者が実名の公表を許可ないし要請した場合でも,関係者全体に与える影響を慎重に考慮して表現を工夫する。」ともあります。

問79 添い寝の害の議論と多重役割

1、Spitz, R.A.がホスピタリズムと呼んだのは、養護施設で栄養や衛生に不足がないのに現れ、高い死亡率にもつながっていた心身の諸問題です。養育者との適切な愛着が形成されにくいことが原因だとされました。

2、これは世界中で大変な数が出まわり、わが国でも第6版が、最新版 スポック博士の育児書(暮しの手帖社)として今も市販されています。当時のアメリカ文化を反映し、子どもは子ども、自分は自分でわけて過ごすよう求め、添い寝や抱きぐせの害を説くところが、多産少死のベビーブームの時代には好都合だった一方で、議論をよびました。ちなみに、読書家としても知られる成毛眞は、このムダな努力をやめなさい(三笠書房)で、「人類史上最悪の書だともいわれている」などとこき下ろしています。

3が正解です。かつて、多重役割をめぐっては、役割間で葛藤が起こる、エネルギーが不足するなどの否定的な見方が強調されてきましたが、近年は役割が多いほうが社会資源への結びつきが増やせたり、一方の場や経験がもう一方の支えになるポジティブ・スピルオーバーが起こったりすることも明らかにされています。

4、母子健康手帳には、どこの自治体のものであっても、めやすとしてわかりやすい発育曲線が載っています。厚生労働省による省令様式では、後ろのほうにならんでいます。

問80 田中ビネー知能検査Ⅴの適用

1、いわゆる1歳6か月児検診の期間は、母子保健法12条1号に定めがあります。2号は、いわゆる3歳児検診です。

2が正解です。田中ビネー知能検査Ⅴの適用は2歳からで、5歳でことばの遅れが可能性として指摘される程度でしたら、発達チェックの出番もなく、適切に適用できるでしょう。14歳未満ですので、偏差IQではなく、ふつうのIQを得ることになります。

3、就学時健康診断は、就学してからではなく、就学する前に受けます。

4、アプガー指数は、アプガールスコアとも呼ばれ、新生児仮死の評価に用いられます。