出題解説

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問86 離婚申し立ての動機のかたより

一般に、初婚よりも再婚のほうが、その後に離婚にいたる率は高いとされます。ただし、アメリカなどでは出ていますが、わが国の政府統計では、婚姻の時点と異なり、離婚に関して両者を分けた統計はありません。それでも、裁判所による司法統計の家事事件編で、年齢や婚姻期間、別居期間などとの対応を見ることはできます。申し立ての動機に関しては、平成25年度では第19表にまとめられています。

正解は1となります。全体的な件数のかたより、特に「暴力を振るう」での極端なかたよりと、「同居に応じない」でのその反転に注目すると、どちらが夫でどちらが妻か、見わけがつきやすいでしょう。また、初婚-再婚だとすると、これらのパターンにはうまくなじまないことも想像できると思います。

問87 感覚障害を意識したバリアフリー

1、これは色覚特性によっては、とても見わけにくくなるおそれがあります。色相を固定して、彩度は高めで、明度を変えて使いわけるほうが見やすくなります。色なしでも理解可能な冗長性を持たせると、なおよいでしょう。国立遺伝学研究所のウェブサイトに置かれた、色盲の人にもわかるバリアフリープレゼンテーション法を示しておきます。図10~12だけでも見てください。

2、景観の価値を否定するわけではありませんが、点字ブロックは全盲のためだけのものではないので、視力に困難がある人にも見えやすくするのが、バリアフリー重視の方向性です。

3が正解です。聴覚障害があると、ベルの音を発する一般的なタイプの火災報知器では、気づかれないおそれがありますので、ほかのモダリティで届けるものが開発されています。

4、押しまちがいやいたずらがめいわくなのも事実ですが、子どもが使いにくいようにした時点で、バリアフリーとは言いにくい方向性ですし、そういう配置は、車いすに乗っての操作を困難にします。

問88 こころのバリアフリー宣言

こころのバリアフリー宣言は、一般的な知名度はいまいちかもしれませんが、第15回精神保健福祉士国家試験や、第101回看護師国家試験一般・状況設定問題などで出題されています。全8か条からなり、それぞれ別々の啓発ポスターがつくられていますので、示しておきます。

 こころのバリアフリー宣言 啓発ポスターダウンロード - 精神保健医療福祉の改革研究ページ

1、バリアフリー新法は、建物を対象としたハートビル法と、旅客施設を対象とした交通バリアフリー法とを統合してつくられました。物理的な移動を円滑にするためのものですので、この宣言とはねらいが異なります。

2、近年では地方消滅(増田寛也編、中央公論新社)が話題を集めるなど、高齢化と過疎化とのさらなる進行への関心や不安は高まっていますが、この宣言のねらいではありません。

3、Jung, C.G.は、人類すべてが共有する無意識として、集合的無意識の概念を提唱しましたが、この宣言には何の関係もありません。

4が正解です。副題を「精神疾患を正しく理解し、新しい一歩を踏み出すための指針」とし、疾患の理解と障害者への理解との、4条ずつからなります。

問89 精神保健福祉法と精神科病院

精神保健福祉法は、正式名称と精神保健及び精神障害者福祉に関する法律といい、戦前につくられた精神病者監護法と精神病院法とに代わった精神衛生法が、精神保健法を経て、現在の名称となったものです。

 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律 - 法令データ提供システム

1、5条は精神障害者を定義し、知的障害が含まれることを明示しています。なお、発達障害の明示はありませんが、障害者基本法2条に「精神障害(発達障害を含む。)」という表現が入り、精神障害者保健福祉手帳の対象とする要件も整備されてきました。

2、入院の類型は5章に定められていて、任意入院、措置入院、緊急措置入院、医療保護入院、応急入院の5類型となっています。なお、措置入院の制度はずっとあるものの、在院患者数に占める割合はすでに1%を切り、任意入院が過半数となっています。

3、12条に基づいて、都道府県に精神医療審査会が置かれていますが、退院は患者や病院管理者の判断によることが基本で、38条の5の出番は例外と考えるのが自然でしょう。

4が正解です。精神病院法の時代からの懸案が、19条の7に義務として定められています。ただし、ただし書がついています。

問90 患者調査と精神科入院日数

患者調査は、厚生労働省が3年に一度ずつ行っている調査です。集計済みの最新のものは平成23年患者調査で、その概況を示しておきます。

 平成23年(2011)患者調査の概況 - 厚生労働省

1、患者調査は抽出調査です。また、平成23年調査では、東日本大震災の影響のため、東北地方の一部地域が対象から外されました。

2が正解です。「うつ病など」とも書かれる、ICD-10のF3が、95.8万人に上りました。2位はF2、「統合失調症など」です。

3、入院ではF2が、圧倒的な1位です。

4、概況では図5にあるように、平均で341.6日です。この年に300日を切ったのは、同じく厚生労働省による、病院調査の結果のほうです。両者では算出方法が異なることに注意してください。また、どちらも「平均」の意味が誤解されやすいという問題もあり、参考として、ヨミドクターの記事、平均在院日数…長期入院の実態は反映せずを示しておきます。一方で、日本だけ精神科の入院日数が異常に長いという批判は耳にたこができるほど聞きますが、単に集計ルールの相違でそう見えるだけという面も大きいようです。日精協のオピニオン、平均在院日数・多剤大量併用の嘘は、全体で69.7日という推計値を示しています。