出題解説

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問46 障害受容の価値転換理論

Wright, B.A.は、Dembo, T.らによる戦傷者の研究を発展させて、身体障害に関する障害受容に求められる4種類の価値転換を明らかにしました。この価値転換理論は、個々人の努力に重点を置きすぎるなどの批判もあびましたが、障害受容やリハビリテーションの研究や実践に、大きな影響をあたえました。

1、価値転換理論にあるのはこの逆、価値範囲の拡張です。

2が正解です。なお、これは客観的な能力自体の回復で悪影響を減らすことではなく、能力に関する自認についてのことですので、誤解しないようにしてください。

3、価値転換理論にあるのはこの逆、身体の外見を従属的なものとすることです。

4、価値転換理論にあるのはこの逆、比較価値から資産価値への転換です。

問47 聴覚障害と言語発達

1、伝音性は外耳や中耳、感音性は内耳や聴神経に原因がある場合の表現です。また、これらがいずれも正常でも、聴覚野の両側性損傷で聴覚が損なわれることがあり、皮質聾と呼ばれます。

2が正解です。喃語が一定程度までは発達して、健聴児であれば音声言語へとつながっていくところを、そうはならずに発声が消えていく経過をたどります。ここから、発達過程における喃語の意味についてどんなことが言えるか、考えてみてください。

3、人工内耳は、むしろ早く導入できたほうが、音声言語が効率的に獲得できるなど、よい効果が上がります。

4、ろう文化は、音声言語ではないコミュニケーションの世界で育った者による文化性ですので、中途障害者が形成するものではありません。むしろ、中途障害者は音声言語で生活してきましたので、そこに受けいれられることにも困難がともないがちです。

問48 国際障害分類の社会的不利

国際障害分類(ICIDH)は、Wood, P.の着想を発展させて、WHOが1980年に打ちだした考え方です。これを拡張し、障害者に限らず人間一般を包括するモデルとしたのが、2001年の国際生活機能分類(ICF)ですので、合わせておさえておきましょう。ICIDHとICFとの関係や発展のポイントの概説を挙げておきます。

 国際障害分類初版(ICIDH)から国際生活機能分類(ICF)へ ―改定の経過・趣旨・内容・特徴― - 障害保健福祉研究情報システム

1、これはその国や地域での一般的な経済的水準を基準とした場合の、相対的な低さです。ちなみに、わが国の相対的貧困率は、平成26年版 子ども・若者白書(日経印刷)の第1-3-39図ではっきりわかるように、OECD加盟国の中では相対的に高い位置にあります。

2、これは、不満が生じるほどに自己より他者が、内集団より外集団がより資源をもちめぐまれた関係を指します。Townsend, P.が提唱し、貧困の議論や政策に影響をあたえた考え方です。

3が正解です。なお、しばしば誤解されますが、ICIDHは図の左側の要素が生じたら、矢印どおりに社会的不利へ達することがさけられないという決定論的なモデルではありません。むしろ、途中のどこかで止めれば、より左側のものの改善が不可能であっても、社会的不利は起こらなくできるというように読みます。医学決定論ではなく、むしろ福祉用具やバリアフリー化の意義をみちびきます。

4、これは医学的には必要性が認めにくいのに、病院の外に退院をさまたげる理由があるために長く続いてしまう入院のことです。本来は医療ではなく介護が求められるべき高齢者や、偏見のある社会には居場所を得にくい精神障害者の問題がよく知られています。なお、精神障害者の入院期間については、問90解説も参照してください。

問49 抑うつを測定する心理尺度

うつ病は大きな問題であることもあって、抑うつを測定する心理尺度は数多くあります。この設問で取りあげたもののほかにも、CES-DやPHQ-9など、さまざまなものが使われています。たいていは、depressionの頭文字であるDがつくのですが、PHQ-9はつきませんし、Dがついても抑うつの尺度とは限りません。

123は、HDS-Rが、抑うつの尺度ではありません。これは、改訂長谷川式簡易知能評価スケール、ないしは長谷川式認知症スケールと呼ばれるものです。

4が正解です。SDSはツァン自己記入式抑うつ性尺度、BDIはベック抑うつ質問票、HAM-Dはハミルトンうつ病評価尺度です。

問50 パロキセチンの適応

医薬品は、ほとんどがカタカナで、とてもなじみにくいと思いますが、有名なものからだんだんおさえていきましょう。調べるときに便利な、医薬品検索サイトを示しておきます。

 イーファーマ

1が正解です。選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)の一種で、いわゆる第3世代の抗うつ薬に分類されます。ちなみに、アメリカで広く用いられているSSRIであるフルオキセチン、商品名プロザックは、わが国では未認可です。

2、これは断酒補助剤です。従来の抗酒剤とは異なり、飲酒欲求をおさえる効果を持ちます。

3、これは非定型抗精神病薬で、治療抵抗性の統合失調症への切り札とされます。ただし、無顆粒球症などの重大な副作用のリスクがともない、注意が求められます。

4、これは中枢神経刺激薬、つまり覚醒剤に近い薬剤です。リタリンは、わが国ではうつ病への適応が長く認められ、ADHDへの効果も知られるようになった一方で、不正処方や依存性が社会問題となりました。そのため、現在は適応症がナルコレプシーのみに、販売も登録制となりました。