出題解説

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問101 DVの周期性と共依存

DVは、英語のdomestic violenceの略ですので、直訳すれば「家庭内暴力」かもしれませんが、わが国で家庭内暴力というと、思春期以降の子どもから親へふるわれる暴力をイメージしますし、親から子への虐待はDVとは区別されますので、配偶者間暴力と表現されます。

1、DV事例には、劣等感との関連がうかがえるものが、しばしばあります。配偶者がすぐれた特性をもつことに劣等感をあおられて攻撃に走る、被害者側が劣等感や罪悪感にとらわれて援助を求めず継続するなどのパターンがあります。

2、DV防止法は、正式名称を配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律といい、いわゆる「でっちあげDV」を横行させるほどに強力なのですが、デートDVへの発動は困難です。改正時に加わった1条3項によって、内縁関係も対象に加えたところまでが、保護命令の射程です。

3、周期性のDV加害のパターンでは、良好な関係であるハネムーン期から、少しずつ険悪な状態が生じてくる準備期ないしは緊張期、大きな暴力行動にいたる爆発期へという展開がみられます。爆発期の後は、加害者は深く反省する態度を示し、それを被害者が許容することでハネムーン期へと戻ります。

4が正解です。このため、DV被害者が、周囲の説得にもかかわらず逃げない、いったん保護されても自分から戻っていくなどして、関係者に徒労感を生みます。ハネムーン期が得られることでの部分強化、たびたび耐えてきたことでのコンコルド効果や認知的不協和、各種の防衛機制などの関与が考えられるでしょう。

問102 いじめの定義とネットいじめ

いじめ防止対策推進法は、なお「加害者」側が認めないなど係争中の大津中2いじめ自殺事件を受けて、議員立法でつくられました。長く、旧文部省や文科省の調査においてのものが、いじめの公的な定義とされてきましたが、2条1項は、いじめに法的な定義を行いました。

 いじめ防止対策推進法 - 法令データ提供システム

1、いじめの4層構造は、いじめ 教室の病い(森田洋司・清永賢二著、金子書房)によって広く知られますが、これは定義ではありません。この法律にも、旧文部省や文科省の定義にも、直接には反映されていません。

2が正解です。2条1項のかっこ内に「インターネットを通じて行われるものを含む。」とあります。文科省の調査にも「パソコン・携帯電話での中傷」が加えられましたし、いじめの構造(森口朗著、新潮社)でいう「犯罪型コミュニケーション系いじめ」を取りこんだといえます。

3、かつての文部省時代からの調査での定義には、弱者への一方向性、攻撃の継続性、苦痛の深刻性がありましたが、これらははずされました。文部科学省のサイトから、いじめの定義を参照してください。もちろん、法的定義にもありません。

4、そのような内容はありません。なお、23条6項は、犯罪性のあるものには警察との連携を定めています。

問103 デートレイプと性被害の原因

1、そんなことはありません。成人女性による男子の性被害や、女子どうしでのものを考えればわかるでしょう。それでも、すべて原因は男性がつくった社会のゆがみだと言いだす人もいるかもしれませんが、学術的な場の支持はないでしょう。

2、実証されています。Bandura, A.による子どもの観察学習の実験は有名です。

3が正解です。夜道で何者かにおそわれてというパターンもありますが、デートレイプと呼ばれる、知っている相手との関係性の中での被害は、暗数になりやすく、相当数があるとされます。

4、結果的に攻撃的な行動は減りますが、術後の死亡を含め、有害で非人道的な手法です。また、非医療的な要因が結びついて行われた例も少なくなく、悪いイメージを増幅しました。日本精神神経学会は、1973年に臺実験の非難、1975年に精神外科否定決議を出しました。なお、いわゆるロボトミー殺人事件を持ちだして、攻撃性はなくならないと解釈したがる人を見かけますが、あれは前頭葉ロボトミーではなく、帯状回のロベクトミーです。

問104 刑法犯少年の人数と内訳

わが国の犯罪関係の資料としては、法務省のもの、特に犯罪白書がよく知られていますが、警察白書など、警察庁によるものもあります。「凶悪犯」など、両者の間で定義の異なる用語もありますので、気をつけてください。非行に関しては、処罰対象になる犯罪は多くないこともあり、警察庁のほうの資料が主にあつかっています。

 平成25年中における少年の補導及び保護の概況 - 警察庁

1、総数は半減どころか、4割近くまで減りましたので、人口比で考えても、減少は明らかです。

2が正解です。そして、そのおよそ半分が、万引きです。

3、全体の傾向ほどではありませんが、初発型非行も減少しています。また、初発型非行は、非行の道のはじまりで、万引きなど軽微な事犯ですが、「いきなり型非行」は、殺人のような重大犯罪を、非行の方向への徴候がみられなかった少年が行うものを指します。

4、大麻は男子が大半を占め、覚醒剤は女子に多いという性差があります。ちなみに、シンナー等の乱用は男女が半々程度ですが、近年は件数自体が激減しました。

問105 非行を抑止する社会的絆

Hirshi, T.は、非行の統制理論の重要な著作である、非行の原因(文化書房博文社)を著しました。性悪説的な立場から、一部の少年を悪に走らせる要因ではなく、多くの少年を実際には悪に走らないようにさせる要因を見いだしました。それが、4種の社会的な絆が非行を抑止するという、絆理論です。

1が正解です。よい愛着があるほど、悪に走ればそれを失う損失は大きいので、抑止力になります。

2、コミットメントは、「投資」と意訳されることもあり、よい将来につながる努力の積みあげです。街をきれいにして犯罪をしにくくするのは、環境犯罪学の割れ窓理論の考え方です。

3、巻き込みは、カタカナでインボルブメントとも書かれ、社会的に好ましい諸活動に時間を費やすことです。ひまがなければ、悪事に手が出てしまう機会も生じません。

4、規範信念は、非行は悪、してはいけないという内面化された意識です。