出題解説

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問56 ロジャーズの予防動機づけ理論

健康行動に関するモデルには、いろいろなものがあります。名前から内容がイメージしにくいものも多いですし、そこに提唱者も対応させるのは、意外に覚えにくいところですので、気をつけてください。

1、TTMはProchaska, J.O.らが提唱したものです。Ajzen, I.は、計画的行動理論の提唱を主導しました。

2、健康信念モデルはBecker, M.H.とMainman, L.A.が提唱したものです。Green, L.W.は健康教育のプリシードモデルを提唱し、これがプリシード-プロシードモデルへと発展しました。

3、計画的行動理論はAjzen, I.らが提唱したものです。Prochaska, J.O.は、TTMを提唱しました。

4が正解です。Rogers, R.W.は、健康への脅威の評価と対処行動の評価とが予防行動を動機づけるという、予防動機づけ理論を提唱しました。なお、クライエント中心療法やエンカウンターグループを考案したRogers, C.R.や、イノベーションの普及(翔泳社)を著しイノベーター理論を提唱したRogers, E.M.とは別人です。

問57 七つの健康生活習慣と食行動

アラメダ郡調査は、健康に関するさまざまな知見をみちびいた縦断研究です。Breslow, L.は、その結果から、健康長寿にかかわる7種の生活習慣を見いだしました。自身もこれを意識した健康な生活を送ったとされ、従軍や離婚など、ストレスフルなライフイベントも体験しつつ、97歳まで生きました。なお、数がたまたま一致するものの、七大生活習慣病と対応するわけではありません。

1、過重な残業の害は明らかですが、7習慣には含まれません。なお、わが国には、長時間残業者に対して、労働安全衛生法66条の8によって医師の面接指導を受けさせる制度があります。

2が正解です。朝食はきちんと食べて、間食はしないのが、健康長寿によいのです。

3、テレビの長時間視聴の害は明らかですが、7習慣には含まれません。なお、害に関して、日本語で読みやすいものとして、日本生活習慣病予防協会のサイトから、テレビの長時間視聴は体に悪い 視聴時間6時間超で余命5年短縮を挙げておきます。

4、7習慣に含まれませんし、ポジティブな自己提示は、むしろ健康を促進することが考えられるでしょう。

問58 自律訓練法の考案者と手法

1が正解です。Vogt, O.の着想から、Schltz, J.H.が今日のやり方、名称のものとして体系化しました。

2、自律訓練法では、終了時の消去動作を除き、意図的な動作は行いません。また、自律と自立でとは、意味が異なります。障害者福祉における自立訓練については、WAM NETの自立訓練(生活訓練)を参照してください。

3、背景公式を含めて7公式からなりますが、重感公式が第1公式で、「手足が重たい」です。額部冷感公式が第6公式で、「額が気持ちよくすずしい」です。

4、自律訓練法の効果は、交感神経の活動はおさえ、副交感神経の活動を高め、心身がリラックスする方向へとはたらきます。

問59 従軍後のPTSDへのEMDR適用

1、PTは、戦傷者には身体的なリハビリテーションとして有効ですが、重度のPTSDへの介入技法としてはあまり適しません。

2、SGEは開発的な機能が中心ですので、PTSDへの介入には向きません。集団技法で有用なのは、自助グループなどでしょう。

3、MCMCは乱数シミュレーションから確率分布を得るアルゴリズムの一種で、心理臨床的な技法ではありません。心理学の分野にも広まりつつあるベイズ統計では、パラメータの推定によく用いられます。一部で「みどりぼん」として名高い、データ解析のための統計モデリング入門 一般化線形モデル・階層ベイズモデル・MCMC(久保拓弥著、岩波書店)を紹介しておきます。

4が正解です。EMDRは、Shapiro, F.によって開発され、特にPTSDへの著効性で知られています。正式には8段階から構成され、そのうち第4~6段階で、名前の由来である眼球運動を用いたアプローチがとられます。くわしくは、開発者自身による概説、EMDR 外傷記憶を処理する心理療法(二瓶社)を見てください。

問60 内観療法の考案者と手法

内観療法は、浄土真宗の僧侶であった吉本伊信によって、わが国で独自に開発された心理療法です。Naikanとして、海外でも知られるようになっています。

1、森田正馬は、森田療法の開発者で、内観療法とは別です。後に、Reynolds, D.K.はコンストラクティブ・リビング(CL)として、両者を組みあわせたアプローチを構成しましたが、森田が内観療法をつくったわけではありません。なお、精神保健福祉士国家試験受験ワークブック2015(中央法規出版)を読んで信じた人は、私がうそを書いているように誤解すると思いますが、あちらのほうが不適切だと断言させてもらいます。百歩ゆずって、内観療法に森田の影響があると論じる程度ならまだしも、森田のほうのみを赤字で強調してまでとは、常軌を逸しています。あの定評ある参考書で、毎年あの書き方ですので、たまたま編集ミスで混入したのではないわけで、私がここで書いたくらいで妥協する方ではなさそうですが、内観療法の開発者は吉本ひとりと覚えてください。

2、これは壺イメージ療法になります。田嶌誠一によって開発されました。

3、これは風景構成法になります。中井久夫によって開発されました。

4が正解です。内観の吉本原法としてイメージされるのは集中内観で、研修所に寝泊まりしながら、外界からはなれて数日をかけて行います。日常内観では、ふだんのくらしの中で機会をとり、内観三問などに向きあいます。