生駒 忍

記事一覧

インスタントラーメンの定義とジェンダー差

きょう、JOLonlineに、約40%のティーンは月に1、2回はインスタントラーメンを食べる…!?という記事が出ました。

「お手軽フードの代表格、お湯入れて数分待てば食べる事のできるインスタントラーメン。」と書き出されます。カップラーメンだけか、煮る必要のないチキンラーメンのようなタイプのものまでを、インスタントラーメンと呼んでいるようです。ですが、これは一般的な定義だけでなく、調査結果ともずれます。4位、マルちゃん正麺は、カップ化はされていませんし、ためしたことはありませんが、チキンラーメン方式の調理は適さないはずです。また、7位は、さまざまなバリエーションがつくられてきたシリーズですが、ラーメンは見たことがありません。2位も、ラーメンとはまた別と考えるほうが自然なように思います。もちろん、1位も、「ヌードル」がラーメンかという問題をはらみます。

その2位は、「王道のソース味から明太マヨ、シーフードに塩味とそのバリエーションが増えているのも人気を反映した証。」という説明の文末を、「人気の証」か「人気を反映しています」かにしたいところですが、ここだけ固有名詞ではないカテゴリなのも特徴的です。それで思い出したのが、はぐ(佐々木マキ作、福音館書店)です。こちらは逆に、毎回同じパターンに見えて、「きのこちゃーん」だけが固有名詞なのです。

月あたり0~2回が8割という調査結果、少なく見えるかもしれません。ですが、昨年の暮れにマクドナルド不振の記事で触れた、若者の献血離れのような解釈の前に、調査の性質を考えたほうがよさそうです。真夏の調査であることはもちろん、ジェンダー差もありそうなテーマですので、これでおかしくはないように思いますが、どうでしょうか。

もうやんカレーのスパイスとBK炎上事件

きょう、zakzakに、「もうやんカレー」辻智太郎社長 原価が高くても客が多く来れば大丈夫という記事が出ました。カレー屋の社長を取りあげたものです。

あの深い味わいには、「形はなくなっているが、1皿に玉ねぎだけでも丸ごと1個分、そして25種以上のスパイスが入っている。」そうです。この書き方からは、スパイスの種類が、おそらく30種にはとどかないことがうかがえますが、数をはっきり出さないのはなぜでしょうか。天気や季節に合わせて、あるいは仕入れによって前後するのでしょうか。それとも、数え方がはっきりしないものがあって、はっきりは書きにくいのでしょうか。柏松戸食本 2014(ぴあ)が、らーめん金竜の味噌らーめんを、「さんしょうや七味など数種類の香辛料をブレンドしたスパイシーな味噌ラーメン。」としていて、数え方が気になったのを思い出しました。

登場するエピソードに、既視感をおぼえた人も多いと思います。ですが、ゴーストライターの記事で取りあげた佐村河内や、石の虚塔 発見と捏造、考古学に憑かれた男たち(新潮社)が取りあげた藤村新一のように、別人の半生を取りこんだわけではないはずです。あの社長は、ほかでも取材を受けていますので、今回登場したお話は、すでによそも取りあげてきました。たとえば、飲食の戦士たち第419回を見ると、同じような内容が含まれていることがわかります。むしろ、そちらのほうがくわしいくらいです。最後に、「思い出のアルバム」までついています。ですが、その2枚目は、この第419回の半年前の、今度はバーガーキングで…… 炎上中の「バンズの上に寝そべってみた」写真についてバーガーキングが謝罪を連想させるものです。そのバンズのような、これから廃棄するものではなく、こちらはこれから調理する食材に見えますので、より非常識な気もしますが、どうでしょうか。

スイカのさまざまな切り方と役にたたない努力

きょう、Pouchに、【やってみよう】まだある! 思わずやってみたくなる「スイカを食べやすく切る3つの方法」という記事が出ました。同じくPouchにおととい出た記事、【やってみよう】新しいスイカの切り方! まるでスイカバーみたいにスティック状に切る方法の、「いわばその続編」とのことです。

その1、その2、その3と、3種類の方法が、動画のキャプチャ画像をならべて紹介されます。難易度はそれぞれ、1、3、5と、ひとつ飛びで与えられていて、順位ではありませんが、順序尺度でしょうか。以前に、孤独死3万人説の記事で日常生活自立度のわかりにくさについて触れましたが、この難易度は、値が大きいほどむずかしいという、わかりやすい関係のはずです。

その1は、特別な道具を使います。アップルカッターの化け物のような大きさですが、同じようなものは国内でも手に入り、wkが販売するフルーツカッター スイカ メロン リンゴカット ギザ刃 芯抜き フルーツスライサー ケーキカッターがあります。大は小をかねると言われますが、これひとつでさまざまな食品がカットできるようです。ですが、バナナは別で、バナナスライサーが楽しそうです。

その3は、難易度5というだけあって、練習をつまないとむずかしそうな芸当です。ここでは袋に流しこんでしまいますので、大きな深皿にばっとあけるなど、来客に見せる演出に使えるとおもしろそうですが、おどろきはあっても美しさに欠けて、むずかしいだけで実用的ではないのかもしれません。努力不要論(中野信子著、フォレスト出版)に、「本当に難しいのは、役に立たない部分もリッチにしようとする努力です。」とあるのを思い出しました。また、こんなことを身につけても無意味だと言われそうですが、新世代努力論(イケダヤハト著、朝日新聞出版)は、努力に意味をもとめることの無意味さを指摘しています。

くふうは、切り方だけでなく、食べ方にもあってよいでしょう。同じくPouchに1年前に出た記事、こんな食べ方があったのね! 目からウロコの「スイカ」料理25選は、「ではここで早速、その中からひとつを抜粋して、ご紹介しちゃいますね。」などのことばづかいにいらだった人もいると思いますが、スイカの奥の深さが味わえます。私は以前、抱擁、あるいはライスには塩を(江國香織作、集英社)に登場するカングレホ・サラダは架空の料理だと決めつけていましたが、この記事を見て、それでもロイの感覚はわかりませんが、スイカのソテーもあっておかしくはないと思うようになりました。しかも、ここには収載されなかったスイカ料理も、まだまだあるはずです。たとえば、バカ画像ゲラゲラKING(コスミック出版)の246ページにある、スイカを台に使って東洋風のめんを盛った料理は、いまだに名前もわからず、詳細がつかめないままなのですが、旅先で食べたことのある方はいますでしょうか。

再度の新福菜館本店紹介と「やきめし飯」批判

きょう、ロケットニュース24に、地元民イチオシ! 名店中の名店「新福菜館本店」は中華そばだけでなく “やきめし” も絶品!!という記事が出ました。

「JR京都駅の北口を出て、東側に向かって数分歩くと、いつも行列の絶えない2つのラーメン店がある。「京都たかばし 本家第一旭」と「新福菜館本店」だ。」と書き出されます。鉄道ファンには、JR京都駅には、西口や地下東口はあっても「北口」はない、近鉄にもない、地下鉄にあるのは「北改札」だと言われるかもしれませんが、ふつうは京都駅を出ると、ここでいう「北口」のほうになるのが自然でしょう。少なくとも私は、反対側から駅に入ったことは何度かありますが、駅から反対側へと出たことはありません。「地元出身」の筆者は、南にも出られることを、あるいは南にも出られると知っていることを、遠まわしに表現したかったのでしょうか。

「実はその2店のうち、「新福菜館本店」は以前に以前ロケットニュース24でもお伝えした。」と来るので、今回は第一旭の記事かというと、またも新福菜館の記事です。しかも、タイトルからすると、今回はやきめしに焦点をあてるように見えますが、写真の数は中華そばの倍でも、文章ではやきめしはつけたしのようなあつかいです。

では、また同じような記事を書いたのは、「1回取り上げただけでは、まだまだ」だから、というだけでしょうか。1か月前に、GIGAZINEに京都を代表する老舗ラーメン店の1つ「新福菜館本店」に行ってきましたという記事が出たところで、むしろそちらの二番煎じのように見えてしまい、ライターのお仕事として、スマートではないようにも思えます。原稿のねたが切れてしまい、やきめしだけに焼きなおしと考えたのでしょうか。グルメの嘘(友里征耶著、新潮社)でいう「ヨイショ・ライター」、グルメの真実(友里征耶著、宝島社)でいう「ヨイショライター」ではないと信じたいところです。あるいは、前の記事に事実に反することを書いたので、その罪ほろぼしという意識もあるかもしれません。

紹介文は、ロケットニュースらしく平易で、親しみやすく書かれています。「奥行きを感じさせるスープの中で、醤油の風味がふんわりと広がっているイメージ」とあるくらいで、先ほどのグルメの嘘の「味の表現に気味の悪い形容詞を使うな」には引っかかりません。私は単純なので、いわゆる「ぐるナビ文学」よりも、こういうもので反応してしまったりします。ですが、次に京都に行くのは9月の予定で、しばらくは手がとどきません。そこで、先ほど、マルちゃん 京都 新福菜館監修 やきめし飯を食べました。Amazon.co.jpでさんざんな評価をあびていることには、食べた後で気がつきました。本物のやきめしと味が同じでないことへの不満があるようですが、この値段ですし、そもそもやきめしではなく、「やきめし飯」です。この商品は、昨年にリニューアルを加えて、ずっと売られていますので、看板を貸したほうもお金と引きかえに同意した味のはずです。がまんならないという人には、新福菜館にやめるよう要求して、そのときの反応を教えてほしいと思います。

盛岡の「ワッフルエムズ」とジェロのこだわり

きょう、盛岡経済新聞に、盛岡にワッフル専門店「ワッフルエムズ」-ふわふわ食感で人気にという記事が出ました。

記事タイトルは、前半だけ見ると開店のニュースのようですが、後半は開店からしばらくしないと書きにくい情報です。オープンから1か月なので、「盛岡のワッフル専門店「ワッフルエムズ」 ふわふわ食感で人気に」とは書かずに、開店情報の感じも出したかったのでしょうか。この記事自体は、あのサイトではかなりアクセスがあって人気記事になっていますが、「人気に」という状態をメインにした記事内容でもないので、そこを前面に出すことをひかえた面もあるのかもしれません。人気をうかがわせるのは、後のほうに「ワッフルは一日300個限定で、早い時は昼過ぎにはなくなってしまうという。」とある一文と、写真が売り物をきれいにそろえた撮影用の絵ではなく、品切れがわかる状態のものであることくらいでしょう。なお、私は食べたことがありませんし、実際の人気や評判もわかりません。とりあえず、検索してみると、waffle (ワッフル) Ms(エムズ)という個人ブログ記事は確認できました。

「ふわふわの食感にこだわって試行錯誤を繰り返し、ほのかな甘さとしっとり感のある生地が完成。」とあります。外見や、花輪ふくし会を定年退職した可能性から推測すると、「こだわる」ということばのこういう使い方は、店主が自分でしたものではないかもしれません。私の業界では、自閉症スペクトラムのことがあるのでまた特殊なのですが、本来はよくない意味あいだったものが、世間ではしばらく前に反転したことばです。今はもう気にならなくなった人も、ずっと違和感を持ちつづけている人もいるでしょう。サラダ油が脳を殺す(山嶋哲盛著、河出書房新社)には、一生のこだわりを持つことの影響のお話がありましたが、そのこだわりも、よい意味でのものでした。一方で、日本語ネイティブではない人ですと、最近ではたとえば、Rillia 2014年5月号(講談社)で、演歌歌手のジェロが、「僕はこだわりますが、人には求めません。」と書きましたが、これはどうでしょうか。