生駒 忍

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ワークブック共通科目編の要注意ポイント: 序

社会福祉士・精神保健福祉士受験ワークブック2013 共通科目編は、中央法規出版が出している、社会福祉士と精神保健福祉士との国家試験共通科目を対象とした受験参考書です。ワークブックという名前になっていますが、きっちりと書きこんだり、じっくりと問題を解いたりというつくりではありません。重要事項を短文にしたものがひたすら並び、それだけで何千項目もになる、読みごたえのある一冊です。

毎年、新しい版が出ていて、出題動向や法改正、新しい統計データなどに対応しています。中のつくりも、ときどき変わっています。2013年版は、それに加えて、表紙のデザインも大幅に変更されました。そして、信頼度No.1ということばが、表紙から消えました。私が確認できた範囲では、2007年版からずっとあったものです。2007年版では、黄色い丸の中に黒字で、「中央法規の受験対策書」というフレーズと合わせて入っていて、2008年版からは、配色はそのままで、単に信頼度No.1とだけ書かれるようになりました。それが、2013年版では、消えています。

消えた理由は、わかりません。それらしいことは、どこにも書いてありません。ですが、少なくともいえるのは、ほかの参考書にくらべれば、いまでも一番なのかもしれませんが、内容については、完全な信頼をおくことはできないということです。読んでいくと、明らかな誤りや、混乱や誤解をまねく記述にあたります。精神保健福祉士受験ワークブック2013 専門科目編などと異なり、この本の場合は、それぞれの章を誰が書いているのかが公表されていないのですが、どの章にも、そのまま信頼をおくわけにはいかない記述が見つかります。前に、同じ出版社から出ている精神保健福祉士国試対策専門科目最終チェックについて精神保健福祉士受験暗記ブックについて、それぞれ注意したほうがよいところがあると書きましたが、このワークブックについても、そのようなところがあるのです。

そこで、このワークブックで学ぶのなら気をつけなければいけないポイントについて、これから、少しずつ書いていきたいと考えています。あれだけの分量がありますので、一度にというわけにはいきませんし、気がついたすべてを書くつもりもないのですが、あの短文形式を少し意識して、小分けにして出していく考えでいます。自分がうっかり誤ってしまうことのないようにする、備忘録のような程度のものになるとは思いますが、それをこうして外へ書き出しておくことで、どこかで誰かの役にたつことがあれば幸いです。

なお、誤解しないでほしいことがあります。これは、出版社や執筆者を否定することを目的とするものではありません。想像してほしいのですが、あの量のものを、おそらくは〆切がきびしく決まったかたちでつくっているのです。しかも、対象にしている試験は、マークシート方式であるとはいっても、かなり手ごわい問題も出されるものです。専門学校や専門ウェブサイトなどが、試験のあとに模範解答を公表しますが、その模範解答が誤っていることが、毎年のようにあるくらいです。出題領域も、医学、法学、行政学、心理学、そして歴史や思想などもふくめて、さまざまにわたります。あの人数でこういったことにこたえるものをつくるのは、大変なことなのです。ですので、内容が完全ではないからといって、単純に執筆者を責めたてようという考え方は、私にはできません。また、出版社についても、同様のことがいえます。むしろ、これを出している中央法規出版は、私はとてもよくやっていると思っています。出しておしまい、売っておしまいではなく、誤りが見つかれば、それを正誤・追補というかたちで、そのたびに告知して対応しているのです。このワークブックについても、すでに7件が公表されていて、その文書の中に日付の誤りがあることはともかくとしても、とても親切で、責任ある態度であると思います。

さて、具体的なところは、次の機会からにしますが、まずは前置きとして、中身ではなく、カバーについてひとつ、示しておきましょう。カバー裏側の、内側に折りこまれた部分を見てください。「中央法規の受験対策書」として、関連する本が10本、示されています。その7番目は、「精神保健福祉士受験ワークブック2013 共通科目編」となっています。ですが、私が知る限りでは、このようなタイトルの本は、つくられていません。2文字ほど、直す必要がありそうです。

専門科目最終チェック本の気になった点

精神保健福祉士国試対策専門科目最終チェック2013という本があります。中央法規出版の、精神保健福祉士国家試験対策の出版物の中では、もっともうすく、もっとも遅れて世に出たものです。その名のとおり、試験が近くなってから、しあげに使うもののようです。紙質があまりよくないのも、くり返してじっくりと読み込むのではなく、さっと通して用がすむような性質を考えてのことでしょうか。

冒頭の「はじめに」には、「本書は、持ち歩きやすいハンディサイズにしていますので、どこでも気軽に開くことができ」とあります。値段のわりには小さいと思いましたが、そういうねらいだったのなら、一応は納得できます。ですが、気軽に親しむには、やや危うげなところもあります。以下に、ページ順に並べてみたいと思います。

・10ページで、うつ病にはセロトニン伝達機能の低下がかかわっているという書き方がされていますが、セロトニン自体がどこかに伝えられていくことではなく、セロトニンによる神経伝達機能が落ちることを指しているのでしょう。

・19ページで、問題文には「電気けいれん療法(ECT)の実施について」とありますが、実際の選択肢、特に正解である選択肢1を見ると、単に「電気けいれん療法(ECT)について」というかたちでたずねたほうが、より自然な問いになったように思います。

・40ページで、エリクソンの発達段階論においての危機が、対ではなく、その失敗側のものを指す用語として使われています。たとえば、青年期の同一性対同一性拡散については、同一性拡散が「心理・社会的危機」で、ちなみに、同一性のほうは「自我形成の課題」と呼ばれています。

・52ページで、周産期の医学的な定義が、出生後7日までということになっていますが、ICD-10での定義では出生後7日未満で、わが国の厚生労働統計もこれを採用しています。

・58ページで、フランスのセクター制度の説明がされていて、この分野での通例でセクトゥールとは読まないことは気にしないことにしますが、セクター当たり「20~30万人」もの人口があったとしたら、うまく機能しないはずと思います。

・60ページで、飲酒に関して労働安全衛生法上の自己保健義務がかかわるような書き方がされていますが、法的には不明確なところではないかと思います。労働安全衛生法には、そのような義務がはっきり定義されているわけではなく、66条5項と民法1条2項などから、労働者の義務として導かれるとされるものです。66条の7の2項や69条2項は努力義務規定ですし、不健康な飲酒習慣ならともかくとしても、個別の飲酒行動を制約するとは考えにくいと思われます。また、そもそも、労働者ではなく事業主のほうの飲酒であれば、適用外です。

・82ページで、ヴォルフェンスベルガーのつづりが誤っています。よけいなeが入って、英語風に感じられます。

・88ページで、社会復帰調整官の資格要件として、「精神保健福祉士、社会福祉士、保健師、看護師、作業療法士もしくは臨床心理士の資格を有する者」とありますが、すべてを並列であつかうのは、適切ではありません。精神保健福祉士はそのままでかまわないのですが、残り5資格については、「精神障害者の保健及び福祉に関する高い専門的知識」があることも同時に求められます。なお、これとは別に、学歴の要件もあります。

・104ページで、安田病院事件は大阪でのリンチ殺人事件であると説明されていますが、ほかにも、同じ名前でよばれる有名な事件があります。労働契約に関する判例としてよく引かれるもので、実践 労働相談入門 震災・労災・解雇・派遣・いじめ(水谷英夫著、民事法研究会)の3章1節にも解説があります。

・129ページで、ジェノグラムを「3世代の家族関係の情報を図式化したもの」とする選択肢があり、次のページでも「3世代の関係が特徴である」として、これが正解ということになっていますが、あつかう世代が3代であるとは限りません。多世代派家族療法で、3世代をみることが多いのは確かですが、系譜学のような使い方もあることを忘れてはいけません。

・146ページで、対象者の定義がQ128の1と2とでずいぶんと異なる形をとっていて、混乱した方もいたかもしれません。これは、仕様のようなもので、厚労省に原因があります。精神科アウトリーチ推進事業の手引きのⅣ-2では、まず「以下のいずれかに該当(疑い例を含む。)し、支援が必要と考えられる者」とあり、診断名が表で示されています。ですが、その後にまったく違う角度で、(1)~(4)までが並びます。前者がQ128の1、後者が2にそれぞれ対応しますので、どちらも正しいということにはなります。両者の位置づけは、本文中にはまったく説明されていないのですが、よく見ると、このPDFファイルの4ページ目と8ページ目の図の中に、説明があります。「当分の間は」前者を「主たる対象とする」のだそうです。

・164ページと165ページとで、法解釈はひとつしか存在しないと断言していますが、そうなのでしょうか。わが国ではかつて、いわゆる「法解釈論争」があり、複数の法解釈がありうることという考え方が、一定の支持を得たように思うのですが、どうでしょうか。来栖三郎著作集Ⅰ 法律家・法の解釈・財産法(信山社出版)などで、当時のみごとな議論にふれることができるはずです。

・186ページで、精神障害者家族会について「施設運営が主な役割ではない」とあるのを見て、有名な施設運営の例を連想してとまどった方と、あの転落を思い出して苦笑した方と、どちらが多いでしょうか。厚労省の構想に沿って、全家連が建てて運営していたハートピアきつれ川は、厚生省・厚労省からの補助金の不正流用を恒常化させて、その発覚から全家連は破産しました。さらに、施設を引きついだ全精社協も、補助金不正に手をそめて逮捕者を出し、破産しました。あの悲喜劇への皮肉をこめて出題したのでしょうか。

・198ページで、調査研究の倫理に関して、書かれている内容自体はまったく正当であると思いますが、根拠が社会調査協会の規程であるところには、やや疑問を感じます。歴史が浅いとはいえ、信用のおける団体であることは確かなのですが、そこの文書が社会調査一般に網をかけるものというわけではないと思います。また、「社会調査倫理綱領」は、社会調査協会が出したもののように書かれていますが、正しくは社会調査士資格認定機構によるものです。この綱領を修正して、5年半後に施行されたものが、一般社団法人社会調査協会倫理規程です。なお、綱領のころには全部で10条からなっていたのですが、規程はそこからひとつ、減っています。消されたのは、「第5条 調査対象者が求めた場合には、調査員は調査員としての身元を明らかにしなければならない。」です。

・202ページで、「二変量の関連性を調べる方法」が、クロス集計の説明だとされていますが、そうとは限りません。片方だけでも順序尺度以上であれば、そのままではクロス集計がむずかしいですし、ふつうはほかのやり方を使うはずです。

暗記ブックの要注意部分

以前に、精神保健福祉士受験暗記ブック2013(飯塚慶子著、中央法規出版)に関して、国試出題への的中と、3年前とくらべての改善とについて、述べました。ですが、そういったことが評価できる一方で、誰にでもすすめられる本かというと、そうでもない面もあります。ごろ合わせの暗記テクニックなどが、出おくれ気味の人向けのような雰囲気を出しているのですが、説明が少なく、とにかく四角い表に表されていくつくりは、私からみると、ある程度わかっている人が、おさらいやだめ押しに使うことに向いているように思えます。

また、くせがありますので、あまりされないような書き方のところや、そのままでは誤解してしまうところ、そもそも誤っているところなどを、頭の中で訂正しながら読めるくらいになってからのほうが、より失敗がないように思えます。よく分かっていない段階で、書いてあるとおりを丸暗記するのでは、少々危うげです。そこで、どのようなところに注意しておくべきなのかを、抜粋、順不同で、示してみます。

・「ウェクスラー式知能検査の検査問題」という表がありますが、これはWAISの内容です。WPPSIやWISCは、こうではありません。WISC-Ⅳにいたっては、言語性-動作性の区分論からも離れています。

・ビネー式知能検査が適用できるのは、2歳からです。田中も鈴木も同じです。1歳児にビネー式を施行するようすを想像してみてください。

・感覚記憶の容量が、「わずかな部分」となっていて、さすがに落ちつきません。短期記憶のほうが「7±2チャンク」なのは、目をつぶることにしましょう。

・「第1種と間違えやすい第2種社会福祉事業」の表は、着想はとても親切だと思います。社会福祉法2条の丸暗記は負担が大きいですので、入所の「○○ホーム」と通所の「○○センター」という大まかな見わけ方を先に示しておいた上で、それではまちがいやすいものだけを個別に押さえるやり方は、合理的です。ですが、児童発達支援センターがこの表に入った理由が、どうしても理解できません。名前だけでも、機能を考えても、ふつうの第2種事業だと思うのがふつうではないでしょうか。どこをどうとらえると第1種のように思えてしまうのか、私にはわかりません。

・レビー小体型認知症の発症時期が、「不明」になっています。たしかに、ADなどにくらべれば、研究がおくれている認知症疾患なのですが、こういうあつかい方をされるほどではないでしょう。とりあえず、日本神経病理学会ウェブサイトの脳・神経系の主な病気をみると、50代から70代に多いとあります。

・ヒストグラムを「棒グラフのこと」と書いていますが、ふつうはどのように使いわけるのかに注意すべきものです。

・広場恐怖の症状を、「トンネル、飛行機に恐怖を感じる」と述べたのでは、たしかにそういうことも起こるとはいっても、単一恐怖のほうとまぎらわしいです。そういえば、昨年暮れには「脱トンネル」が話題になりましたね。

・ラウントリーの第2次貧困は「お金の使い方が悪い」からというのは、正論ですがぎょっとする表現です。小野市福祉給付適正化条例案が、頭にうかびます。

・「ケアホームとグループホーム」の表で、グループホームには生活支援員が「いない」とありますが、そうは限りません。必置ではないというだけでしょう。そうでないと、たとえば緘黙症当事者と家族の小体験記集第4集に、うそを書いている人がいるということにもなってしまいます。

・ピアジェの発達段階での形式的操作期の年齢のめやすが「11~15」歳となっていますが、形式的操作期に終わりはありません。

・「脳梗塞(脳卒中の1つ)の種類」の表で、脳血栓の発症は「安静時」とありますが、活動中ならば起こらないということはないと思います。

・LASMIについて、尺度項目がたった5項目ということはありません。表も、復習問題も、どちらも要注意です。

・食中毒のところの復習問題は、答えはもちろん×で合っています。ですが、「腸炎ビブリオの説明である」とは、必ずしもいえません。ここの問題文の表現であれば、まだ食中毒というイメージがあまり持たれていませんが、アニサキス症もよくあてはまります。こう書くと、食中毒事件票の「病因物質の種別」欄にアニサキスが明示されたのはことしの1月なので、この暗記ブックが出た時にまだ考慮していなくてもしかたがないのではと、反論したくなる方もいるかもしれません。もっともなように思えますが、失礼ながら、もう一歩です。食中毒統計作成要領の別表2の「その他」に、「クリプトスポリジウム、サイクロスポラ、アニサキス等」と明示する改定は、20世紀のうちに行われています。また、この時の課長通知には、「原虫及び寄生虫による飲食に起因する健康被害についても食中毒としての取扱いを明確にするため」だとあります。

・「国民年金法実施」が、1961年ということになっています。実施という表現も気になりますが、拠出制の国民年金の部分が施行されたのがその年であるのが有名であるだけで、国民年金法附則にあるように、基本的には1959年11月に施行されて、ここで無拠出制の福祉年金が始まっています。

・カバーの裏表紙のほうに、この本の特徴である、ごろ合わせの例が部分的に出ています。これはくせ者です。それらしく見えるのですが、実際には、本体の中には、これと同じものはどこにも見あたらないのです。いわゆるジャケット詐欺でしょうか。さらに、よく見てみると、むしろ載っているはずのなさそうな内容であることが分かります。相馬事件と、精神病者監護法成立と、1897年とを結びつけるごろ合わせなのですが、1897年とはいったい、何にどう結びつく年なのでしょうか。監護法の、条約改正契機説ではなく、条約改正実施契機説のほうを指したいのでしょうか。この分量の本であつかうには、マニアックに過ぎるように思います。当然、どちらの説も、本体の中に出てくることはありません。ですが、相馬事件自体は有名ですので、ごろ合わせとして登場しています。それが、こちらは相馬事件と、監護法と、1883年とを結びつけるものなのです。この年なら、かんたんに理解できます。相馬事件の幕開けとなった、錦織剛清の建白書と告発は、1883年の12月のことです。つまり、カバーとは異なり、こちらはきちんとつじつまが合っているのです。では、カバーにもそれを、そのまま載せればよいところを、1897年という謎の年に差しかえたのは、なぜなのでしょうか。しかも、それに合うごろ合わせまで作って、もっともらしく作ってあるので、誤植などではなく、意図的に作りなおした可能性が高いのです。

暗記ブックの3年間での改善ポイント

少し前に、精神保健福祉士受験暗記ブック2013について取りあげました。その中で、この本はくせが強いと書きました。ですが、少なくとも、私が持っている2013年版と2010年版とを比べると、改善されたところがいろいろあることがわかります。

表紙のデザインが変わったのは、この本にかぎったことではなく、中央法規出版の福祉士受験関連本に共通することですが、前の株式会社ジオによるものよりも、今のタクトデザインによるもののほうが、しろうとらしさのないデザインになっていて、ずっとよいと思います。暗記ブックのページ数は、3年の間に約25%も増えていて、将来が心配なほどのハイペースですが、それでもくせの強かった内容は削られています。2010年版にあった「精神科ソーシャルワーカーの教育課程の形成」という節は、ロンドン大学の関連コースを開設年順に並べたり、ヤンセンによるリッチモンドフェローシップの創設を取りあげたりする、なかなかほかが手を出さないところを攻める内容だったのですが、まるごと消えました。国立高度医療専門センターの一覧なども、なくなりました。

細かいところでも、いろいろと改善がされています。その中から抜粋して、2013年版の掲載ページ順に挙げてみましょう。

・脳血栓と脳塞栓とを比較する表で、脳血栓の進行は「徐々に」であるのに対して、脳塞栓は「超急激」とありましたが、2013年版では1文字はずして、「急激」となりました。

・マズローの欲求階層説の上から2番目が、「自尊と尊敬」から「承認」に改められました。

・フロイトの発達理論における男根期の時期のめやすが、6歳までだったのが5歳までになりました。

・年金制度の改正の動向をまとめた表で、「賃金スライド→物価スライド」をまるごと赤い太字にしてあったものを、間の矢印はふつうの黒字にして、二つが別々の用語であることがわかりやすくされました。

・個別援助アプローチのモデルを並べた表で、一人だけ名字のみではなかった「ヴィヴィアン・バー」が、単に「バー」になりました。

・精神保健福祉援助技術に関するカタカナ語を五十音順に列記したコーナーで、2010年版には漢字2文字であらわした「使われる場面」がそえられていましたが、すべてなくなりました。

・就労継続支援のA型とB型とを比較する表で、労働法規の遵守はA型で「○」、B型は「△」とだけあったのですが、2013年版ではそれぞれ「適用」と「-」となり、B型のほうには表の下の注で説明が加わりました。

・障害者の職業リハビリテーションにかかわる各種センターの設置数が、いつの時点でのものなのかがわかるようになりました。

諾成・双務契約の国試出題を当てた暗記ブック

精神保健福祉士受験暗記ブック2013は、中央法規出版が毎年出している精神保健福祉士国家試験対策本のひとつで、その中ではおそらく、最もくせのあるものだと思います。小さな判型で、情報量よりも見やすさを優先したつくりですので、これで学べる量はわずかです。しかも、同時発売の社会福祉士受験暗記ブック2013とは、共通科目の部分などを使い回しています。それでも、このシリーズは、毎年ある程度売れているようですし、試験会場に持ちこんで、ぎりぎりまでこれにかじりつく人さえいます。

私も、くせの強さが気になってしまうこともあって、以前は失礼ながら、あなどっていました。ですが、いわゆる「新カリキュラム」最初の試験となった今年の出題を見なおすと、この小さな一冊に厳選されていたポイントをつかんでおくだけでも、多少の力になることがわかってきました。印象的な例を挙げると、共通の問題78は、諾成・双務契約を選択させるシンプルな設問で、民法をかじったことのある人には、サービス問題のようなものです。ですが、これはたとえば、あのワークブック共通科目編をすみずみまで探しても、423ページに「諾成主義」が理解できる一文があるだけですので、福祉ひと筋でしか学んでこなかった人には苦しそうです。いっぽう、暗記ブックをみると、典型契約についてまとめた表が、140ページに出てきています。表には12種類の契約が並んでいて、民法をふつうに学んだ人は、13にはなっていないことに困惑しそうですが、これは組合、終身定期金、和解を表の外に出してしまい、委任と寄託とは片務契約の場合と双務契約の場合とをそれぞれ分けたことによります。この配慮の上に、表の上には赤で囲みが二つ並んで、双務のおさえ方と、要物・諾成の分け方とを提案しています。みごとな的中です。

そうは言っても、さらに調べてみると、新カリキュラムに伴う変化などを推測して、今年の出題を当てる勝負をしかけていたわけでもなさそうだということが見えてきます。私の手もとには、この暗記ブックのシリーズは、今年のものと、2010年版との2種類があります。2010年は、共通科目が重なる社会福祉士のほうの「新カリキュラム」の最初の年で、そのためカバーと表紙との両方に「新試験対応」と書いてあります。そこで、この2冊を比べてみると、内容はかなりの部分が重なっています。たとえば、先ほど触れた典型契約の表は、2010年版ですと122ページに、まったく同じものが載っています。表の上についた囲みのデザインに変化があるだけで、あとはそっくりなのです。他の内容についても、法律や制度が変わったところは当然変わっていますが、そうでもない限りはかなり安定しています。このようすですと、今回あらたにねらいをつけたのではなく、おそらくは毎年同じものを載せ続けていて、その中に今回の出題に当たったものがあったということなのではないかと思います。ルーレットやドボンで見かける、いつまでも同じ数をねらい続けるやり方のようなものですね。もちろん、間の2011年版や2012年版は、持っていないので確認できていません。ひょっとすると、毎年同じなのではなく、3年周期で回していて、そのために2010年版と2013年版とならば合致するという可能性も、一応は考えられますが、どうでしょうか。

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