生駒 忍

記事一覧

線条体はドーパミン合成を行いません

シリーズ第15弾です。

ワークブック35ページに、パーキンソン病について、「原因は脳の黒質、線条体のドーパミン合成の低下である。」とあります。これは、正しくありません。

黒質では、ドーパミンが合成されます。線条体には、そのドーパミンが送られ、使われるのですが、線条体がドーパミンを合成することはありません。念のため、線条体でドーパミン合成が行われる特異な例があるかもしれないと考えて探してみましたが、そのような報告は見あたりませんでした。

臨床に役立つ解剖学・生理学概要(岡田昌義著、医学図書出版)にも、同じようなところがあります。「黒質の神経細胞の変性によりドパミンの産性が減少するため」と書いていますが、少し後に、「黒質や線条体からのドパミンの産性が減少することにより」ともあります。どちらでも、産生ではなく「産性」と表現しているのも、気になります。一方、社会福祉士合格ワークブック2013 共通科目編(ミネルヴァ書房)には、パーキンソン病は原因不明としながらも、「黒質・線条体でのドーパミン」が減ることで発症するとあります。

在宅就業障害者特例調整金・報奨金も対象です

シリーズ第14弾です。

ワークブック498ページに、「高齢・障害者雇用支援センターは、障害者や高齢者の雇用を円滑に進めるための啓発事業、雇用納付金制度に基づく業務(雇用調整金・報奨金および各種助成金の説明、納付金の徴収、受付、支給)、雇用管理指導に関する研修、相談、援助を行っている。」とあります。前のページから続く、「教育機関の役割」という項に入っていますが、どちらかといえばその前の、「労働関係機関の役割」のほうに入れたほうがよい内容です。そして、もしそこに入っていたとしても、この書き方では、誤解をまねくように思います。

雇用納付金制度に基づく、このセンターがあつかう業務は、ここでかっこの中にならべたものだけではありません。ほかに、障害者の雇用の促進等に関する法律74条の2に基づく在宅就業障害者特例調整金と、附則で当分の間という形で定められた在宅就業障害者特例報奨金とがあります。この2制度は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構概要2012を見ると、障害者雇用納付金制度に含まれていて、雇用調整金および報奨金とは別のものとして位置づけられています。特例子会社運営マニュアル(秦政著、UDジャパン)などでも、同様のあつかいです。障害者作業施設設置等助成金、障害者福祉施設設置等助成金など計7種の助成金とも、「助成金」とつかないことからもわかるように、異なります。

2011年の成年後見関係事件申立件数です

シリーズ第13弾です。

ワークブック443ページに、「2010(平成23)年1月から同年12月までの1年間に関する全国の家庭裁判所の成年後見関係事件(貢献開始、保佐開始、補助開始および任意後見監督人選任事件)の申立件数は3万1402件となっている。」とあります。2010年は平成22年で、平成23年は2011年なのですが、ここに示された件数は、いつのものなのでしょうか。

裁判所のウェブサイトから、成年後見関係事件の概況を見てみましょう。31,402件となったのは、平成23年1月~12月の概況で、PDFファイルの3ページ目、資料1にあります。ですので、ワークブックにある件数は、平成23年、2011年のものということになります。2010年は、30,079件です。

なお、先ほどの資料1では、件数は年々増えていて、最新の2011年がこれまでで最も多い年であるように見えますが、そうではありません。2006年に、32,125件を記録していて、この年が今のところ最大です。ですが、気をつけてほしいのは、「成年後見関係事件の概況」は、そのころにはまだ、年度単位の集計で発表されていたことです。平成18年4月~平成19年3月の概況を見ると、32,629件という数字がありますが、これは年度での合計です。

要保護者・被保護者以外でも審査請求できます

シリーズ第12弾です。

ワークブック334ページに、図1として、生活保護に関する処分や裁決に対する不服申立ての流れが図解されています。わかりやすく整理されていて、イメージをつかみやすい図だと思います。

ですが、申し立てる側が「要保護者・被保護者」となっているのは、誤解をまねくように思います。客観的には要保護者とはいえない人も、生活保護開始の申請をすることは可能です。その場合はもちろん、申請却下になるはずですが、その処分について、審査請求を行うことができます。それもだめなら、再審査請求も可能です。ですので、要保護者でも被保護者でもない人でも、この図にある一連の手続きのすべてを行うことができるのです。精神保健福祉士受験暗記ブック2013(飯塚慶子著、中央法規出版)116ページの図のように、「不服がある者」と書いておけば、問題はないでしょう。このワークブックでも、本文では「処分に不服のある者」「裁決に不服のある者」です。

ちなみに、この分野では必読の保護のてびき〈平成24年度版〉(第一法規)では、「処分に不服がある者」「裁決に不服のある者」とあって、審査請求と再審査請求とでは、助詞を変えています。生活保護法では、66条に「裁決に不服がある者」とあります。

FreidmanではなくFriedmanです

シリーズ第11弾です。

ワークブック74ページに、「フリードマン(Freidman, M.)とローゼンマン(Rosenman, R. H.)が提唱したタイプA行動パターンは、冠状動脈性心疾患と関連があると報告されている。」とあります。ストレスに関する節の中に、これだけを書かれても、予備知識のない人にはなぜストレスの話題で出てくる内容なのかが、やや見えにくいように思います。

しかも、名前のつづりに、誤りがあります。フリードマンは、正しくは"Friedman"です。なお、これは、日本人らしいまちがい方というわけではなく、英語圏でも見かけるスペルミスのようです。1年ほど前に出たThe family counselor(J.H. Blass著、iUniverse)でも、たしか中ほどにあったと思いますし、少し探してみて気づいたところでは、たとえばペンシルバニア大学の学生新聞、The Daily Collegian1979年9月28日付の紙面に、とても小さな字で出ている"Dr. Meyer Freidman"は、おそらくこのフリードマンなのだろうと思います。