出題解説

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問36 感情の末梢起源説

感情の末梢起源説は、中枢起源説にとってかわられたことになっていますが、後に顔面フィードバック説、ソマティック・マーカー説などが、末梢起源説的な考え方を再提出したことも、合わせておさえておきましょう。

1、この師弟が唱えたのは感情の中枢起源説で、キャノン-バード説とも呼ばれます。末梢起源説は、James, W.とLange, C.の名から、ジェームズ-ランゲ説とも呼ばれます。

2が正解です。身体反応が末梢で起こり、これが中枢へ伝えられて感情を起こすと考えます。

3、これは視床下部に感情の中枢があることを示唆し、中枢起源説側の知見のひとつです。

4、中枢起源説のほうがこの説明に適することが、末梢起源説への反証となりました。

問37 感情の認知説と吊り橋実験

感情の認知説は、感情2要因理論とも、あるいは提唱者の名をとって、シャクター-シンガー説とも呼ばれます。なお、このSchachter, S.は、多重記憶システム理論を唱えたSchacter, D.L.とは別人ですので、気をつけてください。

1が正解です。ゆれる高い吊り橋が喚起する生理的覚醒が、対面する異性の魅力へと誤帰属されると考えます。

2、アカゲザルを対象として、母子間の愛着が、学習によらず生得的であることを示しました。

3、意識的には気づかない先行経験が選好判断に影響することを示し、感情が認知とは無関係に起こるという主張をみちびきました。

4、想起時の気分に一致する記憶内容が想起されやすいことを示し、認知に感情が影響することを認知心理学的な実験手法にのせました。

問38 心理学における瞬目と発汗

1、単純な線形関係ではなくわかりにくいのですが、自発性瞬目と関係があることは明らかです。

2が正解です。眼に空気を吹きつけるなどすると、反射性瞬目が起こりますので、これを条件反応とするような瞬目反射条件づけを成立させることができます。

3、これは味覚性発汗です。ただし、2分類の場合には、味覚性発汗は精神性発汗の一種とされます。

4、どんな理由でかく汗も、成分のほとんどは水分であることに変わりはありませんので、蒸発時に気化熱をうばいます。

問39 パニック発作の認知モデル

家族療法や認知行動療法ではしばしば、問題の進行や維持に対して、このような円環状のモデルを考えます。すると、円環のどこであっても、介入してループをくずせば効果が上がるという予測がたちます。Clark, D.M.によるパニック発作のモデルも、かつては治療しにくかったパニック症に奏効する認知行動療法の発展につながりました。なお、うつ病の認知療法の開発者であるBeck, A.T.とともに、不安障害の認知療法 科学的知見と実践的介入(明石書店)や不安に悩まないためのワークブック 認知行動療法による解決法(金剛出版)などを著したClark, D.A.や、わが国の精神医療の後進性の批判で知られる「クラーク勧告」のClark, D.H.とは別人ですので、気をつけてください。

1、外傷記憶の侵入的想起の反復などにループ状の過程を仮定することはありますが、このモデルとは無関係です。

2、気分循環性障害は、双極性障害ほどではない、軽いうつと軽い躁とを行き来する症状を示します。ここでいう循環は、うつと躁とで回りつづけるという意味で、問9解説で取りあげた循環気質の循環と同じ意味です。

3、不合理と知っていての儀式行為の反復などにループ状の過程を仮定することはありますが、このモデルとは無関係です。

4が正解です。なお、パニック症という表現は、DSM-5にともない、これまでのパニック障害に対して使われるものとして登場しました。

問40 ラバーハンド錯覚と自己所有感

ラバーハンド錯覚は、ゴムの手の錯覚、あるいはすべてカタカナでラバーハンドイリュージョンとも書かれます。

1が正解です。自分のからだが自分のものであるという感じのことです。ラバーハンド錯覚では、触覚と視覚とで対応する入力を続けるうちに、自分のからだではないとわかっているはずの「手」に、自己所有感が生じます。

2、これは自分のからだを動かしたときの、自分で動いたという感じのことです。統合失調症のさせられ体験は、自己主体感が適切に生じないことで生じると考えられています。ラバーハンド錯覚の実験手法では、手を動かさずに行いますので、自己主体感は関係しません。

3、これは文字どおり、自分で自分をよいと評価できて、認められるという感じのことです。Rosenberg, M.のいう自尊感情と、だいたい対応します。

4、これは自分が求めたい結果を出す行動を適切にできるという感じのことです。Bandura, A.の社会的学習理論で重視されます。