生駒 忍

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足りていない女子の優柔不断と動画での解剖

きょう、マイナビウーマンに、【心理テスト】こんなところが嫌われる! あなたの「うざいポイント」がわかるという記事が出ました。

「早速、心理テストでチェックしてみましょう。」として、見合い写真でもっとも気をくばった要素を選ばせる「Q.」が提示されます。ですが、これの選択肢が「A.」として並べられ、Q&AのAとは考えにくいので、違和感があります。どれを選んでもまちがいではないという意味で、answersだと考えたのでしょうか。それとも、alternativesのAなのでしょうか。

それぞれの選択に対して、「メイクにいちばん気を配ったあなたは、顔にこだわりを持っています。」「ヘアスタイルにいちばん気を配ったあなたは、髪にこだわりを持っています。」「服装にいちばん気を配ったあなたは、センスにこだわりを持っています。」「笑顔にいちばん気を配ったあなたは、印象にこだわりを持っています。」と書き出されて、ストレートで拍子ぬけします。「占術家」の割には、占いらしいあざやかな飛躍をせずに、気をつけるポイントをふつうにみちびいていきます。「個性のない薄っぺらい人だと軽蔑されないよう、気を付けて。」をお返ししたいと思った人もいるかもしれません。どれもまちがいではないのですが、どれももの足りないように感じます。また、「いかがでしたか?」の前には、改行が足りません。

足りないといえば、ハウコレにきょう出た記事、カレが怒ってるのはこれ? 男子がイライラする女子の優柔不断・5つです。タイトルと異なり、何度数えてもひとつ足りません。「バイスティック」7原則の記事で取りあげたもののように、実は前編だったというわけでもありません。「今回は、20代男子20人に「どうにもイライラする女子の優柔不断5つ」について聞いてみました。」とあり、筆者が用意した5種類それぞれをたずねても、1種類だけは誰からも反応が得られなかったのでしょうか。この筆者は、自身について首席や大学2周目といった数え方はできていますし、音楽を愛でるサル なぜヒトだけが愉しめるのか(正高信男著、中央公論新社)によれば、ネズミでも7から8くらいまでは「数える」ことができるそうですので、何が足りないのか、ひょっとすると私の頭が足りないのか、わからなくなります。

数えられるものでは、ずれがはっきり見えて気になってしまいますが、そうでないものなら、中身の程度がタイトルとずれても、そうでもないのかもしれません。たとえば、OKMusicにきょう出た記事、AviciiのデビューアルバムTrueの中身を動画で徹底解剖!です。「Avicci」という表記もありますが、TRUE(Avicii)を取りあげたものです。なぜ今ごろというところは、10月12日の宣伝だと考えれば理解はできますが、「動画で徹底解剖!」とぶち上げたのに、動画といってもvevoのものを貼っただけで、しかも冒頭から3曲でおしまいです。コメントも、どれも浅い印象です。「アルバムの人気の楽曲が立て続けに収録されているというのも、贅沢な作品ですよね。」とあるところだけは、このアルバムでの人気の曲のこのアルバムへの収録という、自己言及的な深い世界にも見え、逆行カノンの記事を思い出しました。

「本当の精神年齢」の計算と「自称火星人」

きょう、マイナビウーマンに、【心理テスト】実年齢との差はどれくらい!? あなたの「本当の精神年齢」がわかるという記事が出ました。

宇宙人のことばの4択で、「どの選択肢を選ぶかによって、あなたの「本当の精神年齢」がわかります。」とのことです。その年齢が直接書いてあるわけではありませんが、かんたんな計算ですぐ出せます。そして、それぞれの説明が、1段落ずつあります。一つ目の選択肢のタイトルの前にも改行を入れると、その構造が見えやすかったと思います。

「ビックリするあなたに、宇宙人はフレンドリーに話しかけてきました。」という設定です。ですが、選択肢2は、フレンドリーには感じにくいものです。つっこみのような雰囲気をイメージすればよさそうですが、筆者は「詰問調のフレーズ」「偉そうで高圧的」とします。

選択肢4は、「あなたはきっと「宇宙人なんだから、何を言っているのかわからないはずでしょ」とクールに判断したのでしょう。」とされます。ですが、UFOは見える人には見えるものだという、カラスの死骸はなぜ見あたらないのか あなたの常識がひっくり返る本(矢追純一著、雄鶏社)のような視点が、ここにもあてはまるかもしれません。ダイニングテーブルのミイラ セラピストが語る奇妙な臨床事例(J.A. コトラー・J. カールソン著、福村出版)に登場する、ジェイ・ヘイリーと長いつきあいをもった「自称火星人」のエピソードを思い出しました。火星での名前をいくつも持ち、コミュニケーションを研究していたヘイリーでさえコミュニケーションが困難だったこの火星人を、となりの部屋のクライエントと対面させてみたところ、みごとな通じあいを見せたのでした。

グミキャンディ占いとインカの女性ミイラ

きょう、マイナビウーマンに、身近なものでできる、試してみたい世界の占い1位「コーヒー占い」という記事が出ました。「テレビや雑誌などで運勢が発表されると、つい気になってしまいますよね。」と、1文目から共感できないのですが、心理に関連のある話題も一応あって、その意味では気になりました。

紹介された中で、説明文をみる限りでは、第2位の「HARIBO占い(ドイツ:目をつぶってグミキャンディを袋からとり、その色の組み合わせで深層心理や未来を占う)」と、第5位の「ニキビ占い(日本:ニキビができた場所によって両思いか片思いか判断)」とが、ある程度は心理がらみのテーマの占いのようです。後者は、日本から唯一のランクインです。きのうの記事で触れた脈のありなしのようなところを、日本には「顔に出る」という言い方があるとはいっても、自分の顔に出るほうで判断します。また、占いのために自分から材料を用意する必要も自由度もなく、勝手に出たものへの解釈だけで行われるところも、取りあげられたほかの占いとは別次元です。日本人の利益獲得方法(田中健滋著、新曜社)で、日本社会が「受利社会」とされたのを思い出します。

2位のほうは、「深層心理」も取りあつかうそうです。5色がある中から5個を取りだすと、組みあわせは126通りです。そして、もし5色が等しい比率だったとしても、どれもが1/126の確率であらわれるわけではありませんので、ややややこしく感じます。ですが、HARIBO占い(D. ビットリッヒ著、阪急コミュニケーションズ)が1冊あれば、若狭家のメニューを思わせる組みあわせ一覧から、きちんと判断ができます。カラフルな取りあわせが楽しげで、しかもあれだけ弾力的なお菓子でも、きまじめにかっちりとあつかうことになるのは、ステレオタイプ的ですが、ドイツらしく感じます。ミュンヒンガーが指揮するヴィヴァルディ:協奏曲集「四季」のイメージです。

ドイツといえば、TOCANAにきのう出た記事、インカ時代の20代女性のミイラ、死因は宗教儀式の生け贄だった!? 500年前一体何があったのか?【最新研究報告】は、関連キーワードの最初がdoitu、3番目がドイツでした。先週にPLoS ONEが公開した論文、Reconstructing the Life of an Unknown (ca. 500 Years-Old South American Inca) Mummy – Multidisciplinary Study of a Peruvian Inca Mummy Suggests Severe Chagas Disease and Ritual Homicideの紹介を中心とした記事です。

「当時のバイエルン王女テレーゼ」とありますが、バイエルン王の子ではなく、王族の子女としての王女で、摂政王子ルイトポルトの長女、テレーゼ・シャルロッテ・マリアンネ・アウグステ・フォン・バイエルンのことです。問題のミイラは、ずっとバイエルン州立考古学収集館にあったように書かれていますが、テレーゼのコレクションから、ミュンヘン大学の解剖学研究所を経て、1970年に州立考古学収集館へ移りました。なお、LMUをミュンヘンに創設したのが、このテレーゼの祖父、バイエルン王ルートヴィヒ1世です。

「中南米に見られる「シャーガス病(寄生性の原虫であるクルーズトリパノゾーマによる感染症)」という感染症」とありますが、病原体の表記があまり見かけないものになっています。関西空港検疫所のサイトの、疾患別解説 - シャーガス病(アメリカトリパノソーマ病)からのコピペでしょうか。日本では、昨年夏のニュース、献血の血液に中南米の感染症 10年後に心臓に影響もあたりでシャーガス病を初めて知った人も多いでしょうし、ほかの原虫感染症も海外に比べて少ないので、病原性原虫の知識はあまりないのかもしれません。昨年見かけたものですと、図解 未知の大陸アフリカ完全読本(平野克己監修、綜合図書)には、アフリカ睡眠病の別名として「アフリカトリパノソーマ」とあり、ニッキンマネー 2013年3月号(日本金融通信社)では、渡邉智美という歯科医が、トキソプラズマを、マラリ「ヤ」の、しかも病原「菌」としました。

「彼女のミイラは、バイエルン州立考古学収集館において8月中旬まで一般公開されています。」とありますが、企画展のことでしたら、中旬には終わりません。8月31日まで開催予定です。

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