生駒 忍

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グミキャンディ占いとインカの女性ミイラ

きょう、マイナビウーマンに、身近なものでできる、試してみたい世界の占い1位「コーヒー占い」という記事が出ました。「テレビや雑誌などで運勢が発表されると、つい気になってしまいますよね。」と、1文目から共感できないのですが、心理に関連のある話題も一応あって、その意味では気になりました。

紹介された中で、説明文をみる限りでは、第2位の「HARIBO占い(ドイツ:目をつぶってグミキャンディを袋からとり、その色の組み合わせで深層心理や未来を占う)」と、第5位の「ニキビ占い(日本:ニキビができた場所によって両思いか片思いか判断)」とが、ある程度は心理がらみのテーマの占いのようです。後者は、日本から唯一のランクインです。きのうの記事で触れた脈のありなしのようなところを、日本には「顔に出る」という言い方があるとはいっても、自分の顔に出るほうで判断します。また、占いのために自分から材料を用意する必要も自由度もなく、勝手に出たものへの解釈だけで行われるところも、取りあげられたほかの占いとは別次元です。日本人の利益獲得方法(田中健滋著、新曜社)で、日本社会が「受利社会」とされたのを思い出します。

2位のほうは、「深層心理」も取りあつかうそうです。5色がある中から5個を取りだすと、組みあわせは126通りです。そして、もし5色が等しい比率だったとしても、どれもが1/126の確率であらわれるわけではありませんので、ややややこしく感じます。ですが、HARIBO占い(D. ビットリッヒ著、阪急コミュニケーションズ)が1冊あれば、若狭家のメニューを思わせる組みあわせ一覧から、きちんと判断ができます。カラフルな取りあわせが楽しげで、しかもあれだけ弾力的なお菓子でも、きまじめにかっちりとあつかうことになるのは、ステレオタイプ的ですが、ドイツらしく感じます。ミュンヒンガーが指揮するヴィヴァルディ:協奏曲集「四季」のイメージです。

ドイツといえば、TOCANAにきのう出た記事、インカ時代の20代女性のミイラ、死因は宗教儀式の生け贄だった!? 500年前一体何があったのか?【最新研究報告】は、関連キーワードの最初がdoitu、3番目がドイツでした。先週にPLoS ONEが公開した論文、Reconstructing the Life of an Unknown (ca. 500 Years-Old South American Inca) Mummy – Multidisciplinary Study of a Peruvian Inca Mummy Suggests Severe Chagas Disease and Ritual Homicideの紹介を中心とした記事です。

「当時のバイエルン王女テレーゼ」とありますが、バイエルン王の子ではなく、王族の子女としての王女で、摂政王子ルイトポルトの長女、テレーゼ・シャルロッテ・マリアンネ・アウグステ・フォン・バイエルンのことです。問題のミイラは、ずっとバイエルン州立考古学収集館にあったように書かれていますが、テレーゼのコレクションから、ミュンヘン大学の解剖学研究所を経て、1970年に州立考古学収集館へ移りました。なお、LMUをミュンヘンに創設したのが、このテレーゼの祖父、バイエルン王ルートヴィヒ1世です。

「中南米に見られる「シャーガス病(寄生性の原虫であるクルーズトリパノゾーマによる感染症)」という感染症」とありますが、病原体の表記があまり見かけないものになっています。関西空港検疫所のサイトの、疾患別解説 - シャーガス病(アメリカトリパノソーマ病)からのコピペでしょうか。日本では、昨年夏のニュース、献血の血液に中南米の感染症 10年後に心臓に影響もあたりでシャーガス病を初めて知った人も多いでしょうし、ほかの原虫感染症も海外に比べて少ないので、病原性原虫の知識はあまりないのかもしれません。昨年見かけたものですと、図解 未知の大陸アフリカ完全読本(平野克己監修、綜合図書)には、アフリカ睡眠病の別名として「アフリカトリパノソーマ」とあり、ニッキンマネー 2013年3月号(日本金融通信社)では、渡邉智美という歯科医が、トキソプラズマを、マラリ「ヤ」の、しかも病原「菌」としました。

「彼女のミイラは、バイエルン州立考古学収集館において8月中旬まで一般公開されています。」とありますが、企画展のことでしたら、中旬には終わりません。8月31日まで開催予定です。