生駒 忍

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『りらく』5月号での対照的な音楽の届け方

先日、学会発表のため仙台へ出かけた際に、りらく 2013年5月号を購入しました。『Re:raku』でも『ra kra』でもなく、『りらく』ですので仙台の情報誌です。

今号は、あちこちに訂正が出ているので気をつける必要はありますが、興味深かったのは、音楽を欲しているかどうかが確認されていないところへ音楽を届けることに関する、対照的な考え方が並んだことです。「可愛らしいフランス娘が歌っていると思うと興ざめ」という歌の話題もありますが、注目は歌手まきのめぐみへのインタビューと、篠笛教室「篠の音」の紹介です。震災後の南三陸で、仮設住宅の居住者に自分の歌のCDを配ったまきのは、「一連の行為が決してアーティストの独り善がりにならぬよう“聴きたくない方はどうぞゴミ箱にお捨てください”というお手紙も添えさせていただきました」と明かしています。一方、篠笛教室の先生という村山美惠は、「「笛はどこにでも持ち歩けるので、クラス会や会合の時にも持って行き、何気なく演奏すると喜ばれますよ」と生徒さんたちに勧めている」のだそうです。

三角カーネル関数ではなく三角形関数です

きょう、共立出版から、コンピュータビジョン アルゴリズムと応用(R. Szeliski著)の特別割引販売のご案内文書が届きました。税も送料も込みにして、15,000円でというお話でした。

ちなみに、この訳書の127ページ、図3.29のキャプションの中に、「三角カーネル関数」ということばがあるようで、私にはなじみのない専門用語のように思われました。ここが対応するのは、原書Computer vision: Algorithms and applications(R. Szeliski著、Springer)ですと147ページでしょうか。そこでは、Figure 3.29のその部分には、"and tent function in brown"というように登場していました。そのまま、三角形関数と訳してよいように思ったのですが、いかがでしょうか。

ポリアンナの新訳とネガポ辞典

ポリアンナ原理をご存じでしょうか。最近のテキスト等では、あまり見かけないような気もしますが、心理学の「原理」の中では、有名なもののひとつです。Dictionary of scientific principles(S. Mervin編、Wiley)にも、なぜか心理学と数学との用語ということになっていますが、収録されています。

その語源になった物語の、新訳が出ました。木村由利子翻訳による、新訳 少女ポリアンナ(E. ポーター作、角川書店)です。もちろん、あの飛びぬけてポジティブな主人公は健在で、訳しながらもさすがについていけないと思ったりもしたと、訳者あとがきに書かれていました。

一方、ネガティブをポジティブにという特徴では共通するのですが、そこにだけ特化したのが、ネガポ辞典(主婦の友社)です。ある意味で、リフレーミングの極北ともいえるような、容赦のない変換で満ちた一冊です。これは、まじめな本ではありません。ですが、この辞典には、きちんと「不まじめ」も載っていて、「気さく」「力を温存している」など、4種類の変換が提案されています。

月刊ダンスビュウ4月号

月刊ダンスビュウ2013年4月号の、まずは表紙に注意をひかれました。タイトルの文字が、大写しの人物写真で一部かくれることは、どこの雑誌でもあることで、ダンスビュウでも毎号恒例となっています。かくれているところも、正しく推測することができて、それはたいてい、わざわざ考えなくても見た瞬間にわかってしまう、心理学で知覚的補完とよばれるはたらきによっています。ですが、この最新号がとてもおもしろいと思ったのは、1文字がすっぽりとかくれていて、もちろんそれを補完して読むこともできるのですが、たとえ補完しなくても、そのまま読むと同じ読みになってくれるからです。「ュ」が抜けると、今度は歴史的かなづかいとして読むことができるのです。さすがに、若い人にはできなかったかもしれませんが、この雑誌の読者層でしたら、そうむずかしいことではなかったのではないかと思います。

それにあわせたわけではなく、たまたまだと思いますが、この号の読者プラザに、「ダンス人口の高齢化」という投書が載っています。若いころにはジルバがはやっていたが、いまは若者がダンスといったらヒップホップのことで、Shall We ダンス?の影響も限りがあり、40代くらいまでの人が入ってこないことをなげくという、この世界ならどこでも言われていて、ひろく共感をよぶ内容です。

なぜ若い人にそっぽを向かれてしまうのでしょうか。10年ほど前には、当時若い人にもある程度人気のあったタレントを集めての、芸能人社交ダンス部という企画が、バラエティ番組の中にありました。その後何回か、単発のスペシャル番組にもなったのですが、もう見かけなくなりました。ヒップホップ系ではないダンスのサークルは、伝統校を中心に、各地の大学に続いています。そこも、学生のだれもがあこがれる人気サークルになってはいないように思います。関心の対象が悪いのでしょうか、それとも、敬遠したくなるような空気があるのでしょうか。ふと、ちょうどこの号の、ある審判員がペンネームで書いたコラム記事を連想しました。その方が前に、その場に居あわせたこととして、大学名は出していませんでしたが、「大学対抗の団体戦で負ければOBが来て、先輩キャプテンは丸坊主!(何んだこのクラブは? その後の展開は省略)。」とありました。桜宮高バスケ部体罰事件のニュースで思いだして書いたのか、現在の各大学のダンスサークルではふつう起こらないことなのか、省略されたところにはもっとむごい事象があったのか、いろいろと気になるところはありましたが、外の世界にしかいない私は、明治大学応援団員自殺事件を思いだして、ついていけない気持ちになりました。

さて、「ダンス人口の高齢化」を書いた梶原浩明という方は、この雑誌を中心に、いつもダンス関係の投稿をされてきています。私の妻は(山本亜矢子作、文芸社)に出てくる梶原浩明のモデルではないと思いますが、まじめできちんとした方であることが、文章からうかがえます。ですが、批判されることもあります。桐生忠太やJutelineと名のっている方が、5年前に掲載されたものについて、「もっともらしげに書かれていますが 実際には役立たない内容ですので」と、きびしい批判をしています。どちらの主張が正しいのかは、門外漢の私には判断がつきません。なお、この批判者の方は、茅原伸幸のシルエット錯視に対して、私の正解として「乱数を用いている」「いわゆる錯視ではありません」「この制作者さんは ボールルーム・ダンスを為さる人」といった、ほかで見かけないユニークな主張をしています。これが正解かどうか、正解でないとしたらどこがどうおかしいのか、興味のある方は考えてみてください。

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