生駒 忍

記事一覧

アルコール臭をたてる横浜市職員への処分

きょう、msn産経ニュースに、横浜市2職員を懲戒処分 盗撮にアルコール臭…という記事が出ました。

記事タイトルには、「盗撮にアルコール臭」とあります。私なら、ここは無難に、「盗撮とアルコール臭」と書いて、誤解を減らすほうを優先したいところです。

勤務前に、あるいは勤務中かもしれませんが、飲酒をして問題になったのではないところが特徴的です。問題はあくまで「アルコール臭」なのです。ふつうに考えれば、飲酒が原因なのですが、本人は飲酒したとは絶対に認めない態度なのかもしれません。そこで、飲酒には触れずに、アルコール臭を発していて、市民から苦情が入ったことを理由に、減給処分をかける判断をしたのではと思います。

福岡市職員の飲酒運転の続発と「修羅の国」

きょう、西日本新聞のウェブサイトに、「規範意識緩んでいる」 相次ぐ福岡市職員逮捕 市民から憤りの声 [福岡県]という記事が出ました。きのうの福岡市立城西中学校教諭逮捕を受けたものです。

頭を下げる責任者と市民の怒りの声という、お決まりのパターンの記事ですが、これがくり返されるくらい、福岡の飲酒運転問題は手ごわいのでしょう。7年前の福岡3児死亡飲酒運転事故以来、あの地では特に、さまざまな対策がとられてきました。あの悲劇から5年がたった日に、TEAM ZERO FUKUOKAが動きだしましたし、福岡県庁サイトの交通安全のコーナーには、「飲酒運転」の4文字が何度も出てきています。

それでも、その足もとの福岡市職員から、飲酒運転の逮捕者が続いてきました。3児死亡事故も西部動物管理センターの職員が起こしましたが、それから半年もしないうちにまた起こした職員が、ほどなく死亡して事件解明が困難になった例もありました。今年は、市職員からすでに6名の逮捕者を出しましたが、そのうち4名が飲酒運転です。あと2名は、先月の放火と、3月の性犯罪です。もちろん、今回逮捕された教諭は、記事では昨年度から休職中だったということですし、アルコール依存症に罹患していたようですので、指導が届きにくい状態にあって、ほかの事例ほどには市を責めにくい側面もあります。それでも、記事では、石飛善明という人の、「教師が不足している中で、市はなんでこんな教師をそのまま置いていたのか」という声を取りあげています。YOMIURI ONLINEにきょう出た記事、アルコール依存症で休職、福岡市が復帰支援課検討と、教職員ら次々逮捕 分限免職の適用拡大検討…福岡市とから、一方は手をかけて戻して、もう一方は首を切りやすくするという、一般の職員と教員とで方向性が逆の対策を組む予定が見えますが、こういった声と関連があるのでしょうか。

こういうレベルの地域と言いきっておしまいの人もいるかもしれませんが、この特性は変えられないものなのでしょうか。昔からだと言われる一方で、九州大学のサイトにあるアルコール依存症というページには、「また2000年12月には、福岡南署の警察官が「ここ数年福岡市南区で、酒に酔って家族に暴力をふるったり、街 で 暴れたりする人が多くて困っています。アル中が増えているようですが、なぜでしょうか?」と嘆いていました。」とあって、適切でない表現があるのはともかくとしても、ちょうど今回の逮捕者も南区からでしたし、日本のほかの地域にはない特異な増加要因があるのかもしれません。なお、酒のしおり(平成25年3月)12章にあるように、日本全体の酒類消費量は、平成6年から8年にかけてが頂点になっています。

現地の人々は、怒りの声は当然だと思いますが、これを機会に地域の体質を変えようと動いたりはしますでしょうか。放火や性犯罪を含めて、市民は悪くない、市役所が悪いという理解でしょうか。あの3児死亡事故から数年でこれですので、何をしても効かないとあきらめていますでしょうか。あるいは、このくらいで外野がいちいちさわぐなと怒りだしたりするのでしょうか。そういえば、PRESIDENT 12月16日号(プレジデント社)では、手榴弾や暴力団抗争を持ちだして「修羅の国」といじられるのは過剰反応だと、42歳の「福岡人」が不満を述べていました。私には、「修羅の国」というネット用語を自分で使って反応しているこの人のほうが、過剰反応であるように見えました。

アルコール健康障害対策基本法の両面性

きょう、毎日jpに、アルコール依存症:新薬で広がる断酒治療法という記事が出ました。おとといの記事でも触れたレグテクトと、アルコール健康障害対策基本法案提出のうごきについて取りあげています。同じくきょう、北京新浪網に男子戒酒後出現幻覺稱遭人追殺 欲拉妻子四處跑という記事が出て、ぎょっとしたところですが、アルコール依存による問題を減らし、回復への道がひろがるのはよいことだと思います。

気になったのは、「脳」に関する表現です。「多量飲酒により脳の中枢部の神経が変形」とあるのは、「変形」のとらえ方によりますが、誤ったイメージを持たれそうです。「レグテクトは脳に作用するので、併用しても体への負担が少ない」というところには、以前の記事で「脳」と「私」とを分けることの議論について触れたことを思い出しました。なお、経口投与試験では14.1%に副作用として下痢が認められていますので、「体への負担」がないわけではないことに注意してください。

対策基本法の目ざす方向は、基本的には賛同できるものです。福山哲郎議員が語っている、立法によるよい影響は、期待してよさそうだとは思います。ですが、社会的な「理解」による副作用も生じるでしょう。アルコール依存症の章もある、あの「林先生」によるサイコバブル社会 膨張し融解する心の病(林公一著、技術評論社)を読むと、否認の壁が厚いこの疾患が、うつ病やアスペルガーと同様に「明るい病」になった時の、疾病利得や「自称患者」の問題が心配になります。

記事の末尾には、WHOによるアルコール依存症の診断ガイドライン6項目がありますが、医学用の道具ですので、自己判断などに使うのにはなじみにくいように思います。冒頭の「酒を飲めない状況で強い欲求を感じたことがある」からして、わかっている人向けのわかりづらい表現になっています。先ほどのサイコバブル社会にも載っているCAGEテスト4項目のほうが、一般向けとしては有用性が高いかもしれません。

ページ移動