生駒 忍

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浅香山病院精神科病棟でのくらしの写真展

きょう、msn産経ニュースに、精神科の暮らし知って 堺の病院、患者ら写真展という記事が出ました。あすまで開催の、約40点が展示されているという写真展の紹介です。

精神障害者と写真という組みあわせは、視覚障害者と写真ほどのものめずらしさはありませんが、めずらしいものではありません。精神病者私宅監置ノ實況及ビ其統計的觀察(呉秀三・樫田五郎著、創造出版)では、写真によるリアリティも、強い印象をのこします。被写体側ではないものとしては、ただいま第4回の出品を募集しているさがみスクラム写真展が、精神障害者が企画するイベントですし、小林順一という福祉事業家の活動もあります。小林の写真ワークショップは、精神看護 2012年7月号(医学書院)で取りあげられ、その障害者側にとっての意味が9項目にまとめられています。また、変わったところでは、8か月前に読売新聞大阪版に載った心の傷いやす和み猫 ほのぼの写真展があり、その記事によれば、撮影者はブルー・ムーンの「スタッフら」のようです。

このmsn産経の記事で紹介された写真展でユニークなのは、写真はプロと思われるカメラマンの作品ですが、そこに「被写体になった本人が手書きの説明を添えている」ところです。写真の中の客体を主体にもどすつくりは、アート的なおもしろさもありますが、同意のある公表であることを示す人権関係の配慮も感じられます。企画や運営にも、入院患者が関与しています。記事のタイトルに「堺の病院、患者ら写真展」とありますが、これは病院で患者らの写真が展示されるという意味だけではなく、病院と患者らによって行われる写真展という意味でもあるのでしょう。

うつ病と感情調整との関連の論者の主な著書

きょう、WEDGE Infinityに、うつ発症者にみられる感情調整力の弱さという記事が出ました。1月にはじまった、うつ病蔓延時代への処方箋というインタビュー記事シリーズの、14本目です。

冒頭では、うつ病につながる人生上のできごとのタイプとして、loss、humiliation、そしてentrapmentの3種類があるとしています。ひとつ目だけなら有名ですが、一般にはまだ、あまり知られていないとらえ方で、もちろんエビデンスに基づいています。少なくとも、シリーズ8本目の、「不安」「悲しみ」「恐れ」を「人間の3大感情」だという考えよりは、一般の方々の知識に入ってほしい内容です。British Medical Bulletin 57巻の手短なレビュー、Recent developments in understanding the psychosocial aspects of depressionのように、humiliationとentrapmentとをくっつける立場もありますが、わかりやすい例示ができていることもあり、かまわないと思います。

だんだんと、感情調整の重要性へと、お話が進んでいきます。後のほうでは、これに関して、「理性の力で調整するのではなく声の調子や、優しいまなざし、顔の表情、体を触ってくれるなど右脳の働きです。」「1日中携帯の画面を見ている現象は、感情表現力を弱めてしまう。」と唱えられていて、エビデンス不足をとがめる方も出そうですが、一般向けのお話のまとめとして読むところでしょうか。

ところで、私が気になったのは、戻りますが、冒頭のインタビュイー紹介です。「共著に『臨床心理学入門 —多様なアプローチを越境する』(有斐閣)。主な著書に『はじめて学ぶ臨床心理学の質的研究』(岩崎学術出版社)など多数。」とあるのですが、まず、共著が先に、「主な著書」が後にという順序に、ふしぎな印象をうけます。そして、その「主な著書」として、はじめて学ぶ臨床心理学の質的研究 方法とプロセス(岩崎学術出版社)を出して、「など多数」としているのも、あまり見かけない書き方です。「著書に~など多数」ではなく、「主な」著書ということですので、著書の中から主なものを選んでも、多数あるのだということなのでしょうか。ですが、共著が先に分けてありますので、この方の単著の本をさがすと、岩崎学術出版社のもののほかには、プロセス研究の方法(新曜社)と、心理療法・失敗例の臨床研究 その予防と治療関係の立て直し方(金剛出版)くらいしか、私には見つけることができませんでした。

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