生駒 忍

記事一覧

東京での「宇宙と芸術展」とうつろ舟の史料

きょう、マイナビニュースに、東京都・六本木にて、約150点ものアートや資料が集結する「宇宙と芸術展」という記事が出ました。

「東京都・六本木の森美術館では、NHKプロモーション、読売新聞社との共催で、古今東西ジャンルを超えた多様な出展物約150点を公開する「宇宙と芸術展」を開催する。」と書き出されます。私でしたら、「東京・六本木」と書きたいところですし、「古今東西ジャンルを超えた多様な出展物約150点を公開する」という、本展のコンセプトを示さない、具体性のない説明も気になります。「新たな宇宙観や人間観を提示することを試みる」ことは、ここでは書いてはいけなかったのでしょうか。宇宙ということばは、タイトルにあるので、説明には入れないようにしたと考えればよいでしょうか。

「隕石や化石をはじめ、ダ・ヴィンチ、ガリレオ・ガリレイ等の歴史的な天文学資料、曼荼羅や日本最古のSF小説ともいえる「竹取物語」、さらには現代アーティストによるインスタレーションや宇宙開発の最前線に至るまで、さまざまなジャンルの出展物約150点のが公開」とあります。たしかに、「古今東西ジャンルを超えた多様な出展物」ではあります。「宇宙開発」は、宇宙ということばを使わないように言いかえるのが、むずかしかったのかもしれません。「ダ・ヴィンチ、ガリレオ・ガリレイ」のならびは、人名の書き方が気になる人の反応がありそうです。

「主な出展物として、レオナルド・ダ・ヴィンチの天文学に関する手稿、ガリレオ・ガリレイ、 プトレマイオスの天文学古書、曼荼羅図(星曼荼羅、 両界曼荼羅、 十二天像等)、 竹取物語絵巻、天球図、天球儀、天体望遠鏡、暦等、ルネッサンスや江戸時代の貴重な天文学資料、流星刀、「うつろ舟の蛮女」に関する資料、荒俣 宏SF雑誌コレクション、ダーウィンの『種の起源』、コンスタンチン・ツィオルコフスキーの手稿(複製)、ガガーリン、テレシュコワの写真(複製)などが予定されている。」、美術館の企画には見えにくく、博物館のようです。こちらでは「レオナルド・ダ・ヴィンチ」で、「テレシュコワ」とは誰だと思った人もいると思いますが、本格的な表記なのだと思います。「「うつろ舟の蛮女」に関する資料」、甲賀流伴党宗家にある史料が来るのでしょうか。「ダーウィンの『種の起源』」、これは岩波文庫版ではなく、種の起源(上)(下)(C. ダーウィン著、光文社)の書き方です。

評判の演奏会のための照明と有村架純の怒り

きょう、どうしんウェブに、巨大油絵、LEDで演出 新冠・ディマシオ美術館、色彩40パターン幻想的にという記事が出ました。

「世界最大とされる油彩画(縦9メートル、横27メートル)」、北海道新聞もあくまで、「される」と書いて、距離をおいた評価としました。美術館側の主張は、「高さ(たて)9メートル、横幅27メートルに及ぶこの超大作は、ひとりの作家によってキャンバスに描かれた油絵としては世界最大と言われています。」と、自分が主張しているわけではなさそうな書き方で、Template:誰2を使いたい気持ちにもなります。Ma'an News Agencyに1年半前に出た記事、World's largest oil painting displayed in Bethlehemには、面積では明らかに、ディマシオを超える絵が紹介されました。それどころか、「The previous record was held by a Dutch artist for a 210-square-meter oil painting.」とまであり、そもそもディマシオ作品は、世界には相手にされていないようにも思えます。ちなみに、「ひとりの作家によって」という条件をはずせば、画題が興味を引かないこともあり、日本ではあまり知られていないようですが、Atlanta Cycloramaがあります。

「通常はこれまで通り、自然光での鑑賞だが、今月から開館日の午前11時に、絵に描かれた人物などを青や赤などさまざまな色の照明で照らす7分間のショーを行う。」とありますが、この美術館のブログにきょう出た記事、北海道新聞日高版に掲載されました!は、「ショーは午前1回午後2回の予定で、約7分程の演出になっております。」としています。すでに今月なのに、「行っている」ではないのは、今月はまだ、開館していないためでしょう。当初は週6日の開館だったようですが、いまは週2日です。

「同美術館では、巨大画の前で開くコンサートが評判を呼んでいる。今後は音楽や楽器の雰囲気に合わせた照明に工夫を凝らす。」そうです。このあたりは、ディマシオも納得しているのでしょうか。どんなコンサートで、どれほどの評判なのかはわかりませんが、「白や赤、青、黄色など約40パターンの色彩」で照らす、本来のあり方とは大きく異なる見せ方にされた上に、「音楽や楽器の雰囲気に合わせた照明」ということは、コンサートのほうが中心なのです。買った人の勝手だといえばそれまでかもしれませんが、コンサートの足し、だしに使われる位置にされては、内心は腹をたてているかもしれません。

それで思い出したのが、J-CASTにきょう出た記事、カンニング竹山のツイートが「捏造」され反原発に利用された まとめサイトに非難が殺到し竹山も「迷惑だ」と激怒です。Xenobladepというアカウントが、「竹山さんの11月30日付けツイートの写真や文章を使って、あたかも竹山さんがそう考えているかのように装い独自の主張をしてみせた」事件を取りあげました。よりによって、復興に理解のある芸人に反対の主張をのせるという手口に、とても残念なものを感じます。また、よりによって、激怒する芸で名を売った人を「激怒」させるという組みあわせです。一般に、怒りの感情は、かくしたりごまかしたりして、表に見せないのがマナーですし、表で見られるお仕事をする人なら、なおさらです。そういえば、週刊アスキー 5月13日・20日号(KADOKAWA)で、有村架純は、自分のドラマ出演時について、「なんか、ずっと怒ってて(笑)。」「結構、怒ってましたね(笑)。」としていました。

かやぶき美術館が来年3月で廃止されます

きょう、新潟日報モアに、かやぶき美術館廃止へ、上越市 13年度限り、老朽化と利用者減少という記事が出ました。すでに休館中のかやぶき美術館が、廃止の方向となったことを報じています。

市議会に、廃止のための条例案が提出されていて、否決の可能性はほぼないと思います。記事には「6日までに」とありますが、提出は議案第214号として、4日付となっています。

「12年度は203人」という入館者数は、開館日の少なさ、開館時間の短さを考えても、公営美術館としてはこれより下が思いつきません。同じくきょうの新潟日報モアの記事、漫画・アニメ施設、来場者数伸び悩む 新潟市がことし開設に、「新潟市マンガの家の来場者は、11月末時点で約3万4千人で、厳しい状況が続いている。」とあるのが、まったく問題に見えないほどです。ですので、廃止は当然で、むしろ遅かったとさえ思ってしまいます。それでも、「ここ数年、年間100万円以上の支出超過」ですんでいたのが救いでしょうか。ですが、以前にやきもの検定の不適切出題の記事で触れたように、「以上」というのは上がどこまでも入りますので、わからないところがあります。

「松苗一正さんの絵画191点、江添治人さんの民家模型36点を所蔵」とありますが、これはあくまで所蔵数ですので、のべ400平米程度に全部が展示されていたわけではありません。では、実際の展示数はというと、はっきりはわかりません。新潟県公式観光情報サイトのかやぶき美術館のページは、ほぼ1年前に更新ということですが、「両氏の作品を約100点ほど展示」とあります。Komachi Webという地域情報サイトのかやぶき美術館のページには、「かやぶき民家をモチーフにした約80点ほどの絵画、模型を展示。」とあり、自然王国ほその村の周辺観光情報のページでは、「画家「松苗一正」による絵画約80点創作作家「江添治人」による立体(かやぶき民家)約20点」が「常設展示」となっています。所有者の上越市はどう書いているのかと思い、探してみると、上越観光ネット 観光施設のご案内に以前はあったかやぶき美術館が、「※随時情報更新中」とあるように、すでにはずされています。リンク先は無事に残っていて、こちらなのですが、展示作品数も含めて、県公式観光情報サイトのページと似ているのに、示してあるURLは同名の、ほかの自治体の「かやぶき美術館」のサイトのものになっています。

その美山かやぶき美術館・郷土資料館のほうは、かやぶきの建物ですが、こちらはそうではないわかりにくさがあります。展示物をかやぶきを表現したもので固めたのであって、建物は記事の写真でわかるように、かやの一本も使われていないようです。まるでめがねをかけたレーシック医のようですが、これは「1883(明治16)年に建てられた旧東頸城郡役所を改築」して美術館にしたためです。美術館化の経緯を知らないのですが、歴史的建造物を活用しようというところに、地元出身者の作品を入れよう、そしてテーマをそろえたらかやぶきになったという組みあわせ方だったのでしょうか。心理学では、解決指向アプローチや危機介入など、手がとどく資源を見つけてつなぐ発想もとりますが、限界もあります。マイナビニュースにきょう出た記事、大金を投じて作りたいものを作る - 日本のロボット研究者がはまる罠には、「ちなみに比留川研究部門長によれば、効果が不明な点については、現状、自身も含めたロボットの研究者が、大金を投じて作りたいものをまず作って、それから「これ、どこかに使えませんか?」とやっていることが多いことも問題だ自嘲気味に話す。」とあります。街おこしに関しても、商店街再生の罠 売りたいモノから、顧客がしたいコトへ(久繁哲之介著、筑摩書房)には、たとえ客観データにもとづいていたとしてさえも、街にある資源を見つけて活用したつもりが税金のむだになってしまった事例が、いくつも挙げられています。

おぶせミュージアムの開館年のぶれ

長野県の北のほうに、小布施町という自治体があります。ここは、おぶせミュージアム・中島千波館という美術館を持っています。私はまだ、行ったことがありません。

この美術館ができたのは、いつでしょうか。小布施町の公式サイトで確認すると、「平成4年(1992年)10月22日に開館しました。」と書いてあります。公式サイトですし、日付まではっきりと示していますので、これが正しいはずと思われます。ただし、調べてみると、そうでない年を挙げているものも見つかります。長電をはさんで反対側ですが、同じ町内にある文屋というところが出した、ベーシックノート志賀高原を見ると、1991年に開館したことになっています。地元愛に満ちた厚い本なのですが、その175ページの左下に、とても小さな字で出ています。

そういえばと、日本薬学会の創立年についてのお話を、ふと思い出しました。学会誌『ファルマシア』の昨年12月号、1178ページのコラムです。美術館は、学会のような目に見えるかたちを持たないものではありませんので、あのようなことは起こりそうにないのですが、だからこそ、もしそうだったら興味深いと思ったりもします。

ページ移動

  • 前のページ
  • 次のページ