きょう、J-CASTに、「ストーリーが予め出来ている」取材にどう対応するか 大手新聞の事例からという記事が出ました。
「メディアが取材前から色メガネで取材対象をとらえる。あるいは、ストーリーが予め出来上がっていて、そこにはめ込むので事実が伝わらない。」ことの、実例と対策とを取りあげています。キダ・タローの佐村河内批判の記事で取りあげた、「芸人の弟子」「足に障害」「日本一周」の美談のように、そもそも事実でないことが伝えられることさえあります。吉田清治「強制連行」証言問題もそうでしょう。あるいは、中田英寿の「君が代」発言も、後に中田英寿 鼓動(小松成美著、幻冬舎)で明かされたように、「記者との雑談のようなやりとりの中で」の「心にある真意とは別な言葉」を、「記事には書かないでください」とくぎを刺したにもかかわらず、インタビューでの回答のように書かれたものでした。中田は記事にされたのを読んで、「朝日新聞の記者が、「君が代」や日本人観について、何らかの物議を醸し出すために」行ったと思ったそうで、地獄ランキングの記事でも触れた表現があることはともかくとしても、気づいたときにはもう、取りかえしがつかなくなっていたのでした。
ここで主な話題にされた記事も、朝日新聞のものです。一応、直接には名前を出さないようにしてはありますが、連載タイトル名で、明かしているようなものです。「このタイトルだけを見ても、筆者は偏向の印象を受ける。」と書きたかったために、ここはかくせなかったのでしょうか。そのうち、問題視した「民間企業トップのインタビューが掲載」されたのは、反響編 お泊まりデイ「もうけ優先」「欠かせぬ救世主」です。私は、「措置控え」の説明についても、これが「措置」の定義と思われては困りますし、養護老人ホームなら全額を市町村が持ち、利用者負担は発生しないように誤解しそうな書き方なのも、不適切だと思います。「横浜市の女性(46)」の反論を取材して、公平性をうかがわせながらも、「お泊まりデイ事業所の8割はきちんと世話をしているとみる。」と、根拠不明の数字が登場して、2割も悪いところがありそうに見えるのも、気になりました。この人を探しだして確認することができないように、意図的に匿名にしたのではないとは思いますが、きちんとした世話をしている事業所は何割でしょうか、と質問して、8割と返ってきたのではなさそうな気もします。
「インターネット上に情報が散乱している現在、新聞は情緒的に流されるのではなく、物事の裏に潜む真実と、どうしたら良くなるかの処方箋を取材によって明らかにしてほしい。」、これは正論でしょう。ですが、いつの時代の意味かはともかくとしても、「確信犯」として、仮説にそったストーリー、読者の期待にそう読みやすいストーリーで、「物事の裏に潜む真実」を伝えているのだという見方もできるでしょう。働かないアリに意義がある(長谷川英祐著、メディアファクトリー)の終章にあるような、科学者、研究者の考え方とは、根本が別なのだからと、割りきったほうがよいのかもしれません。
もちろん、新聞を含め、マスメディアが科学の知見に関心をもち、取りあげていることは知っていますし、ありがたいことです。ですが、ストーリー優先は、あちらの文化として、さけきれないもののようです。きのう書いた記事で取りあげたもので、動画中では言っていないことが、かっこ書きで発言したかのように書かれたものも、そこに関連するように思います。また、NHK NEWSWEBにきょう出た記事、子どもの味覚に“異変”が、その詳報のようなかたちで出ましたが、最後に登場する「どう育てる子どもの味覚」には、「どうしたら良くなるかの処方箋」のつもりなのだとは思いますが、困惑しました。臨川小学校での実践の写真に、いわゆる味覚地図が登場しているのです。それぞれの閾値が舌の場所にかかわらず均一であるわけではありませんが、このような味覚地図説は、本質的には否定されています。画面には「味覚育てる」とあるのに、むしろ疑似科学を育ててしまうようで、とても残念です。