生駒 忍

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断酒のメリットと高い保育費で得られる満足感

きょう、Menjoy!に、プチ依存症から脱却!恋も仕事も上手くいく「断酒のススメ」3つという記事が出ました。

「仕事のストレスはお酒を飲んで発散!」と書き出され、「仕事終わりの一杯が待ち遠しくなる気持ち」、「それはある意味“プチ・アルコール依存症”だとも言えます」とします。重い病気で、境目のむずかしいものをもとに、軽い位置に軽い命名をおくことは、議論がわかれるところでしょう。今日も飲み続けた私 プチ・アルコール依存症からの生還(衿野未矢著、講談社)の対象とも、また異なります。

その上で、「今回は「ちょっと断酒してみようかな」と思えるような、禁酒によってもたらされる様々なメリット」を論じます。断酒と禁酒とが混同されているようですが、「断」つことと、「禁」じることとで、主語をそれぞれ考えると、語感のちがいがわかりやすいと思います。依存症からの脱出(直江文子著、北辰堂出版)には、「家族や他人に禁止され「受動的に酒をやめる禁酒」や、「飲酒量を調整しながら飲む節酒」とは違い、「断酒」なのです。」という表現があります。

「科学雑誌『NewScientist』のジャーナリストであるアンディ・コフラン氏が行った実験によると」という紹介があり、ジャーナリスト自身が実証研究とは、めずらしいと思った人もいるかもしれません。おそらくは、New Scientistのウェブサイトに出た記事、Our liver vacation: Is a dry January really worth it?のことですので、一事例実験というほどの冷たさも、自分の体で実験したい 命がけの科学者列伝(L. デンディ・M. ボーリング著、紀伊國屋書店)ほどの熱さもありませんが、よい転帰で、よい呼びかけになるのは、よいことです。

「お酒をやめることによって、今まで飲みに使っていたお金がまるごと浮くわけですから、それを貯金に回すことができるようになります。」、まったくそのとおりですが、なかなかそのとおりにはならないでしょう。「そのお金を別のことに使ってもいい」、こちらになりそうですので、「お酒でストレスを発散するよりも健康的」なものと入れかえたいものです。ふと、知らなきゃよかった…偉人の秘密(ダイアプレス)が、フロイトについて、「モルヒネ中毒患者をコカイン中毒にした。」と大書したのを思い出しました。

その点で、少し不安なのは、「断酒をすればそのぶんカロリーが浮くわけですから、今まで我慢していた“甘いものを食べても平気”ということに」という考えです。交通事故はなぜなくならないか(G.J.S. ワイルド著、新曜社)の、リスク・ホメオスタシス理論を思わせます。Chikirinの日記の記事、保育所が永久に足りないであろう理由からそろそろ7年となりますが、あの「永久に足りない市場」説も、減らせばそれだけ流れこんでくるという、似たパターンです。この問題では、はてな匿名ダイアリーが国会にデビューし、週刊誌が書いたことで国会質問なんてといわれたころからは、隔世の感があります。それでも、Togetterにきょう出た記事、「保育園落ちた人」のツイートをめぐってのコメント欄などは、冷静な反応にとどまり、あそこですと「こんな目にあいました」案件にきたえられている人が多いという特殊事情はありますが、日本も捨てたものではないと思えます。

それで思い出したのが、Suzieにきょう出た記事、保育所が住宅ローンより高い!イギリスのびっくり「保育費」事情です。子どもはイギリスで育てたい! 7つの理由(浅見実花著、祥伝社)からの紹介のようですが、「保育所にかかる費用がとんでもなく高額」、「ロンドンで3歳未満の子どもを週5日のフルタイムで保育所に預けた場合、毎月800~1,300ポンド(約15万~24万円)もかかる」、これを「日本死ね」に乗った人は、どうとらえるでしょうか。「母親が朝から夕方まで毎日必死で働いたとしても、手取りがほぼ保育費に消えてしまう家庭は決して少なくない」、これでは「好きなこと」で食べる方法の記事の最後に触れた寓話を思わせますが、はたらく理由が、お金以外にもたくさんあるとします。その筆頭が、「家庭に入るより働くほうが、充実感や満足感を得られるから。」、これは、安定志向にあうはたらき方の記事で触れた拡張仮説からも興味深いですし、「家庭に入るより」と考える人が、子どもももっていることには、女性の社会進出、長くはたらける職場環境の変化が少子化につながったとされやすいわが国、ないしは日本社会が、変わるヒントがありそうです。少なくとも、イギリス人が知っている心を豊かにするたった一つの方法(井形慶子著、KADOKAWA)によれば、ママ友と優雅にランチなどという、ある層が夢みてやまない専業主婦は、「イギリス的価値観から見ればアンフェア(不公平)で、とてもリスキー」なのです。