生駒 忍

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金品目的の悪質クレーマーとガラパゴス政党

きょう、新刊JPに、「ネットに書くぞ!」と恫喝 悪質クレーマーへの対処は?という記事が出ました。理不尽な要求を黙らせる 最強のクレーム対処術(紀藤正樹監修、神宮館)から、3パターンの傾向と対策を紹介するものです。

まずは、「「社長を出せ!」と言われたら……」です。「クレーマーは必ずしも本当に社長や上司を出してほしいとは思っていない」「相手に圧力をかけるための方便として「社長を出せ」と言うケースが多い」として、「「この件の担当者は自分であり、自分が対応する以外の選択肢はない」ことを冷静にクレーマーに伝える」「これを伝えるだけで、悪質クレーマーへのけん制になる。」そうです。ここで、Yahoo!ニュースにおととい出た記事、取材に対してウソをつく組織「Yahoo! JAPAN」が信頼と品質など担保できるわけがないを連想して、また笑ってしまいました。怒りを刺激したと思われる、朝日新聞DIGITALにおととい出た記事、新しい書き手を発掘していきたい ヤフー宮坂社長に聞くにある、「これはちゃんと記事に書いておいてほしいんですが(笑)、朝日新聞を受けて面接で落とされたんですよ。築地まで行ったのに(笑)。」とのコントラストも絶妙な騒動で、「悪質なクレーマー相手には「拒否」の姿勢で臨むのが鉄則だ。」の逆の順序だと思った人もいるでしょう。藤代は、「取材に対してウソをつくトップがいるような組織に、信頼と品質など担保できるわけがありません。」と締めましたが、取材できた大鹿靖明にうそをついているのではなく、取材できていない自分のことなのでしたら、そもそも「取材に対してウソをつく」ことにはあたりません。取材の申しこみを蹴られたのに、そういう本人の意向が聞けたことを「取材」だと考えるのでしたら、若山照彦だろうと取材拒否の激うまラーメン店(はんつ遠藤著、廣済堂出版)の店だろうと、誰もがかんたんに、しかも「単独取材」ができそうです。

さて、次は「「ネットに書き込むぞ!いいのか!?」への切り返し方は?」です。「こうした脅し文句には毅然とした態度で臨むと同時に、開き直って受け流す」のがよいようです。実際には、ネットで店への非難に熱くなる人は、「ホットペッパーを見た」はともかくとしても、むしろその場では強く出ずに、帰りついてから、子どもの深夜外出の記事で取りあげた、パオロ・マッツァリーノの指摘のようになるような気もします。また、「これは「訴えてやる!」「消費者相談センターに持ち込むからな!」という脅し文句に対しても同様だ。」そうです。佐村河内守の提訴準備の記事で取りあげたうごきは、やはり「圧力をかける」以上のものではなかったのか、うったえないまま表に出なくなりました。もしかすると、裁判はさけて世間にうったえようと、絶歌(元少年A著、太田出版)に似たシンプルな表紙で、たとえば「あのHIROSHIMA」とでも題した本を準備しているのかもしれません。

さて、最後は「「土下座しろ!」には絶対に屈しない」です。「クレーマーとしては店員を脅して金品を取れればしめたもの。警察沙汰や裁判沙汰など望んでいない。」、これはお店に対して、「何らかの金品を得ることが目的の悪質なクレーマー」という前提だからでしょう。内心では客観的に損得を分析している相手でしたら、この考え方はあてはまります。ところが、よく言えば自分の気持ちに正直で、主観を主観だととらえずに押しまくるクレーマーは、こうはいきません。モンスターマザー 世界は「わたし」でまわっている(石川結貴著、光文社)にも、土下座させて得意げな夫婦が登場しますし、モンスターマザー 長野・丸子実業「いじめ自殺事件」教師たちの闘い(福田ますみ著、新潮社)まで来ると、客観性をもつべき人までも主観のほら話を信じ、乗っていき、まるでホラーです。

結論は、「ビジネスに携わる者はクレーマーへの正しい対処術を学び、現場に即した臨機応変な対応を身につけておくべき」、正論です。それでも、「正しい対処術」として、この本の45パターンを頭に入れて使うのでは、むしろマニュアル的で、「現場に即した臨機応変な対応」というイメージとは異なるかもしれませんが、それでも有効でしょう。弁護士ドットコムの記事、「契約書にサインするまで帰さない」と監禁されることも――AV出演強要の実態(上)にある「めちゃくちゃな論理ですが、断る理由が一つひとつ、はがされていきます。」という展開なども、おそらくはマニュアルであっても、「臨機応変」な説得に見えそうです。そういえば、昭和40年男 2015年8月号(クレタパブリッシング)で沼田通嗣は、「男女7人夏物語」について、「一見アドリブのように見えますが、実はほとんどが台本どおり。」と明かしています。

台本で思い出したのが、Business Journalにきょう出た記事、テレビ業界の知られざるNG事項! その最大にして意外なタブーとは?です。もったいぶったタイトルから見当がつくように、紹介される3種はいずれも、芸能人はなぜ干されるのか?(星野陽平著、鹿砦社)で重大なタブーに触れた筆者が、「芸能プロダクションのタブーっていうのは、ヤクザと同和と在日と脱税なんだ。」とさえぎられるレベルにははるかにおよびませんので、安心してください。その2番目が「アイドルの恋愛話」で、「台本にも、恋愛を想像させるような文句は、載せておかないに限る。」「フレーズを台本に載せても、マネージャーからの厳しいチェックがある」そうです。Narinari.comにきょう出た記事、アイドル時代の時東ぁみに彼氏、デビュー前から20歳過ぎまで交際と告白。によれば、「「『彼氏がいます』という話をしないと事務所も守れないので言って下さい」と言われ、時東はきちんと申告していた」と、内情まで明かされましたが、ベッキーのいるサンミュージックの「マネージャーからの厳しいチェック」は通った台本でしょうし、しかも「アイドル時代の」とあるように、もうアイドルではないので、よいのでしょう。なお、もっとも分量が多い話題は、3番目の「カツラ」です。「歌も歌えば、芝居もするしバラエティもこなすマルチな」Nさんのエピソードと、「カツラを途中で変えたら、余計怪しまれる」「だから、“ズレ”てはいたけど、“ブレ”ていないんだよ」というジョークを書きたくて書かれた記事なのでしょうか。

それで思い出したのが、公明党のウェブサイトにきょう出た記事、消費税めぐりブレる共産党です。週刊朝日 2月19日号(朝日新聞出版)で、ずれたガラパゴス政党としてくくられた両党の不仲は、ずっとぶれません。表の「主張」は、常に与党の主張に反対するとみれば、ぶれない野党なのですが、「財源の中身はほぼ同じ」なのに「代替財源額」がまちまちなのは、「荒唐無稽な“数字遊び”をやめるべきです。」と注意したくもなるでしょう。

それで思い出したのが、ねとらぼにきょう出た記事、「艦これ」×すき家がコラボ オリジナル丼やポスターをプレゼントです。「税込490円以上を購入したレシートの情報を応募用ページに入力すると、抽選で1000人にオリジナル丼、30人にオリジナルポスター」と、「対象110店舗で税込500円購入ごとに、オリジナル3Dカードが1枚」とで、金額のラインがわずかにずらしてありますが、どんな意図でのことでしょうか。旨ポークカレーのミニにたまごセットのような、ずれのすき間に入る注文も可能ですので、誤解した人とのトラブルがあるかもしれません。すき家のウェブサイトで、艦隊これくしょん -艦これ- タイアップキャンペーンを確認すると、金額に色をつけて強調してはあります。また、3Dカードのほうには、「混雑時にはお一人様のご注文数を制限させていただく場合がございます。」とあり、何の「ご注文数」なのかが気になります。極端ですが、たとえば先ほどの、旨ポークカレーのミニにたまごセットのままでは1枚ももらえませんので、マヨネーズを17個つけて、2枚にしたつもりが、そのときに混んでしまったら、1枚だけで終わる可能性もあるのでしょうか。それとも、マヨネーズの個数が、途中までで止められるのでしょうか。かえってトラブルになって、むちゃな注文をつけられるかもしれませんが、そんなときにこそ、理不尽な要求を黙らせる 最強のクレーム対処術の出番かもしれません。