生駒 忍

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仕事の生産性を上げる音楽と謙虚な宮田聡子

きょう、日刊SPA!に、40代で下流老人としての未来が確定しつつある人たちという記事が出ました。Wedge 2016年2月号の特集などどこ吹く風で、食傷ぎみのテーマを、SPA!風に調理したものです。

「人生のボタンを掛け違え、早くも下流老人としての未来がほぼ確定しつつある40~50代の人たち」として、田山健二、三田恵理子、千石アキラの3名を紹介します。いずれも仮名だそうですが、入っている漢数字を足しあわせると1005、これから経済的に落ちていく人々に対して、戦後を対比させるという皮肉でしょうか。

「ドラマーを目指し上京」、いまは「生活保護受給者の道」の1例目は、「とにかく、音楽を諦めきれなかったので、今の生活はすごくラク。」とします。音楽の道は続けて、ですが仕事としてなり立たせる必要がなく、くらしは公金でまかなえるのでしたら、たしかに楽かもしれません。NHK短歌 2016年3月号(NHK出版)にある上野克巳という人の句からもうかがえるように、音楽はいにしえから人類をとりこにしてきたのに、音楽を仕事にとなると、とても相性が悪いのです。一方で、仕事に音楽を、でしたら意外に役に立ちます。音楽心理学入門(星野悦子編、誠信書房)の13章でも紹介しましたし、SankeiBizにきょう出た記事、音楽に仕事の生産性を上げる効果も、そのような話題です。これはBloombergBusinessに4か月前に出た記事、The Science of Picking the Right Music at Workから、一部を省略した内容で、エクササイズ向けの科学的選曲の記事で取りあげた研究者も、より適切な表現で登場します。最後にある「ラビ・メータ助教の研究」は、音楽ではなく雑音の効果で、なぜここにと思った人も多いと思いますが、いわゆる赤本である大学入試シリーズ 武蔵大学 2016(教学社)にも、「音楽が与える影響」というタイトルを与えられているのに、この研究と思われるものが中ほどに登場する英文が登場しています。

さて、2例目は、「15年以上勤めていた外資系の会社から突然リストラされ、失業保険と貯金で生活」、にもかかわらず「高額だった給料をブランド品や外食などで派手に散財していた頃の金銭感覚が抜け切れていない」そうです。桜の園(A. チェーホフ作、岩波書店)を連想しますが、「私はお金に困ったことが一度もないしすごく運のよい人生を送ってきているから今回も大丈夫。」、これこそ喜劇かもしれません。この世には、死んだことが一度もない人しかいないのに、その誰もが死ぬのです。「すごく運のよい人生」との自覚は、若者の不運の記事で触れたように、成功者によくみられるものではありますが、「まさか50歳でリストラされるなんて思わなかったから」という現実は、謙虚に受けとめたほうがよいようにも思います。

謙虚で思い出したのが、さとことにきょう出た記事、2016/02/23です。タイトルをつけないのはいつものこととなりましたが、しばらく更新されないままとなっていたところに、ひさびさに来たのは、GINGER 2016年4月号(幻冬舎)の表紙への初登場なのです。「ポージングも下手で、顔は可愛い方でもないし、モデルに向かない性格。」と謙遜しつつもこの大役、そしてまわりへの感謝あふれる文面、あまりの低姿勢に、こちらのほうが頭が下がりそうです。smart 2016年3月号(宝島社)で美輪明宏は、「美しい」ということばが使われにくくなったいまの社会を批判しましたが、こういったところに、きちんと出番がありました。