生駒 忍

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上の世代が幸運だったことが若者の不運です

きょう、JBExpressに、若者の苦悩の原因は政策ではなく運の悪さだという記事が出ました。フィナンシャル・タイムズに出た、Bad luck, not policy, is the scourge of the youngを和訳したものです。

すでにあちこちで反響がありますので、ここでは運に関して少しだけ、触れておきたいと思います。タイトルからは、若者に運がなかったということになるのですが、内容を見ると、直接にはベビーブーマーにもう二度とないほどの運があったことが書かれています。そして、運のあった多数のベビーブーマーとの対比が際だってしまうところに、今日の若者に特有の運のなさがあるということになります。

もちろん、世代にかかわらず、運だと思われるものの力に誰もが気づかないわけではなく、自覚のある人も多くいます。出光佐三の日本人にかえれ(北尾吉孝著、あさ出版)には、「私の履歴書」に登場した蒼々たる顔ぶれに、運がよかったと書いている人が多いという指摘があります。もっと若い世代ではたとえば、井口資仁がブレないメンタルをつくる心の軸(ベースボールマガジン社)で、自分は幸運だったと明言しています。また、ぼくだったら、そこは、うなずかない。(石原明著、プレジデント社)には、「アメリカの学者も言っていますが、成功者のキャリアは偶発的に形成されたものがほとんど。」とあります。おそらく、近年の産業組織心理学で「計画された偶然性理論」として知られる考え方を指しているのでしょう。スタンフォード大学のクランボルツが提唱しました。面白いほどよくわかる! 職場の心理学(齊藤勇監修、西東社)では、1回だけ「クロンボルツ」とも書かれています。