生駒 忍

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おいしい日本のイギリス料理とメリーの手口

きょう、マイナビニュースに、「イギリス=メシマズ」は古い! 進化した"モダンブリティッシュ"料理を実食という記事が出ました。「機種変婚」の記事の最後に触れたマイナビニュースですので、「ステマ記事」ではないはずです。

「イギリス料理はおいしくない……と思っている人は多いのではないか。」と書き出されます。「しかし、そんなイメージはもう古いことが今回の取材でわかった筆者。」が「うかがったのは「ストリングスホテル東京インターコンチネンタル」」、もう名前だけで、少なくとも私がふだん食べているようなものにくらべれば、明らかにおいしいものが出てくるとわかります。こうなると、週刊文春 5月7日・14日号(新潮社)で山本一力が、「美味しいというのは、支払う値段と味の相対関係で決まります。」としたような意味での評価が問われることになるでしょう。

紹介されるのは、本場ではない日本のお店の、「Taste of Modern British(テイスト オブ モダンブリティッシュ)」、「現代版に仕上げたイギリス料理」です。「ヨーロッパやアジアの料理手法、ハーブやスパイス、フルーツなどを取り入れ」と、イギリスがヨーロッパではないような書き方は気になりますが、こうなればもう、「イギリス=メシマズなんていうイメージ」のイギリス料理そのものとは異なる新しいものですので、そういったイメージは古いという強い証拠を出せるとも、別のものでは反論にならないともいえそうです。

「ローストビーフがぎっしり挟まった「ローストビーフサンドウィッチ」(2,800円)」の、「ひと口では収まらないボリューム」というキャプションのついた写真は、こういう飲食店の紹介ではまれな構図です。親子でがっちょり おかん飯(西原理恵子・枝元なほみ著、毎日新聞出版)の55ページ、あの作者にはいつものことですが、ものすごい顔色の絵を思い出してしまいました。

「「天草ポークベリーのロースト アップルソース」(3,000円)」は、「アップルソースには、少し酸味のある紅玉を使っているので、後味はさっぱり。」とされます。「脂の甘味を十分に堪能できる」肉の写真は、Amazon.co.jpでとても評価の高い大人の肉ドリル(松浦達也著、マガジンハウス)が、「どんなコミュニティでも「うまそうな肉」は最強なのだ。」としたことを思わせますが、りんごのヘルシーなイメージ、さっぱり感を組みあわせます。ふと、またあのまんが家ですが、こちらもAmazon.co.jpでとても評価の高い、毎日かあさん 12(西原理恵子作、毎日新聞出版)の34ページ、さっぱり言うことを聞かない娘に、りんごやアボカドをすすめる場面を思い出しました。

「「Afternoon Tea of Modern British アフタヌーンティー オブ モダンブリティッシュ」(4,000円)」の中には、「グリヨットチェリーの一口カップチョコレート」もあるそうです。一般には「グリオット」と書くことの多い単語を、より原語の発音に近いカタカナにしたところは、こだわりがあるのでしょうか。どちらにしても、「サルサソース」のようなおかしなことばに見えると、いやがる人もいるかもしれません。

「スコーンは「アールグレイ」「チアシード」「トリュフ」の3種類」が紹介されます。単にチアシードとだけあると、今さらと笑いたくもなりますが、イギリス料理として考えれば、とても新しく見えます。

紅茶を味わった後、「イギリス料理になじみがない人こそ味わってほしいモダンブリティッシュメニュー。」として締めます。登場したものは計14900円、さらに「※価格はすべて税・サービス料12%別」ですので、イギリスにかぎらず、ヨーロッパの大国の名前がついた料理に「なじみがない人こそ」、手を出しにくそうです。それでも、若年ホリエモン支持者批判の記事で取りあげた井ノ原快彦の指摘ではありませんが、実体験なしに、イメージや想像だけではよくないことは、言うまでもありません。

それで思い出したのが、リテラにきょう出た記事、メリー喜多川氏の恫喝は想像以上の恐怖だった! 文春の元記者が「メリーさんに『殴るぞ!』と脅された」と証言です。「芸能界の中で、暴力団との関係がもっともな希薄なプロダクションといわれている」はずが、「乃木坂の事務所に召喚」「とにかく頭から罵倒」「5時間も6時間も」「ほとんど軟禁状態で、帰りたくても帰らせてくれない。」だけでなく、「さらに恐ろしいことに、メリー氏は、会話の中で暴力団や同和団体のことをちらつかせた。」そうで、イメージをくつがえす告発です。相手がこわがるようなバックの名前を出すのは、むしろ王道のおどし方です。産経ニュースにきょう出た記事、「殺すぞ。地獄見せたる」 脅した中核派活動家2人を逮捕 団交席上で役員に 大阪府警にある、「そんな考えだったら社長を殺すぞ。」「われわれをどんな労働組合か分かっているのか。」も、いまの若い人はあの団体の残虐性を知らないかもしれませんが、そのタイプです。一方で、同じく産経ニュースにきょう出た記事、週刊文春が「酒鬼薔薇聖斗こと元少年A」を直撃取材 写真も掲載 神戸連続児童殺傷事件でにある、「記者が「命がけで来てんだろ」などと脅され」などというものは、何のバックもない、その程度のことです。酒鬼薔薇と早大コピペ文化の記事で論じたような「透明な存在」でいられなくなった結果が、子どもを守る特別な法律に守られた自分が、子どもでもできるおどしで身を守ろうとする姿だとは、皮肉なものです。