生駒 忍

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偶然に生じた有意差の悪用とロングスリーパー

きょう、日経ビジネスONLINEに、【睡眠論争に決着?】 「ロングスリーパー=駄目人間」ではない!という記事が出ました。

日経ビジネス副編集長が、「本当にロングスリーパーは駄目人間で、長生きすることは出来ないのか、睡眠研究の第一人者に話を聞いてきた。」企画です。LAMSと「増田」の記事でも、このようなことをたずねましたが、「睡眠研究の第一人者」と言われて、皆さんがイメージするのは誰でしょうか。

「あるテレビ局」のお話に、「私は「そんなことをしても企画は成功しませんよ」って」、それでも「テレビ局のスタッフは「ならば、採点項目を寝心地とか寝つきの良さとか100項目ぐらい作ればどうか」と提案」、ねばられたようです。「ボランティアを集め、数十人ずつ2つのチームに分け、それぞれA社とB社の自信作の枕を使って数週間寝てもらう。」というほどの予算がついて、引きにくかったのかもしれません。

それでも、「大量に項目を作れば、何個かは偶然でも「統計的に有意」と言える差が出る項目が出るかもしれない。」、ここを使うのはもちろん、不適切です。何とか差を出さないとというプレッシャーが、あるある大辞典Ⅱに不正を生み、番組は死んだのですが、「偶然でも「統計的に有意」と言える差」の悪用は、あれとは異なる、なぜならでっち上げではなく事実だから、と思っていそうです。あるいは、笑われてもたたかれても、いつか出るはずという信念をあきらめず、ありとあらゆる試行錯誤を積む中から大発見に出会うような、偉人伝的なかたよった科学観とも関連しているようにも思います。そういえば、FRIDAY 6月12日号(講談社)には、ドローン少年について、「女子をいきなり大きな定規で叩いたりするので、とにかく嫌われていました。それなのに、私が知っている限りでも、小学校時代で60人くらいの女子に告白していました。」という、同級生の証言がありました。

そして、スポンサーのからみなどの話題もからませつつ、長く引っぱった後に、ようやく本題が登場します。ロングスリーパー・ショートスリーパーは、よくも悪くも個性なのだからというくらいの結論で、たとえば内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力(S. ケイン著、講談社)のように、ロングスリーパーには実はこんなすばらしい面が、といったタイプの、不利だとされてきた人が元気づけられる主張ではなかったことに、がっかりした人もいるかもしれません。それでも、本題が題どおりにありますので、「バイスティック」の7原則の応用の記事で触れた一部バラエティ番組のやり方よりは、ずっとましでしょう。