生駒 忍

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扶助費は政令指定都市の歳出の23.3%です

シリーズ第8弾です。

ワークブック239ページに、「2010(平成22)年度の団体規模別歳出決算において、歳出全体に占める扶助費の割合は、市町村合計では19.3%であるが、政令指定都市では23.1%、人口1万人以上の町村で11.1%、人口1万人未満の町村で5.6%であり、市と比較すると町村のほうが低い割合となっている(「地方財政白書」(平成24年版))。」とあります。扶助費を、生活保護に関する費用とイコールだと誤解してはいけないのはもちろんですが、示された割合のうち、政令指定都市の数値は、まちがっていますので、これを覚えてはいけません。

平成24年版地方財政白書を見てみましょう。この話題は、第1部、131ページの下のほうの図、第114図に対応します。政令指定都市は、23.3%となっています。なお、先日公表された平成25年版では、149ページの第113図にあって、指定都市は24.2%です。

ワークブックがしている、町村は人口規模で分けた数値を、市については政令指定都市のものだけを出して、そこから市と町村との一般的な大小関係をみちびくという不自然な書き方について、この図のつくりを見て、事情がわかったという方もいるでしょう。ですが、それを越えるのは、たやすいことです。この白書の後ろのほう、資料編のページ番号が「資73」となっているページに、第74表があります。これがあれば、人口で分けない町村全体での割合も、市全体での割合も、すぐ計算できます。すると、市は20.7%、町村は9.3%とわかります。これを出したほうが、読者には読みやすく親切かもしれません。そうはいっても、おそらく著者の意図は、地方財政白書のデータに基づく割合を示すことではなく、地方財政白書に載っている割合を示すことのほうにあって、そのためにこのような書き方をとったのだと思います。町村のほうが低いというのも、132ページには、理由つきで載っていることです。

ちなみに、この白書の名前には、ややややこしいところがあります。ワークブックでは、本文と図とで、呼び方を変えています。本文では常に、冒頭に示したものと同じです。5回登場するうち、最初は「地方財政白書」のかぎかっこを含めて重要用語として色文字にして、途中では何もせず、最後はかぎかっこを除く6文字が色文字になるという変化があるだけです。ですが、図では異なります。239ページの図2の一番下を見てください。とても小さな字で、「資料:総務省ホームページ「平成24年度版地方財政白書」を一部改変」とあります。本文とは異なり、版の表示を前に回して、名称の中に加えています。では、正式な呼び方はどちらでしょうか。この白書は、地方財政法30条の2に基づく法定白書ですが、これまでのところ、正式名称を定めた規定はありません。平成24年度版で見ていくと、市販のものは、表紙に平成24年度版(平成22年度決算)地方財政白書とあり、総務省による編集となっています。一方、総務省ウェブサイトの白書のページには、「平成24年版地方財政白書」とあります。ワークブックの図と同じです。そして、このページからはHTML版とPDF版との両方を見ることができますが、HTML版のほうに行くと、市販のものの表紙と同じ画像がむかえてくれます。ですが、PDF版のほうでは、表紙に「地方財政の状況 平成24年3月 総務省」とあって、その次のページでの書き方から、「地方財政の状況」と呼ぶべきものであると理解できます。CiNii Booksで地方財政白書を検索すると、大学図書館等での登録の混乱ぶりをうかがい知ることができます。