生駒 忍

記事一覧

女性の結婚と学歴との関係と「毒親」のゲーム

きょう、産経ニュースに、“毒母”とのバトル「命がけで自分の理想像、押し付けられ」…女たちの苦闘という記事が出ました。

「母と娘との愛憎渦巻く関係がここ2、3年、注目されている。」「こうした“母と娘の確執”の存在が広く認識されたのは平成25年頃だ。」とします。かなり最近のことのようなあつかいで、母の反対で仕事が続かない女性の記事で取りあげたものもそのあたりでしたが、母が重くてたまらない 墓守娘の嘆き(信田さよ子著、春秋社)くらいまでさかのぼってもよかったように思います。ここでは、画像が完全にそうなっていますし、タレント本的なものでちょうどこのテーマが続いたことが、「広く認識された」タイミングと考えたようです。ですが、母は娘の人生を支配する なぜ「母殺し」は難しいのか(斎藤環著、NHK出版)によれば、少なくとも20世紀末ごろから、こういうタイプの母娘問題の苦しみが顕在化していて、その背景には、女性への抑圧が減ったことがあるのです。

「漫画家、さかもと未明さん(49)も昨年刊行の自著「まさか発達障害だったなんて」(PHP新書)で母親との確執を告白」、もう読んだ人も多いと思います。このような書き方ですが、まさか発達障害だったなんて(星野仁彦・さかもと未明著、PHP研究所)は、単著ではありません。

「しかし、母親は「大学へ行くと結婚しなくなるとお父さんが言っている」「生意気な娘がいい気になると困る」と大学進学を反対。」したそうです。父からの伝聞のほうは、しなくなるとは限りませんが、学歴が高いほど確率的に低くなることは、女性ではとても明確です。稀に役立つ豆知識の記事、学歴コンプレックスがあると結婚できないという仮説が、わかりやすくまとめています。一方、「いい気になる」ほうは、気になるところではあるのですが、直接的な検証はむずかしそうです。家族という病(下重暁子著、幻冬舎)を読んでいらだった人は、あの筆者を連想したかもしれません。

さかもとは、「精神科医から「母親も発達障害の可能性がある、娘を理解するために必要な部分が欠損していたのだから許さないといけない」といわれ、救われたという。」とあります。よい展開で何よりです。発達障害には遺伝の影響があり、愛情とも悪意とも無関係に、続く部分があるのです。もちろん、遺伝率100%ではありませんので、親の持つものが丸ごとそのまま引きつがれるというわけではありません。

それで思い出したのが、らばQにきょう出た記事、アメリカの富裕層、2代目で70%、3代目で90%の財産を失っていることが判明です。成功してひと財産をつくっても、子孫はさらに増やすどころか、そのまま引きついでいくことさえむずかしいのです。財務省のサイトにある、主要国の相続税の負担率でわかるように、アメリカの相続税の甘さは飛びぬけていますが、それでもこうなります。一方で、ハンギョレのウェブサイトにきょう出た記事、韓国の若者10人のうち7人「一度失敗したら立ち上がれない」は、OTLの画像のかすれが気になることはともかくとしても、「「社会的な成功において親の経済的地位よりも自分の努力の方が重要だ」との回答は27.3%にとどまった一方、「親の経済的地位の方がより重要だ」との回答が72.7%」、成功は引きつがれるというイメージが強いことを指摘しました。ここは、アメリカンドリームの世界とのちがいで、きびしい学歴社会があり、受験競争が激化し、教育投資が子の成功を左右することとなり、「毒親」的な献身もつながります。わが国にも、週刊ダイヤモンド 8月22日号(ダイヤモンド社)で「究極の「育てゲー(育成ゲーム)」」と表現されたものがあります。