きょう、Medエッジに、意識を失った人の目を再び覚まさせる、知り合いの語りは脳を刺激して回復を早めるられるかという記事が出ました。
本文より先に、「写真はイメージ。記事と直接の関係はありません。」として登場するのは、ヘンリー・メイネル・リームの水彩画、Sleeping Beautyです。眠れる美女(川端康成作、新潮社)の作者が産まれたころの作品です。
「直感的には話しかけると脳が刺激されて、意識の回復が早まりそうな気がする。」、そういうイメージは理解できなくもありません。私のいる業界では、意識が遠のいている人を、この刺激で回復させることはよくあります。映画などで、力つきて意識がうすれていく人に、大声であたる場面も見かけます。ですが、誤解しないでほしいのは、てんかん発作で意識をうしなっている場合は、この刺激は有害であることです。てんかん協会のウェブサイトの、発作に出会ったらをご覧ください。図解入門 よくわかる最新「脳」の基本としくみ(後藤和宏監修、秀和システム)の、「社団法人日本てんかん協会の推奨する対処法(初級編)より抜粋。」も、このページからのようです。
「神経分野の専門誌であるニューロ・リハビリテーション・アンド・ニューラル・リペア誌」、これはNeurorehabil. Neural Repairのことでしたら、neurorehabilitationで1語です。佐賀県の労災事故の記事の最後に触れたことを思い出しました。
「こういう研究は、最終的には統計的有意差を追求するより、結果を積み重ねる方が理にかなっているような気がする。」そうです。意味がよくわからないのですが、まとまった人数をそろえて検定ひとつで決めるよりも、事例を積んでその数で納得させるほうがよいということでしょうか。対象が特殊ですので、人数を集めることに苦戦して、研究が中止、ないしはお蔵入りになってしまうのでは、もったいないと思います。一方で、カウンセラー 専門家としての条件(金沢吉展著、誠信書房)は、「書店に行けば書棚には個人療法の本ばかりが並び,カウンセラーはいかに自分が困難なケースを成功に導いたかを誇り高く論じる。」「学会の発表さえこうしたケース報告が幅をきかせる。」となげきましたが、特異な事例で前後比較で奏効したように見えるものは、発表したくなりますし、一定の価値はありますが、公刊バイアスがとてもきついので、メタ分析を含めて、数を積めば理があると考えるには不安が大きい性質をもちます。
それで思い出したのが、心理学ワールド68号です。私のところには、地方なので、きょう届きました。特集は「その心理学信じていいですか?」で、測定や統計に関することが中心です。QRPや公刊バイアス、NHSTの誤解や限界のお話もありました。筆者のひとりによるツイート、5回も出てくる「ローマンd」は必見!の意味が、ようやくわかりました。初校では、Cohen'sをイタリック体にされていたのでしょう。
今号ではほかに、こちらは「お詫びと訂正」にはなかったのですが、心理学史の複線径路[第7回]に、校正漏れがあります。「ピアジェは地元のヌーシャテル大学理学部に進学し、1918年には同大学で軟体動物(スネーク)の研究により動物学の博士号を取得しました。」とあって、ヘビは脊索動物門なのではと思った人も多いでしょう。ここはおそらく、スネールの誤りです。筆者の所属大学は同じですが、スイス便りの2には、「ピアジェは、もとともは生物学者として進化論に出会い、モノアラガイの研究で博士号を得ました。」とあります。もちろん、学名から想像がつくように、種としてのモノアラガイではなく、モノアラガイ類の何かのことでしょう。ピアジェがあつかったのが具体的に何かを知りたい人もいると思いますが、あのグループの分類には、いまでも混乱や議論がありますので、気をつけてください。