生駒 忍

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「うつ病」という記号と常習飲酒家の定義

きょう、マイナビニュースに、うつ病とアルコール依存、"恐怖の関係"とはという記事が出ました。「桐和会グループの精神科医・波多野良二先生」による解説と監修で、書いたのは栗田智久という人です。

「「うつ病」という言葉が社会に浸透してくる」、これは事実で、正しい理解、適切な理解をともなうかどうかはともかくとしても、ことばとしては知られるようになりました。ですが、このあたりには、さまざまな議論があります。「うつ」は病気か甘えか。(村松太郎著、幻冬舎)によれば、社会の認識は「支持期」から「困惑期」へ、そして「病気として優遇されているという立場の無神経な利用、増長」が決定打となり「嫌悪期」へと進むそうですし、「「うつ病」はつけ足しの記号に過ぎない。」「「うつ病」という病気と、診断書に書かれている「うつ病」という記号は、別のもの」と明かされます。こころのかぜという比喩表現は、ある意味で革命的でもあったのですが、違和感もよく指摘され、週刊東洋経済 1月18日号(東洋経済新報社)では由起という仮名の人物が批判を行い、うつ病は軽症のうちに治す!(和田秀樹著、PHP研究所)は一定の評価を与えつつも、「自然治癒の可能性は低い」「怖い病気」として危険性をうったえています。

「うつ病とアルコールは「卵とニワトリ」の関係」、「アルコールとうつ病は、診療の現場では『ニワトリが先か卵が先か』と同じで、はっきりとしたことは分かりづらいことも多いです。」とのことです。大阪の貧困(耕文社)にある、アルコールやギャンブルへの依存と、孤立や貧困とが悪循環を起こすような過程なのでしょう。

認知行動療法が「うつの対症療法としても活用」とあるのは、気になる表現です。むしろ、うつに対しては原因療法としての側面が大きいのですが、誤解をまねきそうです。

「飲み薬にはシアナミドやアカンプロサートなどがあります。」との紹介があります。後者は、なじみのない名前だと思った人もいると思いますが、アルコール健康障害対策基本法の記事でも触れたレグテクトが、これです。

「医療現場では、日本酒に換算して一日3合以上飲む人を『常習飲酒家』、5合以上飲む人を『大酒家』といいます。」、高田班のアルコール性肝障害診断基準試案にあるものだとしたら、それが5年以上という条件も書きたしたいところです。ちなみに、同友会メディカルニュース 2013年5月号に、「5日間以上継続と定義されています」とあるのも、高田班のもののつもりだとしたら、誤りです。