生駒 忍

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ミルグラム服従実験の再解釈と「操作人間」

きょう、AFPBB NEWSに、「悪は凡庸」ではない?有名実験を新たに研究という記事が出ました。

「1961年に米エール大学(Yale University)の心理学者スタンリー・ミルグラム(Stanley Milgram)氏が実施した伝説的な実験」に関する研究のひとつの紹介です。もちろん、「アイヒマン実験」の論文としての公刊は1963年ですが、実施は1961年7月からです。「この実験での発見は、ナチス・ドイツ(Nazi)のホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)に関与したナチス親衛隊のアドルフ・アイヒマン(Adolf Eichmann)の1961年の裁判を扱った政治哲学者ハンナ・アーレント(Hannah Arendt)の画期的な著書と一致」とありますが、その裁判の報道を見てから設計された実験です。そして、Behind the Shock Machine: The Untold Story of the Notorious Milgram Psychology Experiments(G. Perry著、Scribe Publications)によれば、アイヒマンの事例と一致させやすいように解釈したようでもあります。なお、この本のAmazon.co.jpのページの紹介文は、以前に知的なイルカの登場作の記事で触れた本のものと思われる「おうむ返し」で、こわれていますので気をつけてください。

「「ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・サイコロジー(British Journal of Social Psychology)」に発表された新たな研究」とあるのは、「ソーシャル」が落ちていますが、全文が公開されている‘Happy to have been of service’: The Yale archive as a window into the engaged followership of participants in Milgram's ‘obedience’ experimentsのことだと思います。誰の論文なのかが記事に直接には書かれず、職業上気になってしまいましたが、記事中に発言のある2名が、第1・第2著者です。そういえば、宮古毎日新聞のウェブサイトにきょう出た記事、「操作人間」(行雲流水)には、「そのことで生活が便利になる反面、それが高じると人は「操作人間」になると現代の社会心理学は警告する。」とありますが、「現代の」、しかも社会心理学者に小此木啓吾を入れるのは苦しいので、別の誰かのはずなのですが、社会心理学者の誰の警告なのでしょうか。

みちびかれた知見は、「異常なほどの実害を及ぼす行動」が、権威への服従という消極的なかたちよりも、むしろ積極的な「大義」にささえられるということのようです。ふと、そだちの科学20号 思春期のそだち(日本評論社)に登場した、「世界平和のために免許は取りません」を思い出しました。