生駒 忍

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凶悪犯の78%が動物殺しの経験ありという説

きょう、msn産経ニュースに、「ネコの解剖」がサインだったという記事が出ました。先日の記事でも触れた、佐世保同級生殺害・切断事件を取りあげたものです。

「米国の犯罪心理学者の研究では、聞き取り調査した凶悪犯の78%が少年期に動物を殺害した経験があり、多くはネコだったという。」とあります。誰が出したデータなのだろうと思い、少し掘ってみました。すぐにあらわれたのは、四国新聞社のウェブサイトの記事、動物虐待 犬猫が高じれば人もです。「フェルトゥース氏」で検索すると、ここからの孫引きと思われる数値が出回っていることがわかります。ゴキブリもネズミも迫害しない博愛主義者というよりは、高知の捨て猫集団の問題の記事で触れたような、種によって態度を変える人に歓迎されているような気がします。

その「フェルトゥース氏」は、セントルイス大学のA.R. Felthousのようです。このつづりでこういうカタカナ表記がよいのかどうかは、よくわかりません。すぐに見つかるのは、Bull. Am. Acad. Psychiatry Law第14巻の、Violence against animals and people: Is aggression against living creatures generalized?です。ですが、これは単著ではありませんし、343人もインタビューした研究でもないようです。Fig. 1も、凶悪犯の78%もがというようすではありません。ですので、ほかの論文のはずですが、まだ特定できていません。

また、78%というこの数値は特異的に高く、だからこそひとり歩きしたのかもしれませんが、たいていの研究は、もっと小さい値を報告しているようです。ぼくらはそれでも肉を食う 人と動物の奇妙な関係(H. ハーツォグ著、柏書房)の第1章にもいろいろな研究が紹介されていますし、動物虐待と人間への凶行とを安直にむすびつける発想が、学術的には疑問視されていることにも言及があります。

なお、探していて出てきたので、関連分野で、同じように78%という割合が報告されたものを2件、示しておきます。まず、American Society for the Prevention of Cruelty to Animalsの研究、Professional and Public Perspectives on Animal Crueltyです。警察官への調査において、「Children who harm animals are more likely to harm humans when they got older」と「Adults who harm animals are more likely to also be involved in interpersonal violence...」との両方で、そう思う割合が78%になっています。また、Alaska Center for Resource FamiliesのAnimal Cruelty and Children 3.0 Hours Training Creditには、「78% of 63 people charged with animal cruelty had also been charged with violence or threats of violence against people (Jim McIsaac, Winnipeg Police Services).」とあります。