生駒 忍

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佐世保女子殺害からのアスペルガーの連想

きょう、朝日新聞デジタルに、大阪)発達障害に理解を 家族の会が冊子を作成という記事が出ました。

「豊中市周辺の発達障害者の親らでつくる「一歩の会」が、当事者や家族の思いを記した冊子を作った。」と書き出されます。ですが、「一歩の会」と名のる団体は、ほかにもたくさんありますし、この名前で検索しても、この「一歩の会」の公式サイトは見あたりません。「2012年3月に結成され、約50人が参加」という規模ですので、むしろ当然でしょうか。この冊子の入手は、豊中市社会福祉協議会でとのことで、これも規模を考えれば、自然なことかもしれません。

冊子の内容の一部が、画像として出ています。冊子をもらえなかったのか、スキャンではなく、写真に撮ったようで、ゆがみが気になります。また、冊子の全体がそうなのかはわかりませんが、出ている部分は、発達障害情報・支援センターのウェブサイトの、発達障害とはの、ほぼ丸写しです。厚労省というより、国立障害者リハビリテーションセンターのサイトのページです。図も、ADHDをAD/HDとする修正があるほかは、ほぼリライトです。輪になった人々の絵は、海外の画像サイトからでしょう。エクスクラメーションマークを足したのは、オリジナリティに貢献してはいますが、品がないと感じる人もいそうです。

わかりやすい資料で、発達障害への適切な理解を広げてもらえるのは、ありがたいことだと思います。ですが、発達障害がらみのセンセーショナルな事件などがあると、こういった地味な努力をあっさりと吹きとばすほどの威力があります。その点で心配しているのは、佐世保の同級生殺害・切断事件が、過去のアスペルガー障害がらみの凶悪犯罪を連想させることです。佐世保というと、ここ数年でも、インストラクターなど死傷者8名を出し、犯人もカトリック教会で自殺したプール散弾銃襲撃事件や、佐世保同仁会病院理事長が病室で死亡、実は院長らの暴行が死因だと発覚した事件など、特異な凶行がすぐに思いうかぶ土地ですが、ことしでちょうど10年となった、佐世保市立大久保小学校同級生殺害事件も、衝撃的でした。また、同じ長崎県では、その1年ほど前に、中学1年生による4歳児誘拐殺害事件も起きています。そして、この両者の少年犯罪に共通するのは、犯行後に、犯人がアスペルガー障害だといわれて、議論をよんだことです。今回は窒息死させてから、首を切りはなしたようですが、大久保小の事件では、被害女児は首をカッターナイフで切りこまれて絶命しました。長崎の誘拐事件では、転落死させる直前に、陰茎を切りとったとも言われています。ですので、同じではないといえばそれまでですが、今回の事件は、アスペルガー関連の両事件を連想させるところがあります。

さらに、九州ではなく東海地方から2件、まずは静岡の母親タリウム毒殺未遂事件も、犯行後にアスペルガーだと発覚しました。犯人は高1女子で、学力的にも高いとされ、一人称が「僕」であるところも、今回と共通します。そして、以前に攻撃的な態度をとる人の心理の記事でも触れた、愛知の夫妻殺傷事件も、犯行後にアスペルガーだとわかりましたが、あの事件の「人を殺してみたかった」は、今回の佐世保の犯人の口からも出たのでした。

佐世保の16歳は、これから鑑定も受けると思いますが、どうなるでしょうか。DSM-5を使って、「アスペルガー」の名前はさけるかもしれませんが、出たものによっては、また発達障害への偏見も生じるのではと思うと、今回は違うと出てくれることを、勝手ながら願ってしまいます。

それでも、今回の件でいったんは掘りおこされてもしかたがありませんが、大久保小の事件のほうは、類似の新しい少年犯罪の前に、インパクトがうすまっていくかもしれません。そういえば、飲みものの危険度調べました(渡辺雄二著、三才ブックス)は、なっちゃん!の水っぽさの理由を取りあげていました。