守谷市の小学6年生とその両親が、いじめ被害の慰謝料1000万円を求めて水戸地裁龍ケ崎支部に民事訴訟を起こしたことが、ニュースになりました。J-CASTの記事、3DSで裸の動画撮られたいじめ訴え、小6男児が同級生らを提訴には、「被害児童の両親と弁護士が2013年12月3日に会見したと新聞各紙が報じた。」とあります。地元では名の知られたハンドボールチームでの事件ですが、各紙で取りあげ方にややずれがありますので、少し整理してみたいと思います。日経以外は4日の朝刊で、読売・毎日・産経は地方版の記事です。
「スポ小仲間のいじめ」提訴 守谷の小6 少年・保護者相手取り (読売)
「毎週のように練習場の体育館でズボンや下着を下ろされたり、プールでは水中に顔を沈められたりするいじめ」が、期間は昨年5月から今年9月までで、ほかが報じていないプールの事件も書かれています。今年4月と9月の撮影は、衣服をはぎ取られての下半身画像で、ゲーム機の名前を挙げています。ここは父親のほか、「裸で逃げ回った息子の気持ちを加害者に理解してもらいたい」という母親の声も取りあげています。なお、提訴先が「龍ヶ崎支部」と書かれているのは誤りで、正しくは龍ケ崎支部です。
「3DSで裸撮られていじめ」 茨城 小6男児が同級生ら提訴 (朝日)
9月7日の事件が主で、ゲーム機名を挙げて、撮られたのは全裸にされるようすの動画と、下半身の写真です。送信ソフト名は書かれず、先月にサービス停止されたとあります。4月下旬の加害者は同級生3名、下半身を撮影されるなどのいじめです。弁護士が、画像がネットに流出している可能性にも言及しています。
スポーツ少年団でいじめ 守谷 小6男児が団員ら提訴 (毎日)
安味伸一という人による署名記事で、「性的ないじめ」として報じています。昨年春から「チームメート数人にズボンやパンツを脱がされ、女子に見られた」と、女子の関与を被害の中心に入れ、今年9月は裸にされ写真を撮影された被害です。4月の撮影には言及がありません。自殺念慮、少年団の退団、教育委員会によるいじめ加害者11名の認定、取手署が暴行容疑で動いていることまで報じています。最後に、父親の声があります。
3DSで裸の写真 加害児童らを提訴 (産経)
ここは、「いじめ」という表現をまったく使っていないところが特徴的です。昨年5月ごろから、チームの練習や合宿で「ズボンと下着を脱がされるなどの嫌がらせ」にあい、今年4月と9月は、脱がされて全裸の写真を撮影されたという被害です。ゲーム機名のほか、ネット送信に使われた「いつの間に交換日記」、舞台となった「スポーツ少年団守谷クラブ」という固有名詞を示しています。父親の声のほか、性的な傾向の強さを指摘する弁護士発言がついています。
「服脱がされた」 小6男児が提訴 少年7人と親を (日経)
ここのみ4日夕刊の記事です。被害は昨年春から今年9月で、複数回にわたり下着を脱がされて、そのうち2回で、ゲーム機で撮影があったとします。市教育委員会の担当者が、いじめがあったことの理解と、今後について触れています。
スポーツ少年団で いじめ 被害小6男児が提訴 茨城・守谷 (東京)
いじめは昨年5月からで、今年4月の被害には言及がなく、今年9月の被害は、全裸にされてのゲーム機での下半身の動画撮影です。ですが、「ゲーム機の交信機能を使って画像を回し見」ともあります。父親の声が、ほかの報道と異なり前向きです。
スポ小のいじめ 守谷の小6 慰謝料請求 (茨城)
「スポーツ少年団内部のいじめ」と位置づけて、被害は昨年5月から9月、ズボンを下ろされて下半身を女子団員に見せるなどがくり返されたとあります。9月7日は全裸にされて、下半身の動画と静止画をゲーム機で撮影、仲間内で見せあうなどの被害であり、4月のものには触れていません。提訴日、父親の説明、被害届提出、教育委員会のいじめ認定と指導開始が書かれています。いじめの聞きとり調査は9月7日、つまり主な被害の当日中に着手されたことがわかります。
昨年は大津・皇子山中いじめ自殺事件が社会問題化し、今年はいじめ防止対策推進法が成立、施行されました。ですが、いじめ撲滅は遠く、特に今回のような性的いじめへの対応は、出おくれているように思います。子ども白書2013(本の泉社)では、『季刊SEXUALITY』(エイデル研究所)で、ちょうど今年に2013年10月号「特集: スポーツ・部活動とセクシュアル・ハラスメント」や2013年4月号「特集: 見落とさないで!「性的いじめ」」を編集した金子由美子が、いじめの調査や研究はあるのに、性的いじめについては見あたらず、「児童・生徒同士の性的いじめ・性犯罪に対して「そんなことはありえない」とされているからでしょう。」と書いています。犯罪被害者の心の傷 増補新版(小西聖子著、白水社)は、「下着を下ろすなどの性的ないじめも、あちこちで行われている。」と明言する一方で、男性の性被害はなかなか表面化せず把握されないこと、笑い話へゆがめられやすいことを指摘しています。ですが、多くのいじめ自殺事件に見つかる重い事象ですし、今回のような撮影とアップロードまで行われるものも、神戸・滝川高校いじめ自殺事件以来たびたび起きています。以前に、中学生の裸画像流出情報の記事を書きましたが、AERA 12月9日号(朝日新聞出版)には、LINEで「クラス全員にばらまかれた」高校生の被害例が載りました。大人が知らない ネットいじめの真実(渡辺真由子著、ミネルヴァ書房)では、性的いじめ事件へのネット上の怒りの大きさを指摘していますが、そういった関心に押されて、対策が少しでも進むならありがたいことです。