シリーズ第18弾です。
ワークブック201ページに、「独立行政法人福祉医療機構(WAM)は、社会福祉法人に資金を融資する目的で設置され、2003(平成15)年より独立行政法人となった。」とあります。このワークブックでは、独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園を単に「のぞみの園」と書く、法人格を略す表記もとっている一方で、ここに対しては常に、法人格をつけています。ここの文では、独立行政法人の名前を示していますが、独立行政法人としてのところを書きたいのか、それとも独立行政法人になる前から続いているものとしてのところを書きたいのか、わかりにくくなっています。また、その目的について、誤解をまねくように思います。
福祉医療機構の設置目的は何でしょうか。独立行政法人福祉医療機構法3条によれば、社会福祉法人への融資ももちろんありますが、それ以外への融資や、融資以外の活動も、目的になっています。3条2項は、個人向けの小口融資を目的として明示しています。
筆者は、独立行政法人になる前の時点での目的を取りあげたかったのかもしれません。そこで、社会福祉・医療事業団法を見てみましょう。1条は、ふつうですとその法律の目的をかかげるところですが、この法律では、法律で設置する対象の目的が1条にあります。それによると、「社会福祉事業施設の設置等に必要な資金の融通その他社会福祉事業に関する必要な助成、社会福祉施設職員退職手当共済制度の運営、心身障害者扶養保険事業の実施、病院、診療所等の設置等に必要な資金の融通並びに社会福祉事業施設及び病院、診療所等に関する経営指導を行い、もつて社会福祉の増進並びに医療の普及及び向上を図ること」が目的だということになります。やはり、社会福祉法人への融資もありますが、それ以外への融資や、融資以外の活動も、目的となっていました。ちなみに、社会福祉・医療事業団法への全面改正のためになくなったこの法律は、法庫でも見ることはできますが、誤字があります。
さらにさかのぼって、合併前の設置目的を見てみましょう。社会福祉事業振興会については、社会福祉事業振興会法1条によれば、「社会福祉法人に対し社会福祉事業施設の経営に必要な資金を融通し、その他社会福祉事業に関し必要な助成を行い、もつて社会福祉事業の振興を図ること」が目的だということです。これですと、融資対象は社会福祉法人ということになり、筆者の表現との対応がよくなります。ですが、実際には、23条2号にあるように、それ以外への融資も法定化されています。また、昭和33年度版厚生白書の、第二部第三章第一節六の(三)では、「(1)社会福祉法人に対して、社会福祉事業施設の修理、改造、拡張、整備、災害復旧等に要する資金または施設経営に必要な資金の貸付と、(2)社会福祉事業の振興を目的とする事業を行う者に対して資金を貸付けまたは助成を行うこと」が目的だとあります。
社会福祉振興会は、社会福祉・医療事業団の前身のひとつではあるのですが、ほかに医療金融公庫も事業団の前身であって、振興会と公庫とが合併してできたのが、社会福祉・医療事業団です。医療金融公庫は、医療金融公庫法1条によれば、「国民の健康な生活を確保するに足りる医療の適正な普及向上に資するため、私立の病院、診療所等の設置及びその機能の向上に必要な長期かつ低利の資金であつて一般の金融機関が融通することを困難とするものを融通すること」が目的だということになります。こちらには、社会福祉法人ということばは、ひと言もでてきていません。