生駒 忍

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柿を焼くことの栄養上の効果と武満徹のお話

きょう、アサジョに、フルーツは「焼いて」食べれば美容効果アップ!という記事が出ました。「実は焼いて食べると美容効果がアップするフルーツがたくさんある」として、「以下の焼きフルーツを試してみて」と呼びかけるものです。

「オリゴ糖には、体内にあるビフィズス菌などの善玉菌のエサになる栄養素。」、ふしぎな書き方です。うしろが略されていると考えても、オリゴ糖に栄養素があるという関係性は不自然ですので、コピュラが略されているととって、「には」から「に」をとったほうがつじつまが合いそうです。また、「体内にある」は、「いる」ではないので、「ビフィズス菌」でも「善玉菌」でもなく、「栄養素」にかかるようです。栄養素自体が「エサになる」というのも奇妙ですが、菌の環世界ではそうなのでしょう。

「リンゴは皮ごと細かく切って耐熱皿に乗せ、レンジで3分ほど温めればカンタンに作れます。」、成長を目的にしないVITMの記事で触れた種のお話に批判される拙速さではなく、焼きリンゴのことです。ここでの「レンジ」は電子レンジのことだと思いますので、焼いてはいないとも考えられますが、クックパッドの記事、介護食 焼きりんごのレモン風味のような例もあります。あるいは、わが国では、20年ほど前のことですが、一連のオウム真理教の事件が発覚し、遺体を電子レンジの巨大版で焼却していたことがわかって、温まるだけではない威力が知られるようになりました。一方で、abc13のウェブサイトに3か月前に出た記事、Father of siblings of toddler burned to death tries to find his children.が伝える、アメリカで親がドミノピザへと出かけた間に、上のきょうだい2名の連携で、幼児を焼いて死なせたovenは、microwave ovenではないと思います。

「免疫力を高めるはたらきや美肌効果のあるβクリプトキサンチン」とあります。皆さんは、こういう場合に、ハイフンは抜きますでしょうか。分野によってまちまちかもしれませんが、生理心理学でのGABAの表記では、ギリシャ文字を使う場合にはγ-アミノ酪酸、カタカナの場合はガンマアミノ酪酸に、それぞれなりやすいように思います。「ガンマ-アミノ酪酸」では、長音記号とまぎわらしいですし、群馬いじりの用語が連想されるとよい気分はしませんが、群馬の人々は、その程度でいやがるほど軟弱かどうかは、わかりません。ふと、麻山事件 満州の野に婦女子四百余名自決す(中村雪子著、草思社)に、笛田道雄という人の証言として、「群馬県人は堪え切れずに転業する者が多く、自分の父親が引き連れて入った十五戸のうち、最後に残ったのは笛田の家一戸だけであった」とあるのを思い出しました。

「柿は焼くことによってGABAという栄養素が約3倍になります。」とあります。数字は、品種や焼き方などでも変わるとは思いますが、1年3か月前に日本テレビのスッキリ!が流したものを参考にしたのかもしれません。慶應義塾大学のプレスリリース、柿は加熱調理すると健康成分が増加するで見ると、GABA3倍は、脱渋後に皮をむいて加熱する効果に対応させるのが、すっきりすると思います。

柿について、「そのままアルミホイルに包んでフライパンやトースターで約15分ほど焼いて、皮ごと食べてみましょう。」と提案します。「約」と「ほど」と、どちらかでよいように思いますが、レシピらしく数字をはっきり出したい一方で、その危うさがわかるために、こうまでしてぼかしたのかもしれません。そういえば、NHK-FMのN響 ザ・レジェンドのきょうの放送で池辺晋一郎は、武満徹の「弦楽のためのレクイエム」について、ストラヴィンスキーが評価してというおなじみのお話をして、危うげだと思っていたら、結局はぼかした表現に落としました。先月29日に開かれた仙台フィルハーモニー管弦楽団特別演奏会のプログラム冊子では、沼野雄司があのお話に否定的な指摘を示していたのですが、この公演には自作の初演がある池辺も、来ていたどころではなく、ステージに上って、だじゃれも武満への恩義も披露していたのを、フロアにいたひとりとして、思い出しました。その武満が亡くなって、きょうで20年となります。あらためて、ご冥福をいのります。