生駒 忍

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日本人女性特有の心理と他人志向型の貧困

きょう、Business Journalに、あの飲食店、なぜバカ高くてヒドいのに人気?注文間違う、冷めてる、うるさくて会話できず…という記事が出ました。キーワードが「マクドナルド, レストラン, 吉野家.」なのは、何かのいやみなのかもしれませんが、私はまだ行ったことのない、「東京都心の大きな駅の目の前に店舗を構える」「予約がないと入店困難といわれるほどの人気店」を取りあげたものです。

「一辺80cmほどの正方形のテーブルで、他の同じ大きさのテーブルでは大人3~4名のグループも多く、あまりに狭いというのが第一印象」とあります。「ただでさえ狭いテーブルに火のともったロウソク」もあり、「ドリンク2杯と料理が2皿来た時点でテーブル上は埋まってしまい」というほどですと、お皿が大きいのかもしれませんが、その大きさのテーブルにおとな4名のところが、さらに心配になります。

「ブランド和牛のステーキを注文した際、店員から焼き加減を聞いてきたので「ウェルダン」と注文したが、実際に届いたステーキは外身以外赤々としていて完全にレア。」だったそうです。焼きぐあいのイメージのずれなら多少ありますが、注文がひっくり返って伝わるとは、レアケースです。そういえば、レアケース(大門剛明作、PHP研究所)で壮馬は、「心理学的にも死にたいっていうのは生きたいってことの裏返しじゃなかったですか」と言いましたが、すぐに暗転するのでした。

「数多くの飲食店レビュー本を著書に持つJ.C.オカザワ氏」が、「日本人女性特有の心理ですが、ファッションでもみんな似たようなコーディネートをよくしているし、みんな同じようなブランド物のバッグを持っていたりしますよね。これは自身の個性を確立している欧米の女性にはあまりない傾向で、日本人女性は“みんながイイというものはイイ”という価値観の方が多いといわれています」と指摘します。このあたりは、片目を失って見えてきたもの(ピーコ著、文藝春秋)が、自身の若いころをふり返り、「当時の若者の美意識のなかでは、いまのように、隣も前も後ろの人も同じスタイルでいるなんて、愚の骨頂の時代だったのです。」としましたし、「エビ売れ」での同じ色への集中、「量産型女子大生」など、何度も話題になりつつも、いまはジューシィメイクと専業主婦願望の記事の最後に取りあげたようなことも起きているはずですが、欧米からみれば、大差はないかもしれません。また、「かくれんぼ」ができない子どもたち(杉本厚夫著、ミネルヴァ書房)は、「学校体育で導入されている選択制授業は、自分のしたい運動種目を選択するのが原則」、「ところが、だれだれちゃんが選択するからと、友だちで運動種目を選択する傾向がある。」と指摘しますが、そういう感覚の延長線上でとらえると、「“みんながイイというものはイイ”という価値観」は、協調的で有用です。多元的無知で「人気に実力が伴っていない」アビリーンを内心がまんしているのではなく、みんなのおかげでおたがいに、「“1.5級~2級の美味さ”でも十分満足」できるのです。孤独な群衆 上(D. リースマン著、みすず書房)のいう他人志向型の社会には、たのしく適応できそうです。

それで思い出したのが、日刊SPA!にきょう出た記事、低所得よりも怖いのは“精神的な貧困”です。「他人志向型」「内部志向型」といった用語を用い、「精神的貧困を避けるためには、自分だけが楽しめる価値観を持った、“内部志向型”の人間を目指すべきです」という社会学者の主張を紹介しましたが、リースマンによれば、内部志向型は、幼いころに両親などから植えつけられる性質のものですので、この「べき」論は実現を度外視した空論か、それとは別のこの人独自の用語なのか、よくわからないところがあります。