生駒 忍

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内定辞退の不安と日本企業に転勤が多い理由

きょう、マイナビニュースに、内定を辞退する理由 -「面接で印象が悪くなった」「ブラックの噂」という記事が出ました。

「内定を辞退した経験はありますか?」という問いに対して、「はい 27.7%」となりました。対象がはっきりしないので、「雇用悪化の現代社会を象徴するかのような低めの数字」ととるのが妥当かどうかは、判断しにくいところです。「マイナビニュース会員」の「男性137名 女性163名」で、余裕のバブル世代も入っています。

辞退理由の分類は、上の2グループが、辞退自体に関しては消極的なもので、それ以降はより積極的な理由からの辞退だといえそうです。積極的というとポジティブですが、次がつながった前者よりも、どちらかというと後者のほうが、不安な印象があります。よく調べないままで内定まで行ってしまう危うさもありますし、そのくらいでも内定をとれた自分には実力があると解釈して、ここを捨ててもさらによいところでとれると信じているかもしれません。プライドが高くて迷惑な人(片田珠美著、PHP研究所)の、「就職浪人たちの「もっとできるはず」という思い込み」のような世界にも近いでしょう。「就活」と日本社会 平等幻想を超えて(常見陽平著、NHK出版)が論証したような、巧妙できびしい「学歴フィルター」を通れたのでしたら、同程度のフィルターならまた通れる可能性が高いですが、フィルターより先はわかりません。

理由の最後は、「あとで色々と調べて、ブラック企業の噂があった」で、その直後が「総評」です。自分で選んだのに他人から聞いたことでこわくなってしまうチキンとも、見えるものを集めていって正体を判断するダックテストとも言える事例で、「ニワトリからアヒルへ」の総評につなげたと読むのは、読みすぎでしょうか。

「内定した会社側に問題がある場合もあるようだ。給与や労働時間など就労条件が悪かったり、勤務地や転勤の可能性があるなど、希望に添わなかった時には、辞退する人もいるよう。」とします。「記載されていた物より条件が大幅に違っていたから」が問題なのは当然ですが、「勤務地や転勤の可能性」まで、会社側が悪いかのようにされることには、疑問を感じます。なお、池田信夫blogの記事、日本の会社はなぜ転勤が多いのかにあるように、転勤は長期雇用と結びついていますので、これは空間的な安定を手ばなして、時間的な安定を手に入れるという関係といえます。