生駒 忍

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給料日に来る社長と「無責任一代男」の政治

きょう、新刊JPに、社長がいつもいない会社が潰れない理由という記事が出ました。

「『任せきりでも10億円!週休5日社長の 任せる力』(すばる舎/刊)は、 仕事を上手に「任せる」ことで、部下の自発的な成長をうながし、チームとして大きな目標をに向かうための方法が明かされています。」とあって、文法やスペースの使い方に引っかかりはしますが、任せる力(真藤昌瑳熙著、すばる舎)の著者へのインタビューです。また、「バイスティック」7原則の応用の記事で触れたような、タイトルからはわからない、途中までの記事です。

永守重信ほどではなくても、一番はたらいているのが社長という会社は、どこにでもあります。トップがそうだからみんなついていくのだと、よくいわれるものです。ですが、このお話はまったくの別世界です。「指示待ち」撲滅! デキる社員のつくり方(日経トップリーダー編、日経BP社)は、スケジュールはがら空きで、それでいて雑務はしない平成建設の社長を、好意的に取りあげましたが、それよりもさらに下です。本のタイトルには週休5日とありますが、「実は週二日も行ってないんです。」「今月は一回出社したかな(取材日は9月下旬)。あとは給料日くらいですね。」とのことです。8月の広島土砂災害救助の首相視察をめぐって、トップが現場に行く必要性が議論になりましたが、ここはさまざまな考え方があるところです。わが国では、作家や俳優が国のトップになるのはまだでも、タレント性あふれる人物が知事に選ばれることは、ここ20年足らずでふつうのことになりました。その場合に、知事が知事室にはあまり行かず、外にばかり出ているという指摘が、批判的に行われることがあります。一方で、それもその人を選んだ民意のうちと割りきるだけでなく、トップは大所高所から決断や号令をかけることと、その成果が思うように出なければ、金枝篇 上(J.G. フレイザー著、筑摩書房)の「王殺し」ではありませんが、責任をとることとが仕事で、成果さえあげれば手段は問わないのが合理的でもあります。出張は多くても出庁はという点の批判も多かった石原慎太郎は、このままでは財政再建団体にとも心配されていた東京都を、みごとに立てなおしました。都財務局が4月に出した、東京都の財政状況と都債(資料編)の9ページや11ページを見ると、平成11年の就任から、破綻への道がとどめられ、反転へと進んだことがわかります。禁断の人員削減に手をつけただけだと思う人は、10ページで、石原以前や全国の傾向と見くらべてください。それでも、知事が毎日庁内を回って、こまめに電気を消したり裏紙を使うよう見はったりしていれば、もっと財務を強くできたはずなのに、ゆるせないと言いたい人はいるのかもしれません。

関連して、「それでわかったことですが、よほどのトラブルが起こった場合は別として、上司がいないから仕事が回らないことなんてまずありません。だって、人事異動で何も知らない上司が来ても会社は回るでしょう?」ともあります。石原都政の前が、それにより近かったかもしれません。青島幸男は、議員として「政治」家の経験はあっても、立法府の、それも参議院のほうだけ、しかも首相指名は必ず棄権したほどで、行政にかかわる経験は何もないまま、都政をにぎりました。ですが、世界都市博覧会中止の無理を通したくらいで、あとはよきにはからえとばかりに、よけいな手は出さなかったので、赤字を出しながらも、都政は回ったのでした。1期で「無責任一代男」は「ハイそれまでョ」となり、参議院にも戻れないまま亡くなりましたが、東京オリンピックの開会からちょうど50年のきょう、2度目のオリンピック・パラリンピックへ向けていきおいづく東京を、天国からどんな思いで見ているのでしょうか。