生駒 忍

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分散分析でのLevene検定の解釈と表記法

きょう、OKWaveに、リーベン検定という質問記事が出ました。

このカタカナ表記にはなじみのない人もいると思いますが、Levene検定のことだと思います。以前に、分散の加法性の記事を書きましたが、こちらは分散の等質性の話題です。一般には、「ルビーン」と書くことが多いようです。ドイツ風に見える「レーベン」も見かけます。

経験的には、「統計学は初心者なので、分かりやすく説明していただけると助かります。」と求める人に統計のお話を理解してもらうには、統計の知識よりも、表現力や忍耐力が問われることが多いように思いますので、私は直接回答するつもりはありません。分散分析を行うために、まずはLevene検定をかけてそれから考えるという手順からは、それほどの初心者ではなさそうな気もしますが、よくわかりません。

Levene検定は、SPSSで平均値の検定をするときに、合わせて得られるイメージの強い技法でしょう。ですが、テキスト等を見ると、SPSSでのt検定に対しては、検定結果の読み方とその後の対処について、はっきりと書いてあることが多いのですが、分散分析には、もちろん現実的な理由は理解できるのですが、あまり書かれないようです。私も授業で使っている、SPSSに特化したテキストであるSPSSのススメ〈1〉 2要因の分散分析をすべてカバー 増補改訂(竹原卓真著、北大路書房)は、7章2節で対応のないt検定をあつかいますが、Levene検定が有意かどうかでの分かれ道を、両方とも明確に説明します。傍注の★9の書き方には不満がありますが、本文はこれでよいと思います。なお、私としては、そこも含めて、表記の不統一や誤解をまねきかねないところなどが散見されて気にはなりますが、本質的にはよくととのって親切なテキストだと思っています。11章3節の難易度の突出は、やむを得ないところだと考えます。

さて、同じくSPSSのススメ〈1〉 増補改訂で、分散分析の場合はというと、8章2節で初登場となる際に、傍注の★10で、「また,データの等分散性に自信がないときには,[等分散性の検定]にもチェックを入れておくことをお勧めします。」と、「自信」しだいでのオプションというあつかいです。Brown-ForsytheやWelchの選択ルールはまったく説明がありませんし、オプションあつかいですので出力例も読み方も、その後に登場することはありません。ちなみに、球面性の検定が有意だった場合についても、9章1節は、「続く[被験者内効果の検定]では[Greenhouse-Geisser],[Huynh-Feldt],[下限]などを参照」として、選び方には言及がありませんし、そこを平易に述べるのはむずかしいので割りきったのだとしても、さらに選択肢が加わることを示唆する「など」も困惑をまねくでしょう。

ところで、冒頭で、Leveneのカタカナ表記に触れましたが、読みにくく見えるHuynh-Feldtの前のほうについて、SPSSのススメ〈1〉 増補改訂は、「ベトナム人のために読み方が難しいですが,知り合いのアメリカ人研究者がそう発音していたので間違いない」という読みを明示します。反論はありますでしょうか。なお、Brown-ForsytheやTamhaneのカタカナ表記は、見あたりません。