おとといからきのうにかけて、第15回精神保健福祉士国家試験が実施されました。
今回は、いわゆる「新カリキュラム」での初めての試験でしたので、いままでとはいろいろと変わるのではないかと心配していた方も、多かったのではないかと思います。結果的には、精神保健福祉士国家試験のあり方に関する検討会の精神保健福祉士国家試験の今後のあり方についてに目を通しておけば、それほどおどろくことはなかったように感じます。「精神保健福祉士国家試験の出題の難易度は標準的であるべき」という基本的な考え方が守られたかどうかは、議論が分かれる気がしますが、「単に記憶を問う出題ではなく、実際の現場に必要となる考え方を問う出題形式の出題を増やしていくべき」とあることをすなおに反映して、事例問題の割合が増えました。一部に導入された「五者択二」形式も、資源を選ぶときに一つだけに厳選する必要はないというような、より実際的な判断場面を作りたかったためではないでしょうか。新しくカリキュラムに加わった更生保護制度も、さっそく出題されました。
難問奇問も交ざってくるのは、以前からあったことですが、おもしろかった設問としては、2問を挙げたいと思います。一つは、専門の問題17です。固有名詞をうまく使って、ひっかけをたくさん組みこんであります。「いのちの電話」はとても有名で、さすがにまちがわないと思いますが、「チャイルドライン」を子育て支援につなげてみたり、「日本生産性本部」という、まるでティトマスの産業的業績達成モデルのような、福祉は二の次のように読めてしまうものが正解だったりというアイデアは、よく考えついたものだと思います。「ナルコティクスアノニマス」は、問題48に「ナラノン」という表記でまた出してしまったのはうっかりかもしれませんが、語源のναρκόωが思いうかんだり、睡眠発作をおこすナルコレプシーを連想したりすると、ひっかかります。そして、秀逸なのは「波の会」です。双極性障害の波にひっかけるとは、周期があまりに長すぎますが、それらしく思えてしまうのがみごとです。
もう一つは、共通の問題82です。認知症高齢者の事例で、それなりにありそうなネガティブな展開についていきながら読み進めると、最後は第三者後見人の同意で開頭手術が行われるという記述で終わっていて、一気についていけなくなります。しかし、実はそこがまさに出題意図で、ついていけなくなった人はもう解けていて、ついていけてしまった人はつまずいてしまいやすい設問でした。内容としては、ぜひきちんと解けてほしい題材の問題でしたが、今回は問題数が増えて、この設問までついていけなかった人もいたかもしれないのが、残念なところです。