きょう、ビーカイブに、リラックスできる面接官との位置関係は「左側」という記事が出ました。ディレクトリ名からのイメージとは異なり、就活面接の準備・練習カテゴリの7本目の記事です。
左右の「心理」は、心理学者があまり取り組まない一方で、雑学的な心理学の本ではよく見かけるテーマです。研究知見の引用をせずに、著者のイメージや、研究知見の引用のないほかの本からの引き写しで書かれることも多いようです。それでも、予知夢や血液型性格論のような、本質的に否定されるものではなく、大小まちまちの尾ひれをかき分けると、信頼できる科学的発見も出てくるのが、ややこしいところです。サブリミナル効果の科学 無意識の世界では何が起こっているか(坂元章・坂元桂・森津太子・高比良美詠子著、学文社)が整理したように、閾下提示刺激の効果は実在して、しかしいわゆる「サブリミナル効果」が人間を意のままにあやつることはまずないような、あるいはモーツァルト効果にも似た部分がありますが、そういう世界です。左右についても、きちんと科学的な本もあり、たとえば左と右の心理学 からだの左右と心理(M.C. コーバリス・I.L. ビール著、紀伊國屋書店)がありますし、その第一著者による言葉は身振りから進化した 進化心理学が探る言語の起源(M.C. コーバリス著、勁草書房)では、第8章がこの話題です。わが国では、後者の訳者が、左右に関する心理学の研究で知られています。
この記事では、冒頭で「雰囲気を大きく左右する」と書いた上で、左右の話題がくり返し登場し、左がよいと呼びかけます。ですが、正面の難点の議論はあっても、右ではなく左がよいとする根拠はほとんど書かれません。1か所、人間のではなく「目の習性」として表れるところくらいです。その「習性」が、書字習慣に影響されたものならば、読み書きをヘブライ語やアラビア語でする人々ではどうだろうかと考えたくなります。
衆議院議員と参議院議員とで、おじぎのしかたが異なるとは、興味深い話題ですが、実証的なデータはあるでしょうか。テレビ番組ならば、ストーリーにあう場面をいくつか切り貼りして正当化しそうな話題ですが、ひまな方がひたすら動画を見て、自分の目でおじぎの型を判定してこつこつ数える手法なら、実現可能性はありそうです。それを、柴田寛・東北文化学園大学講師の調査のような、おじぎの型が与える印象の知見と対応させて論じることになります。もちろん、おじぎをする本人の中での効果もあるでしょう。身体心理学 姿勢・表情などからの心へのパラダイム(春木豊編、川島書店)や、動きが心をつくる 身体心理学への招待(春木豊著、講談社)の世界です。ですが、こういう「身体心理学」は自分が使いたい意味ではないという、札幌学院大学人文学部臨床心理学科ブログの記事、身体心理療法と非言語的コミュニケーションのような声もあります。Yahoo!知恵袋にきょう出た質問記事、なんで女って歳とる毎に子供っぽくなるんですか?での「身体心理学」は、どのような意味ととるべきでしょうか。
さて、正面をさけて左をとろうとくり返し呼びかける中に、「自分の主張をどうしても通したいときや、相手に強く抗議する場合には真正面から立ち向かうのが原則」ともあります。就職活動の面接を想定した記事のようですが、どうしても採用してほしい、ほかのどんな応募者よりも自分は優秀、自分を採用すれば貴社の利益につながるといった「主張をどうしても通したいとき」だと考えれば、就活面接では正面をとるべき、わざわざ斜にかまえるのは自殺行為か自己ハンディキャップ化か、ともいえそうです。ここはあくまで「余談」ととる人もいるかもしれませんが、最後にある4点のまとめには、きちんと「3. 説得や自己PRに力を注ぐときは、敢えて向き合う位置を」とあります。