生駒 忍

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殺人者の心理がわかるゲームで感動する心理

きょう、Gigazineに、殺人者の心理がわかるゲーム「DayZ」が発売後1カ月で100万DLを突破した理由とは?という記事が出ました。Fast Companyの記事、"DayZ" Makes You Feel Every Murder You Commit. Can You Handle This?に基づいた内容です。

数あるFPSの中で、このDayzがもつ魅力のひとつに、Permadeathがあるといいます。熱狂的な支持者をつくり、以降のRPGに大きな影響を与えたウィザードリィの、「ロスト」のシステムを思い出しました。いしのなかにいる、今の若い人は知っていますでしょうか。

「このゲームは殺人者シミュレーターです」と評したプレイヤーの声が印象的です。このゲームを悪く言うのではなく、「初めて他のプレイヤーを殺したときの感情の変化に感動」、それは「殺したことを正当化する感情が自分の中に芽生えた」ことと対応するようです。「持っている道徳観と犯した罪との間で苦しむような感覚」も、賞賛の対象となります。一方で、心理学用語の「リスキーシフト」が、日本語版ウィキペディアの記事へのリンクつきで登場しますが、知らない人もリンク先ですぐ気づくように、一般的な意味からはずれる使い方です。ところで、標準社会福祉用語事典[第2版](秀和システム)の「リスキー・シフト」の項目に、「個人で単独に意思決定を行う場合よりも、集団討議後の決定のほうが、リスクの高い方向に意見が極端化しやすいこと。」と定義文があるのは、あまり適切ではないでしょう。後で「集団極化現象のうち、よりリスクの高い決定を行う場合をリスキー・シフト、より慎重な決定を行う場合をコーシャス・シフト」とあるところのほうが、より適切だと思います。

それにしても、殺しあいが起こるリアルなゲームで、殺人者の心理がわかるとしても、何かの役にたつでしょうか。作家や役者が殺人をあつかうときに、これで勉強するとリアルな作品になるでしょうか。それとも、フィクションには現実は知らなくてもよい、あるいはへたに知らないほうがよいでしょうか。小津安二郎も長谷川町子も、生涯を独身で通し、生殖家族をつくりませんでしたが、こころの通った家族をえがく作品で広く受けいれられました。また、東スポWebにきょう出た記事、放送続行の芦田愛菜ドラマ ついに“犠牲者”では、元日テレの水島宏明が野島伸司について、「他局の人から聞いたが、野島さんは現場取材はほとんどしないらしい。だからこそ、独創的な作品を描けるようだ。」と言っています。一方で、殺人者の気持ちがわかったと思っても、それがほんとうの殺人者そのものの気持ちかどうかは、ほんとうの経験がないとわからないという限界もあるでしょう。CM NOW 2014年1月号(玄光社)で、女優の堀北真希が、親の気持ちもわかるようになったが、親の経験はないので親そのものの気持ちはわからないと書いたことを思い出します。