生駒 忍

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佐村河内守がヒットしています

昨年、日本コロムビアから発売された、佐村河内守:交響曲第1番 HIROSHIMAが、クラシック音楽としては異例のヒットとなっています。先月から、この作曲者の半生がテレビ番組で取りあげられているそうで、そのどれも音楽番組ではないようですが、そのあたりから売れ出したのだそうです。けさの日経にも、大きな広告が載っていました。

この方の作品を聴いたことはないので、音楽家としてのところは、私にはなんともわかりません。一方、苦難の半生を見せてインパクトを与えてブレイクさせる売り方は、本人にそういうつもりがあったかどうかにかかわらず、いまいち好きになれない売り方です。ひと昔前に売れたフジ子・ヘミングを思い出します。作品や演奏が直接に評価され、評価を受けてさらに成長し、新作や演奏会ごとにだんだんと支持を広げるのが王道だとするならば、極端で、誰にでもわかりやすい苦難の半生で音楽を売るのは、邪道であるという気がします。

そうはいっても、邪道は許せない、王道しか認めない、などというつもりはありません。音楽の世界で、そのような王道を堂々と進んだ人がどれだけいるかを考えると、気が滅入りそうになります。また、特にクラシック音楽の世界では、邪道の人が一般の人にたくさんのCDを売り、そのもうけのおかげで地味でも滋味のあるCDもメーカーが出しやすくなったり、邪道を入口にしてクラシック音楽に興味を持つ人が出たりしますので、外から資源を集めてくれる邪道は、悪く言われることも多いですが、実はこころの底で感謝されているのかもしれません。