出題解説

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問62 緩和ケアと医療用モルヒネ

ターミナルケアは、ひと昔前まではわかりにくいカタカナ語の典型例でさえありましたが、もう定着したといえそうです。一方で、英語表記ではterminal careとはあまり書かれなくなり、end-of-life careにとって換わられました。ときどき、ターミナルケアは和製英語だと誤解している人がいますが、英語圏では死語だといったほうが正確でしょう。綜合臨牀 2010年9月号(永井書店)で柏木哲夫は、和製英語の「ターミナルホテル」が消えていったことに触れつつ、terminal careからend-of-life careへと換わった理由を2点、示しています。

1、WHOの定義では、ターゲットは健康自己効力感(HLOC)ではなく、より大きな概念であるQOLとなっています。ちなみに、QOLということばが、広まってはいますがなじにみくいということもあり、WHOのものを一般向けに、読みやすい日本語にあらためる提案もあります。日本緩和医療学会のプレスリリース、『市民に向けた緩和ケアの説明文』を新たに決定!で、WHOの定義の和訳とあわせてご覧ください。

2、スピリチュアルケアは、ターミナルケア以上に訳しにくく、一方でカタカナの「スピリチュアル」の語感がかたよってしまったこともあって、あつかいにくいことばです。魂のケア、霊的ケアなどとも表現され、パストラルケアのようにキリスト教に足場をおく実践もありますが、仏教に足場のあるビハーラも、スピリチュアルケアの典型的な実践です。

3、ターミナルケアに、自己や人生をふり返る機会はふんだんにありますが、他者や外部との交流を、ほかの病棟や医療形態にくらべて制約する必要はありません。問60解説で取りあげた内観療法のようなものではありません。

4が正解です。モルヒネは危険な依存性のある麻薬ですが、代表的なオピオイド鎮痛薬でもあります。強い疼痛に対して医学的管理のもとで用いられる場合には、依存性はゼロとはいえませんが、その問題は小さいことが、経験的にも知られていますし、神経薬理学的な基盤も解明されています。がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2014年版(金原出版)で、図解つきでくわしい説明を見ることができます。