生駒 忍

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パイナップルでの体調不良の原因と温度の影響

きょう、美レンジャーに、あれっ…ピリピリ痛い!気をつけたい「パイナップル」の食べ方3つという記事が出ました。

こんな季節に、パイナップルの話題はめずらしいです。「パイナップル、食べ方次第では体調不良の原因に」というネガティブな内容ですので、暦の上で反対側になるいまがよい時期だと考えたのでしょうか。パインの日は8月1日、パイナップルの日は8月17日です。

「まだ十分に熟していないパイナップルには、“シュウ酸イオン”という成分が含まれています。」とあります。食べものの成分として、イオンを示すのはめずらしいと思います。ちなみに、成分解析で「イオン」をためすと、濃硫酸が出てきます。

「丸ごと購入する場合は、ずっしりとした重みが感じられるもの、皮が鮮やかな黄色をしているもの、カットされたものを購入する場合は、実が白っぽいものより黄色っぽいものを選ぶと良いでしょう。」とあります。ですが、この記事にある画像が世界中のウェブサイトで見かけられるように、「皮が鮮やかな黄色」のものは典型的ではなく、なかなか見つけにくいと思います。パインちゃんは、架空のキャラクターです。「カットされたものを購入する場合は、実が白っぽいものより黄色っぽいもの」と書いていることからは、高木沙織という人が、海に切り身が泳いでいるようなレベルの誤解をしているとも思えません。ちなみに、KIRIMIちゃんは泳ぎます

「ですが、パイナップルに含まれるたんぱく質を分解する酵素“ブロメライン”は、60度以上に加熱すると効力を失います。」、とてもよく見かける言説ですが、温度の影響はそう単純ではありません。たとえば、Kasetsart J.(Nat. Sci.)44巻の論文、Effect of temperature on the stability of fruit bromelain from smooth cayenne pineappleのFigure 1がわかりやすいでしょう。Figure 2のほうがきれいですが、80度条件が落とされています。

「パイナップルに含まれる消化酵素の働きは強力。」とありますが、人喰いパパイヤ(少年ナイフ)に歌われる「人食いパイナップル」が実在するはずはありませんし、消化酵素を持つとは思えません。ブロメラインは、たんぱく質分解酵素ではあっても、2種類とも消化酵素ではないはずです。ヒトはもちろんのこと、ほかの動物でも、生成も分泌もできないと理解しているのですが、何かいましたでしょうか。あるいは、さらに専門外なのでまったくわからないのですが、食虫植物で、ブロメラインを使う種があるのでしょうか。