生駒 忍

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安倍首相の読書量と黒柳の「玉ねぎ頭」の理由

きょう、現代ビジネスに、施政方針演説では先人の名言を4つも引用。安倍首相は「前と違って」こんなに本を読んでいるという記事が出ました。タイトルは、揶揄のようにも見えますが、「安倍晋三首相は2月12日、第189回国会の総理大臣施政方針演説で岩倉具視、岡倉天心、吉田松陰、吉田茂4人の先達の言葉を引用した。」ことを評価したものです。

4件の引用部分を引用した上で、「これらの言葉を読んだ国民の多くは、果たしてスピーチライターは安倍首相自身の指示によって件の引用を施政方針演説に盛り込んだのだろうか、と疑問を覚えたのではないか。」とします。施政方針演説は、国会で声に出して行うものですが、「読んだ」という表現です。新聞でも、いまはウェブサイトでも読める時代ですが、全文を読んだ人は少なくても、中継ですべてを聴いた人はもっと少ないでしょうから、これでもよいように思います。また、ライターとして、情報は読むものというイメージもあったのでしょう。筆者には、権力抗争のウラを読む人事ファイル(歳川隆雄著、にんげん出版)という著作もあります。

「筆者もかつて首相周辺から安倍首相の読書量が半端なものではないと聞かされた時、正直言って、驚いたものだ。」そうです。PRESIDENT 2月2日号(プレジデント社)の「年収5000万円以上の金持ちの働き方」に、「SNSやネットサーフィンより、読書に費やします」とあることを思わせます。

「冒頭、「私は、白さも白しアンデスの山の白雪のように白紙です」と答えたのだ。残念ながら同行記者がこの言葉の持つ意味を理解できず報道されなかったため、永田町では安倍発言は注目を集めなかった。」、このエピソードは興味深いです。大阪市長のように、マスコミの不勉強を罵倒して、それをマスコミに報じさせたほうが、勉強している自分をアピールできますが、そうはしなかったのでした。もちろん、その場ですぐにはぴんと来なくても、きちんとした政治記者でしたら、後で思い出すか、最低限調べるかして気づいて、不明を恥じたのではないでしょうか。ふと、麻生首相の「いやさかえ」を“誤読”として“誤報”した報道機関メドレーを思い出しました。

「現在の安倍晋三は従前の安倍晋三ではない。」と締めます。前とは変わることが、この長期政権の安定の一因だと考えると、天心の「変化こそ唯一の永遠である」を、自ら体現しているということになります。

一方で、ずっと変わらないものは、たいていの場合、変わらないままがよいものです。『徹子の部屋』40周年Anniversary Book(ぴあ)は、あの長寿番組で、黒柳が「玉ねぎ頭」をずっと変えないのは、トーク番組としての本質と結びついていることを明かしました。では、きょうのTBSラジオの久米宏ラジオなんですけどで話題になった、50を過ぎても「私たち女の子は」と言う女性は、どうでしょうか。久米は慣れているようでしたが、若い人から見ると、生涯「女子」でありたいという、あこがれのロールモデルでしょうか、それとも「若作りうつ」社会(熊代亨著、講談社)を読んでほしいと思ってしまうでしょうか。