きょう、西日本新聞のウェブサイトに、女性受刑者増加 処遇含め総合的な対策をという記事が出ました。けさの朝刊の社説と思われます。
「意外に思う人が多いかもしれない。」と書きだしますが、続く内容に、私は別の意味で意外に思いました。なぜ今ここで、と思ってしまう話題なのです。「2013年版の犯罪白書で明らかになった。」と、ニュースのような書き方ですが、平成25年版犯罪白書(日経印刷)は、昨年11月に閣議報告され、12月に冊子で公刊されました。しかも、あの白書の中で、まだあまり報じられていないところに焦点をあてるわけではありません。この記事に使われた数値は、たとえばイザ!に閣議決定の直後に出た記事、女性の受刑、20年で倍増、目立つ高齢化 犯罪白書「男性中心見直す必要」にすべて見つかります。
犯罪白書のお話は長めのつかみで、後のほうに出てくるモデル事業の話題が新しいのだと思った人もいるかもしれません。ですが、白書ほどではありませんが、これも新しいニュースとはいえません。佐賀新聞電子版に1か月近く前に出た記事、女子刑務所の処遇改善 麓刑務所でモデル事業を見ると、モデル事業はもちろん、摂食障害の問題や、外部専門家との連携にも、すでに言及があります。
ここ最近に、特に女子刑務所に注目が集まるような事件があったわけでもありませんので、この社説がなぜ今、新しくない話題を組みあわせて書かれたのかが、よくわかりません。しかも、説明が不十分なところ、誤解をまねきそうなところもあります。「女性受刑者の刑務所での処遇をめぐる問題」をいろいろ挙げた上で、「こうした問題に対処するには心理療法や医療、介護などの分野で高い専門性が求められることは言うまでもない。」と主張しますが、「介護」の必要性は、書かれた範囲では見えにくく感じます。高齢者の増加は「処遇をめぐる問題」としては書かれていませんし、「女性の場合は同一の施設に収容」が頭の中で介護につながるのは、処遇指標のWやPなどを知る人でしょうから、その説明をせずに書かれると、一般向けとしては苦しいでしょう。また、記事タイトルと合わせて「罪を犯して刑務所に入った女性が、ここ20年で2倍以上に増えたというのである。」と書かれると、急増中のように思ってしまいますが、イザ!のほうの記事で「ここ10年ほぼ横ばい状態」とあるのが実態です。伸び続けているのは、女子比と高齢者層の人数です。ちなみに、「女子刑務所の12年末の平均収容率は103.4%で過剰な状態」とあるのも、白書を見ればわかるように、10年ほど前から微減傾向です。もちろん、以前とくらべれば改善されてきたといっても、過剰収容であることは明らかですので、問題なしとするつもりはありません。そういえば、思春期病棟の少女たち(S. ケイセン著、草思社)では、カレーと呼ばれることをいやがった「壁にうんこ」のアリスのことで、リサが「何だって比較の問題だからね」と言っていました。