生駒 忍

記事一覧

仕事を選ばない剛力と宮崎駿の「娼婦」発言

きょう、メンズサイゾーに、剛力彩芽、『プリキュア』声優出演で「ゴリ押し」の声が復活!という記事が出ました。本人も芸能ライターだと思われる津本ひろとしという人が、芸能ライターの論評をまじえて書いたものです。

私はまったくついていけていないのですが、プリキュアの人気はとても広いようです。「詐欺撃退」 オタク母の機転「プリキュア37人言える?」のような使いみちがあるほどですし、この記事にも、「いわゆる“大きなお友達”も多いのが現実」とあります。もちろん、本来のターゲット層も、しっかりつかんでいるようです。オレンジページ 2月2日号(オレンジページ)の「おかあさんの扉」では、プリキュアの放送は見ずに、別ルートからプリキュア好きになった女児がえがかれました。

その映画の新作の声優に、剛力が加わるそうです。どんなキャラクターにどんな声をあてるのがよいかは、関心の高い人の多いテーマで、最近ではテレビアニメ版の「サザエさん」の波平の声が、次は誰がいいのか話題になりました。私などは、最初のイメージとずれてもそのうち慣れるからと思ってしまうので、発言小町の声優目指して早7年、異常に人に必要とされたい彼氏に出てくる、アスペルガー症候群の女性の彼氏の「アニメを見ないいもあんには分からないよ。」のようなかたちで、無理解をなじられそうです。また、またかという声もあると思いますが、この映画に本職の声優ではないタレントを使うことには、落胆も、営業上しかたがないとの理解も出るでしょう。あるいは、声優ではないことを、むしろ歓迎する人もいるかもしれません。宮崎駿がプロの声優をきらったとされるお話は、あまりにも有名です。アンサイクロペディアの声優では、「アイドル声優は、声の娼婦であり、風俗嬢である」と言ったことにされました。ですが、オリジナルの発言内容がはっきりしないままで広まったお話でもあります。国家・宗教・日本人(司馬遼太郎・井上ひさし著、講談社)には、司馬遼太郎が宮崎から直接聞いたこととして、「若い声優の声がだめ」「募集してテストしてみたら、ほとんどみんな娼婦の声」とあります。

今回の場合は、ここ数年とにかく露出が多い一方で、いわゆるアンチも多い剛力なのが、さらに議論をよぶところでしょう。私は、未来日記-ANOTHER:WORLD-の第1話で見かけて、うまくはないのにこれから当たりそうな感じを受けてから、多少の注意を向けてきましたが、いまだにつかみどころが見えないのが引っかかります。「友達より大事な人」PVは、強いて言えばあざやかな絵で明るい群舞が続くボリウッド映画に近いのですが、頭をひねってユニークに作る意図はそうでもないのに、日本中ほかにどこにもない、時代のななめ上を飛ぶ作品になって、まるで松本人志監督作品とは正反対でした。ですが、ドラマ女優のほうは、ヒットしないのはこの人だけの責任ではないと思いますが、この人でなければ、この人ならではとはなかなかならないのが、対照的です。一時の上戸彩に近いでしょうか。それはそれで、使いやすいのかもしれません。かつての上野樹里、最近では能年玲奈のように、当たり役が後をしばることもあります。特定の役ではなく、色が固まれば、また使いやすくなるでしょう。いつものキャラの、観月ありさの安定路線です。それで仕事の幅を広げると、何を演じてもキムタクになってしまう木村拓哉か、何を演じてもフカキョンにしてしまう深田恭子か、どちらに行くかが問題です。

剛力がいわゆるアンチも多くかかえるのは、仕事を選ばない姿勢にも一因があるのでしょう。オスカーの方針だといえばそれまでですが、本人の前向きなところも、先ほどのPVがぴったりくるほどです。FLASH 12月24日号(光文社)によれば、仕事が好きだという思いをずっとベースにしているそうですし、niko and... 2013 Autumn & Winter(宝島社)では、みずから「アクティブな自分」と表現しました。図解 どっちが得?「おとなの雑学」(インタービジョン21編、三笠書房)によれば、かつてコシヒカリと人気を分けあったササニシキは、その人気が気候の合わない土地での栽培を増やし、味が落ちて人気も落ちる、アタリショックのようなくずれ方をしたそうです。そうならないために、もう少し仕事を選んでもよいかもしれません。