生駒 忍

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自閉症の公社職員に落語を頼んだ施設職員

きょう、YOMIURI ONLINEに、自閉症の19歳、落語公演…枝雀に憧れ独学という記事が出ました。ひとりで「話し」続けたり、暗記が得意だったりという、わかりやすい自閉症の特徴が落語につながって活躍の場を得た、瑞穂市ふれあい公共公社の職員の紹介です。

気になったのは、「知的障害者支援施設「神戸明生園」(神戸市北区)の女性職員(51)」に関することです。まず、氏名は出さずに性別と年齢は出しているところです。この記事の中で、頼んだのが中年女性であることは、文章のはこびには関係がなさそうですし、特別な社会的価値のあることとも思えません。「正光寺しなの」のほうに「男性職員」とは書かないわけで、もちろんそれは、自閉症、名前が「颯一郎」、落語やしなのが好き、そして「息子」と重なれば、書かなくても性別の見当がつくので書かなかったという可能性もありますが、アンバランスな感じを受けます。あるいは逆に、詳細がわからない人物だからこそ、年齢と性別ははっきりさせたいのだろうと考える方もいるかもしれませんが、もしそうなのでしたら、「直子さんの知人」や「小学校時代の担任」も、当時のものか今のものかのどちらかで、年齢や性別が書かれるはずです。

また、この女性職員は、「ぜひ園生にも聞かせたい」「園生にもいい刺激を与えてくれるはず」と発言しています。落語だけに、三遊亭圓生を連想してしまいました。桂枝雀とはまったく芸風が異なりますが、ひたすらまじめにはげみ、次々に演目を覚え、人格的にもストレートであったところが、軽い自閉症だというこの方にもありそうな特徴のようにも思えます。もしかすると、天国の圓生にも聞かせたいほどの芸、という連想まで考えての「園生」発言だとしたら、性別はともかくとしても、年齢を書いた意味はあったのかもしれません。そのころは子どもだったとしても、圓生をリアルタイムで知っている可能性を示しているのです。もう、今の若者なら、「圓生」の読み方さえわからないかもしれません。そういえば、日本の大学 この国の若者は、こんなんでっせ!(桂文珍著、PHP研究所)には、圓生は正しく呼べるが小さんの名前はそうでなかった人のお話が出てきます。